Google、Android版プライバシーサンドボックスのベータ版公開

  • author Thomas Germain - Gizmodo US
  • [原文]
  • 福田ミホ
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Google、Android版プライバシーサンドボックスのベータ版公開
Image: Asif Islam - Shutterstock

Cookieに代わる何かとして。

Google(グーグル)がAndroid 版プライバシーサンドボックスのベータ版を公開しました。

これは、企業による個人データ取り放題の状態を改善するためにGoogleが長年取り組んでいる活動の一環です。

ただ矛盾するようですが、Googleいわくプライバシーサンドボックスのゴールは、企業のデータ取得をやめさせることじゃありません。

そうじゃなく、ユーザーのオンライン行動トラッキングとプライバシーを両立するような、多少はマシな方法を実現することです。

我々はWebでやってきたことを元に、ユーザーデータの共有を制限し、アプリ横断識別子に依存しないようなデジタル広告向けソリューションを開発しています。

Googleのプライバシーサンドボックス活動のプロダクト管理担当バイスプレジデント、Anthony Chavez氏はブログで書いています。

昨年を通じて、我々は業界と緊密に協力してフィードバックを集め、これら新技術のテストを始めようとしてきました。

今私たちはこの活動の次のフェーズに入ろうとしており、Android 版プライバシー サンドボックス初のベータ版を、利用可能なデバイスにロールアウトしていきます。

プライバシーサンドボックスはターゲティング広告ツール群で、企業はそれを使ってユーザーのデータをお金にしつつ、データそのものは見られない仕組みです。

Googleは、このほうがユーザーのプライバシーにとってずっといいんだと言ってます。Googleの広告プライバシー対策としては、「ChromeでサードパーティCookie廃止」って話が注目されてますが、Androidにおける対策も同じくらい重要です。

新ベータテストはまず「少ない割合」のAndroid 13デバイスにロールアウトし、その後徐々に対象を広げていきます。

その「少ない割合」に選ばれた人には通知が表示され、テストに参加するかどうかはユーザー自身が選択できます。テストに参加するのはユーザーだけでなく、アプリデベロッパー側も含まれます。

プライバシー サンドボックスの仕組み

現在はユーザーのデータが欲しい企業はいくらでも収集できてしまうような仕組みですが、Android版プライバシーサンドボックスでそれは(ある意味)変わります。

Android 版プライバシー サンドボックスでは、スマホのOSがユーザーのトラッキングを続けるんですが、そのデータはあくまでデバイス側にとどまります。データのコピーは、Googleにすら渡されません。

ユーザーのスマホが自ら収集したデータを分析し、ユーザーをさまざまな興味カテゴリに割り当てます。「スポーツファン」とか「青いシャツが好きな男性」とか「データ関係のつまんない記事を書いてる記者」といった感じです。

企業はそういった分析結果を広告のために利用できますが、その裏にあるデータを見ることはできません

なのでユーザーは引き続きターゲット広告に利用されるものの、その過程で自分の情報があちこち行かないで済む、というわけです。

ユーザーにとってのメリットは、企業が持ってないアプリやWebサイトでの行動に関しては、企業から知られにくくなる、ということです。

Googleにとってはリスクも

これはGoogleにとっては、非常に大きいしリスクのある決断です。

Googleはこんなことしても他社との競争上有利になるわけじゃないのに、むちゃくちゃめんどくさいことをしてるんです。ただでさえデジタル広告市場独占で提訴されてるGoogleなので、規制当局もますますご立腹のことと思われます。

でもGoogleくらい強力だと、自分でルールを作って競合も巻き込めてしまうのが現状です。が、Googleが独占じゃないって言ってるんだから独占じゃないんでしょうね。

Googleはプライバシー サンドボックスが反競争的じゃないことを強調すべく、いろんなアドテク企業からプライバシー サンドボックスへの賛辞を取り付けてます。でもGoogleの協力会社じゃない専門家からも、プライバシー サンドボックスを評価する声が上がっています。

Android 版プライバシー サンドボックスは、プラットフォームのプライバシーが大きく変化する状況への正しいアプローチだと思います。

広告業界評論家でアドテクブログMobile Dev Memoの作者、Eric Seufert氏は言います。

それは協力的であり、ツールを使うことで、効果測定やターゲティングにおける効率性を極力維持できます。

ユーザーレベルのデータは集計されていたり、大規模で秘匿性を保ちながら適切なオーディエンスへと抽象化されたりしています。

このことを他の記者に説明してみたところ、彼女の反応は「結局私のスマホは、引き続き私のことを監視するみたいね」というものでした。

その通りです。プライバシーサンドボックスといっても、データ収集方法が追加されるだけです。

また、データの流れが完全に絶たれるわけじゃないことも要注意です。Googleが計画するプライバシー対策を回避するようなトラッキング方法を考えてる企業もたくさんあります。

それでも、Googleへの公平を保つために言うと、プライバシーサンドボックスは現状維持とは全然違うし、ユーザーのプライバシーにとっては一歩前進です。

もっとよい状態は何かって、企業がユーザーのトラッキングをやめることです。

でもGoogleはユーザーのトラッキングで、2022年だけでも2830億ドル(約38兆円)の売上をあげた会社なので、やめるのは無理そうです。だからユーザーとしては、与えられるものをただ受け取るのみですね…。

Android 版プライバシーサンドボックスはAndroidユーザーにとって、重要な意味での勝利になるでしょう。

アドテク企業Cafe Mediaのチーフ・ストラテジー・オフィサー、Paul Bannister氏は言います。

Bannister氏は、会社としてのGoogleが知っていることと、スマホOSとしてのGoogleが知っていることを区別すべきだと言います。

会社としてのGoogleは、プライバシーサンドボックスによってある意味情報へのアクセスを失います。母艦に戻る情報が、はるかに少なくなるためです。

今までのプライバシー対策とどう違う?

で、もっと仕組み的な話をしていきますね。

プライバシーサンドボックス for Androidには4つの主要コンポーネントがあります。SDKランタイム、トピック、FLEDGE for Android、アトリビューションレポートです。

このへんの言葉自体は全然意味がないのでフランス語で書こうかと思いましたけど、怒られそうだからそのままにしときます。

まずSDKランタイムについて。SDK(Software Development Kit)とは、何らかの会社が作るコードのブロックで、デベロッパーはそこにアプリを押し込みます。

SDKは、アプリにFacebookアドネットワークを入れてお金もうけをしたり、スパイデータを送ったりできます。

SDKの問題は、スマホに内蔵されたプライバシー保護策を迂回するようなことをいろいろやる、胡散臭いやつが多いことです。

Googleの新しいSDKランタイムによって、すべてのSDKはアプリ自身の中ではなく、スマホOSのサイロ状になった部分で動くことになります。

これでGoogleがデータ収集をより監視しやすくなって、不適切な収集行為があれば検知しやすいし、さらにアプリの動作も速くなるかもしれません。

次はトピックとFLEDGEですが、このふたつは似ています。

トピックは、スマホがユーザーの使ってるアプリを分析して、広告主に対してユーザーがどういうアプリが好きかを教えます。そのとき、ユーザーが誰かとか、アプリの名前とかは明かされません。

FLEDGEも同じような感じですが、アプリがユーザーに自身のタグを付けられます。

たとえば「この人はスニーカーショッピングアプリ大好きな人です」みたいなことを、アプリが言えるわけです。するとアプリデベロッパーは、ユーザーに対して関連するスニーカー的なものの広告を見せられます。

GoogleはGoogle Chromeで、Webサイトに関してトピック・FLEDGEと同じことをやってます。

最後に、4つの中で一番つまらないアトリビューションレポート。

これは、ある広告がどれくらい効果を上げてるか、広告主に知らせるシステムです。広告を見た人をトラッキングして、広告上のモノやサービスを買ったかどうかを見ています。

プライバシーサンドボックスシステムはこの情報を広告主が使える形で提供しますが、個々のユーザーについての情報は明かしません。技術的にはつまらなくなく、すごいことで、広告業界的には非常に重要です。

デジタルプライバシーの行方

このへんで、プライバシー関係の最近の動向を振り返りましょう。

Apple(アップル)は2021年にAndroid 版プライバシーサンドボックスに似たApp Tracking Transparencyという機能を立ち上げました。

iPhone使ってる人は、アプリがトラッキングのパーミッションを求めてくる通知を見たことがあると思います。App Tracking Transparencyのほうが、ある意味Android 版プライバシー サンドボックスより強力です。

ユーザーがノーといえば、アプリはユーザーをトラッキングできなくなる、それで終了なんです。

Appleはそれで困る人がいるかどうかなんて全然気にしてないようです(アドテク業界に申し訳なく思うべきって意味じゃなくて、とにかくすごく破壊的だったんです)。

とはいえApple自身がトラッキングしてるし、しかも「トラッキングしない」って言いながらしてたりもするし、Apple純正アプリに関しては別のプライバシー設定を作ってて、トラッキングに関してもマイルドな言い方です。

それに対しGoogleは、もっと穏便なやり方をしてきました。

AppleのApp Tracking Transparencyと同じ2021年、GoogleはサードパーティCookieを廃止する予定だと宣言はしました。でもサードパーティCookieは、Googleも含め多くの企業がユーザーの動きの監視に使ってきたメインの道具です。

そこでGoogleは、企業の広告活動においてCookieの代わりになるような「何か」を用意すると約束したんです。その「何か」の集合体がプライバシー サンドボックスであり、Android 版プライバシー サンドボックスはその一部で、その他の部分はGoogle Chromeの中に入ってます。プライバシー サンドボックスのこと、おわかりいただけたでしょうか。

Googleがプライバシー サンドボックスに取り組む理由は多分3つあります。

ひとつは、Googleはユーザーの友だちだから。

2つめは、Googleはユーザーのデータで年間2830億ドルも(しかも不調のときでその金額)稼いでいるので、代替なしでCookieを廃止できないから。

3つめは、世界中の政府がGoogleを独占禁止で規制しようと必死なので、競合他社に不利になることをするときは、Googleにとって明らかに有利な形に見えないよう気をつけなきゃいけないから、です。

Googleが得る大きな優位性は、彼らが一番、この状況を受け入れた存在になることです。でも、同じくらい受け入れて、この技術に合わせたシステムを作る他の会社も有利になるでしょう。

とBannister氏は言います。

状況に反発してGoogleを批判する者、対応を拒否する者は困ったことになります。大きな潮流を無視しているのですから。

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https://www.gizmodo.jp/2023/02/how-to-change-permissions-apps-websites-android-ios.html