インタビュー

Blueskyの中の人に「Blueskyの野望」「Blueskyの収益化計画」「Bluesky公式サーバーのスペック」「APIが使えなくなることはあるのか」「ジャック・ドーシーとBlueskyの関係」など今知りたいことを全部聞いてきました


2024年4月14日(日)に大阪で開催された「Bluesky Meetup in Osaka Vol.2」では、Bluesky開発チームのテクニカルアドバイザーを務めるWhy氏に対してユーザーが何でも質問できる質疑応答タイムが設けられました。さらに、質疑応答タイムの後にWhy氏に直接インタビューする機会を得られたので、GIGAZINE編集部がBlueskyについて気になっていることを時間の許す限り聞いて答えてもらいました。

Bluesky meetup in Osaka Vol.2 - connpass
https://428lab.connpass.com/event/313710/

Bluesky Meetup in Osaka Vol.2の質疑応答タイムでは、ユーザーからWhy氏に対して「鍵アカウントの実装予定はありますか?」「AT Protocolに○○という機能を追加する予定はありますか?」といった質問が数多く寄せられ、すべての質問にWhy氏が詳しく答えていました。質疑応答中にはWhy氏の「やることリスト」に追加されるアイデアも続々飛び出す充実の展開に。そんな質疑応答タイムのやり取りは以下の記事でチェックできます。

Blueskyの開発者に「鍵アカウントの実装予定は?」「日本支社の設立予定は?」など何でも聞けるイベントが開催されたので行ってみたら開発者の「やることリスト」に追加されるアイデアが続々飛び出す充実のイベントでした - GIGAZINE


そして、質疑応答タイムの後にはWhy氏とイベント運営チームがGIGAZINE編集部のためにインタビュー時間を設けてくれたので、Blueskyについて気になっていることをあれこれ質問してみました。

GIGAZINE(以下、G):
まず最初に、最も気になっていることを質問させていただきます。現時点ではBlueskyはドメイン販売サービスのみを有料サービスとして提供していますが、今後はどのような収益化手段を計画していますか?

Why氏(以下、Why):
これは確定している計画ではありませんが、クリエイティブなコンテンツを投稿するユーザーのためのサブスクリプションサービスのようなものの実装を検討しています。各ユーザーがクリエイターに対して料金を支払い、そのうち数%をBlueskyが手数料として得る仕組みです。詳細は明かせませんが、私たちはネットワーク全体をより良くしつつ収益化できるシステムの構築を目指しているのです。

G:
なるほど。それでは、現時点のBluesky公式サーバーのスペックを教えてください。Blueskyのユーザー数は2024年2月に500万人を突破しました。一体どのような構成のサーバーで500万人以上のユーザーを支えているのですか?

We just crossed 5M people total on the network! ????

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— Bluesky (@bsky.app) Feb 23, 2024 at 5:04


Why:
私たちは2つのデータセンターを所有しています。1つはサンフランシスコのベイエリア、もう1つはブラジリアに設置しています。各データセンターには30台のビッグサーバーが置かれており、それぞれのサーバーでEPYC Genoa(AMDのサーバーCPU「EPYC」の第4世代モデル)が動作しています。すべてのハードウェアはBlueskyの所有物であり、他の企業からレンタルしているものではありません。

また、日本人ユーザーが急増しているため、次のデータセンターは日本に設置したいと考えています。

G:
BlueskyのUIデザインや機能について、Twitter(現X)にとても似ていると感じています。開発段階で、どのあたりまで「Twitterに似せよう」という意識がありましたか?

Why:
私たちはBlueskyを最良のマイクロブログサービスにしたいと考えていました。Twitterが古くから提供している機能は多くの人に愛されています。だから、私たちはTwitterから多くのインスピレーションを得ました。

G:
なるほど。では、カラーリングもTwitterに似ているのはなぜでしょうか。TwitterもBlueskyも青色を基調とした外観が特徴的です。

Why:
Blueskyは、もともとジャック・ドーシー氏が2019年に始めたTwitterの社内プロジェクトでした。そのため、Twitterとは別の会社としてBluesky PBLLC(現Bluesky PBC)を設立した後も青色が残ったのです。

ちなみに、Twitterから独立する際の合意には「TwitterはBluesky PBLLCの所有者ではない」という条項が含まれていました。また、Twitterには「取締役を1人選ぶ」という権利も与えられました。

G:
その「Twitterが指名する取締役」というのがジャック・ドーシー氏ということですか?

Why:
そうです。

G:
ジャック・ドーシー氏の名前が出たので、この質問をさせてください。現在、Bluesky PBCの取締役にはジャック・ドーシー氏が名を連ねていますが、彼は現在もBlueskyやAT Protocolの開発に関わっているのですか?


Why:
ジャックはBlueskyやAT Protocolの開発に関わっていません。別のことに集中しています。ジャックはBlueskyが掲げる分散化の理念に同意しているため、取締役という立場から何かを指示することはありません。ちなみに、ジャックの任期は特に決まっていません。

G:
分かりました。続いて、サードパーティー製のアプリやサービスに関する質問をします。かつて、TwitterではAPIが開放されており、誰でも自由にサードパーティーアプリを作れる状況でした。Blueskyも同様にプロトコルがオープンになっており、誰でもサードパーティーアプリを開発できる状況となっています。この状況の中で、サードパーティーの開発者に対して何か気を付けてほしいことはありますか?

Why:
Blueskyではサードパーティー開発者の参加が非常に重要です。それがBlueskyの根本的なものなのです。

G:
つまり、まったく制限はなく、どんどん開発してほしいということですか?

Why:
Yes!だからこそ、私は日本に来たのです。

なお、Blueskyは数カ月以内にOAuthに対応する予定です。これにより、開発者が安全にログイン機能を提供できるようになります。

G:
ユーザーが作ったアプリやサービスで個人的に面白いと感じたもの、あるいは注目に値すると思ったものは何ですか?

Why:
Bluesky開発チームの一員であるJazが開発したアプリ「Bluesky Interaction Graph」ではBlueskyの各ユーザーのつながりを可視化することができるのですが、負荷が高すぎて使えない時期がありました。それを、ほかのユーザーの協力によってGPUアクセラレーションを有効化した軽量バージョンが誕生しました。このグラフ描画アプリは、自分の近くに「自分に似たユーザー」を表示してくれるため、コミュニティエクスプローラーの役割を果たしてくれます。


G:
Bluesky Meetup in Osaka Vol.2の質疑応答タイムでは、Bluesky PBCの従業員数が20人だと言っていましたが、20人はそれぞれどのような役割を担っているのですか?

Why:
Bluesky PBCの正社員20人のうち、14~15人がエンジニアです。残りの社員はマーケティング関連の仕事をしています。

G:
では、14~15人のエンジニアがいる中で、BlueskyやAT Protocolへの機能追加に関する議論はどのように進んでいるのですか?

Why:
AT Protocolは2024年3月の時点でほぼ完成状態になりました。それでも2名のエンジニアはAT Protocolに注力し続けており、まだ多少の変更を加える可能性があります。

Blueskyでは動画投稿機能の実装を検討中ですが、動画投稿機能を実装するにはBlueskyアプリだけでなくAT Protocolの変更も必要となるのです。Blueskyではアプリの開発とプロトコルの開発が互いに連携しているところが面白いポイントです。

G:
確かに。一般的なアプリでは完成されたプロトコルに沿ってアプリを開発しますが、Blueskyではアプリとプロトコルの開発が同時に進んでいるんですね。

Why:
そうです。また、私たちはAT Protocolを標準化したいと考えています。AT ProtocolをBlueskyが所有するものではなく、標準化されたものにしたいのです。今後、いずれかの標準化組織と協力してAT Protocolの標準化作業を進める予定です。

G:
その標準化はどの組織と協力して進める予定ですか?

Why:
それはまだ検討中です。

G:
続報を楽しみにしています。Blueskyのユーザーコミュニティの話題に戻るのですが、ユーザーコミュニティに最も手伝ってほしいことは何ですか?

Why:
日本人ユーザーがSNSを大好きなことは知っています。でも、日本人ユーザーがどんなものを求めているのかが分からないのです。だから、ユーザーの話を直接聞くために今日ここに来たのです。


G:
それでは、最後の質問です。Blueskyの最終的な目標は何ですか?FacebookやXのような数億人規模のユーザーを抱えるサービスとなることを目指しているのですか?

Why:
Blueskyには大きな野望が2つあります。第1の野望は「ウェブ上のすべてのSNS活動がAT Protocolの上で動くようにする」というものです。そして、第2の野望は「Blueskyのエクスペリエンスを向上させ、AT Protocolを採用するサービスの見本となるようにする」というものです。

そして、最後に1つ言っておきたいことがあります。サードパーティーの開発者は「BlueskyのAPIが将来的に使えなくなるのでは」と心配する必要は一切ありません。そもそも、AT Protocolの仕様上、私たちがAPIの使用を禁止するという行為は不可能なのです。このため、TwitterやRedditのようにAPIが突然使えなくなる心配はないのです!これが「分散」なのです。安心してください。

G:
開発者にとっては非常に心強い宣言ですね。それでは、ありがとうございました。

この後、Why氏はイベント参加者と一緒にたこ焼き作りに取り組みました。


Why氏がたこ焼きを作る様子は以下のムービーの4分40秒頃から確認できます。

Bluesky Takoyaki meetup - YouTube


そして、イベントの最後にはWhy氏とイベント参加者でたこ焼きポーズの集合写真を撮影して解散しました。

今日参加された皆様の集合写真です
遠路はるばるお越しいただきありがとうございました
#BskyMeetup

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— 四谷ラボ (@428lab.net) Apr 14, 2024 at 17:49


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in インタビュー,   モバイル,   ソフトウェア,   ネットサービス,   ウェブアプリ,   ハードウェア, Posted by log1o_hf

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