芸術は死んだのか? アートの公募展で優勝したのはAIで生成した画像

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  • author 岡本玄介
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芸術は死んだのか? アートの公募展で優勝したのはAIで生成した画像
Image: Twitter

デジタルアート部門なのでアリでは?

ここ数週間で急激にAIが生成した画像が上手すぎるという話題をよく目にするようになりました。ネットでは期待と不安の声が入り混じり、「人間のが危ういのでは?」や「特定の作品が機械学習に使われていたら著作権はどうするの?」など心配する声も散見されます。

AIが生成した絵画が優勝

そんな中、コロラド州の公共イベント「ステイト・フェア」で行われた美術作品の公募展にて、AIが生成した作品が1位に輝きました。デジタルアート部門なので的外れではないものの、これが受賞して良いのか? と波乱が巻き起こっています。

長すぎて読んでいないー誰かが美術展にAIで生成した作品を応募して1位を獲ってしまった。まったくマジでウ○コだよな

使用したのは「Midjourney」

1位になったSincarnate氏は、同州でテーブルトップゲームの会社Incarnate Gamesを営むジェイソン・アレンという人物。彼はDiscordでこの報告を行い、そこにはテキスト情報でイラストを生成するAI「Midjourney」を使って何百もの画像を作成し、数週間に渡る微調整を繰り返したとあります。その後「Gigapixel AI」で画像を拡大し、厳選した3枚をキャンバスに印刷し、公募展に応募したら一番お気に入りの『Theatre d' Opera Spatial』が優勝した…と記されています。また、制作に使った特別なプロンプト(文字列)は後日公開するというので、後から検証する人も出てくるでしょうね。

当然ながら、世間ではこの行いに対する批判が沸き起こりましたが、氏にとってこの物議は想定内。Discordでは、「TwitterでAI絵画に反対する人たちが、人間の要素の信用を落とし、真っ先に人を陥れる様子を見るのは何と興味深いことか! 皆にはこれが偽善的に見えるか?」とコメントしたのだそうです。

ただ従来とは技法が違うだけ?

美術の世界は、伝統的にスケッチやクロッキーや模写が技術向上の道であり、そうした研鑽や美術史の勉強は不可避と考えられています。ペンや筆を動かして、少しでも上達する努力(もしくは苦行)が必須なんですよね。ですがAIアートはそうした何十年にも渡る修行をすっ飛ばして、素人でもいきなりプロ級の傑作を完成させてしまうので、ズルだと捉えられてしまうワケです。しかし、アートの形はさまざま。たとえば写真は機材やロケーションを整える必要があるものの、結局カメラ頼みでシャッターを押したのが芸術と認知されているので、AI芸術が分類分けされるのも時間の問題なのかもしれません。

今回は受賞がメインの公募展ですが、販売目的の展覧会だと良し悪しの判断をするのは画廊でも批評家でもなく、お金を出す素人のお客さんです。結局は売れた作品が正義ですし、作家はプロと名乗っても問題ないと思います。近い将来、AI芸術が売れるようになっても、発想力と傑作/駄作の判断は人間にしかできませんし、美術史の勉強と同じ機械学習もただ時短なだけで、何を読み込ませるかは人間側が選別することですよね。それに今だって、言葉やアイディアを元に他者がヴィジュアルを作るのは当たり前ですからね。AIにズルされたと思うと頭に来ますが、そう考えたら少しは腹の虫も収まるのではないでしょうか?

画像作成AIの中で一番芸術的なのは「誰」?

画像作成AI10種で、その芸術性やオリジナリティを比較チェックしてみた。

https://www.gizmodo.jp/2022/08/most-artistic-ai.html

Source: Twitter via VICE