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「専門家への敬意の不足」を理由にプログラミング言語「Rust」のコアチームメンバーの一人が離脱、一体何が起きたのか


プログラミング言語「Rust」の開発をかじ取りするコアチーム内で不和が発生しており、コアチームメンバーの1人だったJTさんの「Rustのコアチームを離脱する」というブログ投稿をきっかけに、ITエンジニアたちが集うHackernewsで激論が繰り広げられています。

Why I left Rust
https://www.jntrnr.com/why-i-left-rust/


I Am No Longer Speaking at RustConf 2023 | The Pasture
https://thephd.dev/i-am-no-longer-speaking-at-rustconf-2023


Why I Left Rust | Hacker News
https://news.ycombinator.com/item?id=36101501


コアチームを離脱したJTさんによると、事件の経緯は下記の通り。

1:RustConfの基調講演の候補者を求める要請が暫定リーダーシップグループに出される
RustConfはプログラミング言語「Rust」の大規模なカンファレンスで、2023年は9月12日から9月15日にかけてアメリカ合衆国ニューメキシコ州のアルバカーキで開催予定となっています。

2:JTさんとManishさんによってジャンヘイド氏が基調講演の候補者として提案される
ジャンヘイド氏はC標準の2人の編集者のうちの1人です。JTさんはジャンヘイド氏が外部の視点を持つ素晴らしい専門家として招待されると思っていたとのこと。

3:投票が行われてジャンヘイド氏が基調講演を行う1人に選出される

4:ジャンヘイド氏に基調講演の依頼が行われ、承諾をもらう
ジャンヘイド氏の講演タイトルは「コンパイル時リフレクションの可能性に関する(非常に短い)ウォークスルー!?」の予定だったとのこと。


5:スケジュールの掲載前にジャンヘイド氏の選出に関してチームミーティングで議論される

6:数人のチームメンバーがジャンヘイド氏の選出に不快感を持っていた
JTさんによると、ジャンヘイド氏が未定義動作に関するブログ投稿の中でRustについての考察を行ったことで、数人のチームメンバーがジャンヘイド氏の基調講演者への選出に関して不快感を持っていたとのこと。

7:ジャンヘイド氏を基調講演から外す議論が暫定リーダーシップグループで行われる

8:Rustのリーダーシップグループの1人がRustConfの運営に連絡を取る
Rustのリーダーシップグループに所属する1人の人物がRustConfの運営にジャンヘイド氏を基調講演から外し、通常の講演にするよう連絡を行いました。

9:RustConfの運営は1週間の猶予を確保
RustConfは即座にジャンヘイド氏を基調講演から外すことはせず、考えが変わらないか1週間待ったとのこと。

10:1週間後、ジャンヘイド氏へ連絡がいく
1週間の猶予後、ジャンヘイド氏へ講演が基調講演から通常の講演に「格下げ」されたことが連絡されました。ジャンヘイド氏はブログでこの決定手続きが不透明だと述べ、RustConfでの講演を完全にキャンセルしました。

11:JTさんがRustプロジェクトを辞任
JTさんはジャンヘイド氏のブログを読み、講演の辞退を知ってすぐRustプロジェクトを辞任したとのこと。JTさんは辞任の理由を記載したブログ投稿で「私が辞めたのは、ジャンヘイドが虐待され裏切られたことに対する痛みと失望を感じたとき、心が張り裂けそうになったからです。あまりの残酷さに泣いてしまいました」と述べています。また、かつてRustConfの講演者に黒人がいないことを理由にジャンヘイド氏がRustを非難した点にも触れて「RustConfでの有色人種による最初の基調講演であるはずだった」と強調しています。


このトラブルに関して、主にITエンジニアたちが集うニュースサイト「Hacker News」でもさまざまな議論が行われています。

例えば、brokenkebabyさんは下記のように述べて決定の理由に「不快感」を用いることを皮肉っています。

「不快に感じる」という主張は、議論を完全に避けて、何か、または誰かを容認できないものとして宣言することを可能にする政治闘争のツールとして発明されました。それが一般的に常態化しつつあるので、それが人間関係の他の分野にも波及するのは完全に論理的です。シンプルで効率的ですので、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。


他には、JTさんがRustの新しいガバナンス構造の設計を担当していたという点を指摘して、なぜ立場を利用してRustチームの意志決定を改善するのではなくインターネット上で大騒ぎすることを選択したのかについての文脈が欠けていると述べている人もいます。

あなたの要約に欠けているいくつかの重要なコンテキストは、著者がRustのコアチームのメンバーであり、Rustの新しいガバナンス構造の設計を担当する暫定リーダーシップグループのメンバーであったということです。JTは、プロジェクトガバナンスに関する新しいRFCを投稿した人です。

これは、起こったことを止める力がなく、インターネット上で大騒ぎすることが唯一の解決策だと感じた1人の人のケースではありません。これは、Rustの将来を形作る主要な意思決定者の1人でした。このブログ投稿には、なぜ彼らが自分の立場を利用して意思決定を改善するのではなく、辞任する必要があると感じたのかについて、多くの文脈が欠けていると思います。

今のところ、誰が正しいと判明するかについては判断を差し控えます。


また、ジャンヘイド氏が自分の肌の色に一切言及していなかったにもかかわらず、JTさんが肌の色について言及したのを「横柄だ」と批判するコメントも寄せられていました。

ジャンヘイド氏の元のブログ投稿を読んだのですが、有色人種であることと関連するものはまったく言及されていませんでした。では、なぜJTは有色人種と事件を結びつけるのでしょうか?Rustリーダーシップチームの内部構造や彼らが誰なのかについてはまったくわかりませんが、記載されているタイムラインと元の投稿からは、それに関連する可能性は何もありません。ジャンヘイド氏は技術専門家であり、トークンではありません。私は、「有色人種」であるという問題を持ち込むのは奇妙であり、批判する必要があると感じています。私はJTの仕事を尊敬し、楽しんでおり、彼らから多くのことを学びましたが、これは気軽に言及すべきではないことでもあります。もしジャンヘイドの講演の格下げが肌の色を原因としているなら、全く異なる議論・説明が必要です。

専門家の肌の色がなんであれ、一度基調講演を依頼した後に通常講演に格下げするのは失礼です。それは少しも変わりません。

彼らが白人ではないからといって特別な扱いを受けるべきではない、そして私は非白人としてそう言います。重要なのは功績であり、専門家を生物学に配慮して扱うことは横柄な態度です。

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