Apple M1環境でLinuxを動かす「Asahi Linux」のGPUドライバーがついに99％以上という成績でテストをパスしたという報告

Appleが独自開発するSoC「M1」搭載Macでの動作を目指すLinuxディストリビューション「Asahi Linux」で、Linux開発系VTuberの朝日リナ氏が「GPUのカーネルドライバーがテストを99％以上パスした」と報告しました。

Files · asahi/wip · Asahi Lina / mesa · GitLab
https://gitlab.freedesktop.org/asahilina/mesa/-/tree/asahi/wip

GitHub - AsahiLinux/m1n1 at lina/gpu-wip
https://github.com/AsahiLinux/m1n1/tree/lina/gpu-wip

GitHub - AsahiLinux/linux at gpu/rust-wip
https://github.com/AsahiLinux/linux/tree/gpu/rust-wip

M1チップは仕様が非公開であるため、M1環境でLinuxを利用するにはリバースエンジニアリングによるドライバーの開発が必須です。そこで、Asahi Linuxの開発者であるAlyssa Rosenzweig氏がグラフィックス関連のリバースエンジニアリングを行っていました。

AppleのMac向け独自開発チップ「M1」のGPUをリバースエンジニアリングするプロジェクトが進行中 - GIGAZINE

2022年にはオープンソースで開発するAsahi LinuxのGPUドライバーを使って初めて「カラフルな三角形」の描画に成功しました。

Asahi Linux Celebrates First Triangle On The Apple M1 With Fully Open-Source Driver - Phoronix
https://www.phoronix.com/news/Asahi-Linux-First-Triangle

また、朝日リナ氏はAsahi Linux上でウェブブラウザや3DCGゲームなどのGUIアプリを動作させることに成功したことを報告しています。

Apple製チップ搭載Mac対応Linux「Asahi Linux」でついにGUIアプリが動作、VTuberアバターの表示やFirefoxでのYouTube視聴が可能に - GIGAZINE

これまでRosenzweig氏は自身のユーザー空間でmacOS X上でドライバーを実行していたとのこと。そして、朝日リナ氏はRosenzweig氏のコードを流用しつつ、RustでLinuxカーネルに実装したそうです。朝日リナ氏が使用したテストセットは、OpenGL ES(GLES)とEGL用の堅牢で包括的なオープンソーステストのセットであるdEQPで、最初に発表したテスト結果は合格率99.1％でしたが、その後Rosenzweig氏から助言をもらったことで99.3％に延びました。

朝日リナ氏はブランチを更新し、「作業が終われば、『理論的には』すべてのM1(T8103)搭載デバイスで動作するはずです」と述べています。

なお、ソーシャルニュースサイトのHackerNewsでは、積極的に開発を行う朝日リナ氏の正体について議論が行われており、「Rosenzweig氏ではないか」「プロジェクトの主催者であるHector Martin氏ではないか」とささやかれています。ただし、Rosenzweig氏は2022年10月4日に行われた講演で朝日リナ氏と共演した際に「この講演が、私が朝日リナ氏ではないことの十分な証拠でしょう」と述べています。

XDC 2022 - Day 1 - October 4th, 2022 - YouTube


また、Martin氏も「エイプリルフールの投稿のせいで、いまだに私が朝日リナ氏だとRedditで言う人がいます」とコメントしました。

朝日リナ氏がドライバーの開発について語る配信は以下から見ることができます。

Device Trees! Let's get the driver working for everyone~! - YouTube