デベロッパーリレーションズ(DevRel)の中心にあるのは「コミュニティ」です。では、そのコミュニティをどう設計し、どう育てればよいのでしょうか。 参加者をお客様扱いしないこと、楽しい雰囲気を意図的に作ること、営業活動を場から切り離すこと ――現場で実際に手を動かしてきた人たちだからこそ語れるリアルがあります。
本記事では、長年コミュニティ運営に関わってきた 小田祥平氏 、 HERE Technologiesの萩野たいじ氏 、 アビダルマ株式会社の横田昌彦氏 の三名が、実体験に基づいて「コミュニティの本質」について語り合った座談会をお届けします。エンジニアや技術広報に関心のある皆さんにとって、これからDevRelに関わる際のヒントや実践の足がかりになれば幸いです。
"本座談会の参加エキスパート:
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コミュニティ運営の出発点 ― 自己紹介とこれまでの活動
おだしょー: まず自己紹介から行きましょうか。私は小田祥平と申しまして、普段は「おだしょー」という名前でコミュニティ活動をしています。
いまは特定のベンダーに属していませんが、過去にはmablというソフトウェアテスト自動化サービスのコミュニティ支援や、Microsoftでのコミュニティ支援などを行ってきました。コロナ禍では配信機材の貸し出しや使い方のサポートもしていました。今日は、DevRelとコミュニティの話を皆さんとできればと思います。よろしくお願いします。
萩野: HERE Technologiesの萩野たいじと申します。直近10年ほど、デベロッパーアドボケートやテクニカルエバンジェリストとして働いてきました。現在はソリューションアーキテクトという立場でプリセールスのエンジニアをしています。 コミュニティチームがない組織では、私のような立場がコミュニティ推進を担う ことが多いです。最近は自社のユーザーデベロッパーコミュニティを立ち上げました。
横田:アビダルマ株式会社の横田昌彦と申します。2006年頃からIT企業のエンジニア向けコミュニティを中心に、立ち上げ、設計、運営、イベント企画まで幅広く支援してきました。少し変わったところでは美容系のコミュニティを支援したこともあり、 エンジニア向けコミュニティのメソッドが他領域にも応用できる と実感しました。

コミュニティ運営の哲学 ― 「お客様扱いしない」という姿勢
おだしょー: 皆さんがコミュニティ運営で特に大切にしていることをお聞かせ願えますか?
横田: 私が一番強く意識しているのは、 参加者をお客様扱いしないこと です。例えば懇親会でピザが届いたとき、机の移動や取りに行くのを一緒にお願いするのです。小さな協力を積み重ねることで、「自分はコミュニティの一員だ」という感覚が育ちます。その感覚が 当事者意識につながり、自然とリーダーが生まれていく のです。
萩野: とても共感します。私も 「運営と参加者の線を引かない」 ことを意識しています。今日は私たちが回していますが、次回は参加者の誰かが回すかもしれない。そういう前提で設計しています。
おだしょー: 企業主導のイベントだと、その空気づくりが難しいことがありますよね。
萩野: ありますね。営業が前に出すぎたり、 登壇者に「様」を付けて紹介するだけで、途端にセミナーのような空気になってしまいます。フラットさが失われるとコミュニティの良さは一気に消えますよね。
おだしょー: あとオンラインイベントだと、配信が止まったり音声が飛んだり…っていう「揺れ」もありますよね。そうした不安定要素がある前提で、巻き取り役や議事録係、テーマの切り替えを判断する人を決めておくとテンポが落ちにくいです。
横田: オンラインではトラブルも一体感につながることがありますよね。 「一緒に場を作っている」という当事者意識 があると、むしろプラスに働きます。
おだしょー: 私はもう一つ、 「楽しい雰囲気を意図的に設計する」 ことを重視しています。皆さん日々の仕事で消耗していることも多いと思います。だからこそ、参加してよかった、また来たい、今度は登壇したい、いずれは運営にも関わってみたい、という気持ちが自然に湧くような体験を提供したいのです。セッションの最中に質問やツッコミを入れて双方向性を作ったり、会話が生まれる“間”を仕込んだりするようにしています。

コミュニティと信頼構築 ― 営業を排し、関係をつなぐ
萩野: DevRelの本質は、 企業と開発者の間に信頼関係を築くこと だと思います。だからこそ、 コミュニティイベントを営業の場にしないよう徹底しています。 営業のメンバーが参加する場合は、事前にルールを説明して趣旨を理解してもらいます。会場では学びと交流を中心にし、 商談は場を変えて行う ようにしています。
おだしょー: 外向きはできていても、社内のコンテキスト共有が足りずに“事故る”こともありますよね。
萩野: はい、実際に経験しました。グローバルからのミッションと日本のローカルが期待していることに大きなギャップがあり、その結果、立ち上げたコミュニティが「日本の顧客対応ニーズに合っていない」と見なされました。そこで私は エンタープライズ寄りのコミュニティを急遽立ち上げ、カスタマーサクセスチームに駆動してもらう形で調整しました。
横田: 私もグローバルとローカルの間に立つ場面を経験してきました。場はコミュニティでも、目的は参加者ごとに違います。だからこそ 期待値とコンテキストの交通整理 が運営の重要な仕事だと思います。

コミュニティへの参加と学び ― 読者へのメッセージ
おだしょー: 最後に、皆様から読者へのメッセージをお願いします。
萩野: コミュニティと一口に言っても、目的やターゲット、規模、フェーズによって姿はさまざまです。 皆さんそれぞれに合った正解を見つけられるよう、小さく試しながら取り組んでください。
横田: コミュニティは属人的になりがちですが、ルールで形作る部分と、参加者の個性で成り立つ部分の両方が必要です。 まずは複数のコミュニティに参加し、できれば運営にも関わってみてください。 小さな役割を担う経験が当事者意識を育て、場を次のステージへ押し上げます。
おだしょー: 10月2日から4日にかけてDevRel Kaigi 2025が開催されます。コミュニティは観客として参加するより、 構成員として関わるほうが学びが深まります。 ぜひ当事者意識を持って楽しんでいただきたいです。
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ワイ半目じゃない…??w
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