9月7日、Googleが「既存のファームウェア コードベースに Rust を導入する(Deploying Rust in Existing Firmware Codebases)」という記事を公式ブログ(Google Security Blog)で公開した。この記事では、ファームウェアをRustで書くことの利点や、RustがC/C++を置き換えていく現状についての見解が述べられている。
Rustの導入によるセキュリティ向上
Googleのブログ記事によると、ファームウェアのコードベースをRustで書き直すことで、メモリ安全性が大幅に向上し、バッファオーバーフローや解放したメモリを誤って使用してしまう(use-after-free)といった脆弱性の原因を排除できると述べている。従来のCやC++によるコードはメモリに関する安全機構が欠如しているため、これらの脆弱性が多くの大規模なコードベースで発生することが多い。RustはCやC++と同等のパフォーマンスとコードサイズを持ちながら、メモリの安全性を提供するため、これらの問題を解決できる。
Rustの特徴と利点
- メモリ安全性: Rustはメモリ安全な言語であり、従来のCやC++に代わる選択肢として推奨されている。特にファームウェアのような低レベルのシステムでは、メモリに関連する脆弱性がしばしば重大な問題を引き起こすため、Rustのような言語の導入が望まれる。
- パフォーマンス: RustはCやC++と比較しても、同等のパフォーマンスを提供する。また、既存のCコードとの相互運用性を確保しながら、追加のオーバーヘッドなしでRustを導入することができる。
- 導入の容易さ: Googleは、Rustコードの導入を段階的に進めることが可能であり、特にセキュリティクリティカルな部分や新規コードから開始することで、効果的に脆弱性を減らすことができると強調している。
アメリカ政府や技術業界の取り組み
アメリカ政府もメモリ安全性の重要性を強調しており、企業に対してメモリ安全な言語を採用するよう推奨している。Googleはこれに積極的に対応しており、Rust開発者の生産性がC++エンジニアの2倍に達することも報告している。また、Rustの導入に向けたトレーニングやリソースの提供も進めており、エンベデッドシステムやファームウェアへのRust導入に取り組んでいる。
C++開発者の抵抗
一方で、Rustの導入に対する抵抗も存在する。Linuxカーネルの開発者の中には、Rustの採用に否定的な意見を持つ者もおり、その学習曲線の高さから難色を示す声もある。実際、Rust for Linuxプロジェクトのメンテナが最近辞任したこともあり、Rustの導入には依然として課題が残っている。
まとめ
Googleは、Rustを既存のファームウェアに導入することで、セキュリティの強化と開発者の生産性向上を目指している。特に、セキュリティクリティカルな部分からRustへの移行を進めることで、効果的に脆弱性を減らし、安全なシステムを構築することができると述べている。
詳細は「既存のファームウェア コードベースに Rust を導入する(Deploying Rust in Existing Firmware Codebases)」を参照していただきたい。