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Ruby 3.2 で導入された Integer#ceildiv とは

Last updated at Posted at 2023-01-03

Ruby 3.2 で Integer#ceildiv なるメソッドが導入された。これはどういうものか。

用途

テニスボールが 15 個ある。これを「4 個入るケース」に詰めて保管しておきたい。ケースはいくつ必要か。

15 を 4 で割ると 3 余り 2。ということは,3 ケースに 4 個ずつ詰めて,半端の 2 個を別の 1 ケースに入れることになるので,ケースは計 4 個必要になる。

この計算は,Ruby でやるなら

p 15 / 4 # => 3
# あるいは
p 15.div(4) # => 3

で,3 に 1 を足せばよいと分かるわけだが,整商(整数の商)にいつも 1 を足せばよいわけではない。

ボールが 12 個なら半端が出ないので,12 / 4 がそのまま答えになる。

つまり,整商と剰余の両方を divmod で求めて

p 15.divmod(4) # => [3, 3] # この場合,3 に 1 を足す
p 12.divmod(4) # => [3, 0] # この場合,3 がそのまま答え

と考えなければならない。

えっ,剰余が 0 かどうかで場合分けするの? めんどくさ。

いやいや,そんなことをする必要はなくて,単に商(整商ではない普通の商)を ceil で切り上げればよいのだ。つまり

p 15.quo(4).ceil # => 4
p 12.quo(4).ceil # => 3

でいいのである。

Integer#ceildiv はこれを一発で行うメソッドだ:

p 15.ceildiv(4) # => 4
p 12.ceildiv(4) # => 3

こういう計算はときどき必要になるので,メソッド一つでできるのは確かにありがたい。

補足

ここまでの議論について少し補っておきたい。

quo について

さきほど,商を求めるのに Numeric#quo を用いた。これは文字通り商(quotient)を得るためのメソッドである。

被除数・除数がともに Integer の場合,quo による商は Rational で返る:

p 6.quo(4) # => (3/2)
p 6.quo(2) # => (3/1)

読者の中には「fdiv でいいんじゃね?」と思った人もいるだろう。確かに,

p 15.fdiv(4).ceil # => 4
p 12.fdiv(4).ceil # => 3

でテニスボールケースの必要数が分かるので,一見よさそうだが,一般にはダメなんである。

Float に落としたところで,丸め誤差が生じうるので,正しい答えが得られないことがある。実際,

p (10**23).quo(1).ceil
# => 100000000000000000000000 # 正確

p (10**23).fdiv(1).ceil
# => 99999999999999991611392 # 誤差を含んでいる

のようなことになる(環境によって結果は違いうる)。

ceil について

さきほど,

商を ceil で切り上げればよいのだ

と書いたが,ceil の働きを「切り上げ」と表現するのは,一般には妥当でない。

正の数(やゼロ)については「切り上げ」だが,負数の場合,例えば

p -1.99.ceil # => -1

となる。これは「切り上げ」とは呼ばない。

ceil は切り上げではなく,「正の無限大への丸め」なのである。

なお,ceil は ceiling(天井)の略で,[siːl] と読む。だからもし ceildiv をカタカナ発音で口にする必要が出てきたら「シールディブ」みたいに読むことになるのだろう(知らんけど)。

なぜ Integer だけに?

divquoremainder の類が Float や Rational でも使えるのに対し,ceildiv は Ruby 3.2.0 では Integer でしか使えない。

除数は Integer でなくてもいい

p 1.ceildiv(2/3r) # => 2
p 1.ceildiv(0.3)  # => 4

のだが,被除数(レシーバー)は Integer でなければならない:

1.0.ceildiv(1) # => NoMethodError

なぜなのだろうか。

Integer#ceildiv 導入の 議論 を見ると,

We do not introduce Numeric#ceildiv until we see the need.

とあるので,Integer 以外での需要を誰も訴えなかったのだろう。

しかし,次に述べる二つの用途を考えれば,Float#ceildivRational#ceildiv があってもよかったのではと思う。

液体の小分け

3.5 L のバーボンを 0.75 L のボトルに入れていくと,ボトルは何本必要になるか?

Float#ceildiv があれば

p 3.5.ceildiv(0.75) # => 5

で 5 本と求められたはずだ。

まあ Float では丸め誤差が出る可能性があるので,数学的に厳密な計算をするには

p 3.5r.ceildiv(0.75r) # => 5

のように Rational オブジェクトでやったほうがよいが。

カレンダーの行数

2023 年 2 月のカレンダーは何行か? ただし日曜始まりのカレンダーとする。

まず当該月の日数を求め,そいつに,1 日ついたちの曜日に応じた数を足してやり,そいつを ceildiv(7) してやれば行数が出る。

つまり

require "date"

d1 = Date.new(2023, 2, 1)  # ついたち
d2 = Date.new(2023, 2, -1) # 末日

p (d2 - d1 + 1 + d1.wday).ceildiv(7)

でよさそうなのだが,このコードは NoMethodError を出す。

なぜかというと,Date オブジェクト同士の差が Rational オブジェクトになるからだ。
もちろん整数なので分母が 1 の Rational オブジェクトなのだが。

整数なので ceildiv の前に to_i をかませば済む話ではある。しかし,上のコードで NoMethodError が出るのは一瞬ギョッとするし,わけが分かっても面倒だなとは思う。

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