見出し画像

『組織を芯からアジャイルにする』をコーポレートで実践するには、の思考メモ

『組織を芯からアジャイルにする』という本を読んでの気づき

山の日の夜、銀座SIXの蔦屋をブラブラしていた。この蔦屋の良いところは、本のカテゴリごとの垣根が低いことだと思う。私は建築デザインとかフォントの使い方とか分かるようで分からない本を分かる素振りで見てた流れで、ふとこの本の目の前まで行き着いた。
組織を芯からアジャイルにする』 2022年7月に出たばかりのようだ。

会社では、エンジニアを中心に「アジャイル」という言葉をよく聞き、社内勉強会や輪読会でも何度かテーマピックアップされている。私も何度か聞きかじってはいたものの、ソフトウェア開発のなんかイケてる方法でけっこうコツとかあるっぽい、程度の認識に留まっていた。あと、カタカナ・英語が多すぎてむずい。

実は既に仕事をアジャイルに進めてるところがあった!

本書を読む前から、今の会社には仕事の推奨な進め方として以下の特徴があるなと感じていた。そして『組織を芯から〜』を読んで「そうか、この人たちはアジャイルっぽい仕事の進め方をしているんだな」と実態と理論が当てはまって、合点した。

  • イシューは何かをハッキリすることは強く求められる

  • イシューが特定されたら、どんどんやってみよう!YOUならできるよ!と背中を押されまくる

  • 何かしら分かったこと、できたことはとにかく初期からドキュメントに落とし込んで形にする

  • 完成形じゃなくても、できたものは周りの人に当ててみる。当ててみて得られたフィードバックから、次の手直しをする

もちろん全ての仕事において、上記が当てはまるわけではないが、特に企画設計からはいるものはコーポレートの仕事においてもこのような進め方がされる。
で、私はこの進め方に面白さ・やりやすさを感じる一方で、不思議さや怖さも感じる部分をなんとなくずっとあった。
本を読みながら、コーポレートのどういう仕事には適用できそうか、という整理と、単に「アジャイルにガンガンやっていこう!!」というマインドによる実践だけではなく、いわゆるアジャイルの進め方お作法を導入することが安心して進めていくためのポイントだなと腹落ちしたので、そのあたりをメモしておく。

コーポレートの中でアジャイルに向きそうな業務は何?

① 定常業務の改善に意外と使えるかも

コーポレート、管理部門といった方がしっくり来るかもしれないが、には定常業務がいっぱいある。私たちがこれらを止めたら会社が止まるし、私たちが間違えたら従業員の生活や会社の信頼に影響が出る。ということに全国のコーポレートな人たちは誇りと責任と恐怖を抱えながら頑張っている。
なので、定常業務にはこの本でいう「最適化」を極めていく力学は働きやすいのだが、「本当にこれが正しいんだっけ?」「本当に従業員のためになってるんだっけ?」といった原点に立ちかえることがマインドとして難しい部分がある。
一方で、定常業務は月次でグルグル回す性質のものも多く、1サイクル回す毎に振り返りを実施している人も多いのではないかと思う。このサイクルにアジャイル的な手法を当てはめることで、単に業務を振り返るだけでなく、次のサイクルに向けたゴール設定や、チームとしての活動の振り返り、方向性の見直しなどを順次取り入れていくことは意外とやりやすいんじゃないかと思った。
もちろん定常業務を回すことで精一杯な場合が多いのも承知なのだが、そこから脱却するためのサイクルの始め方としても「精一杯じゃなくなって、どうなりたいか?」から設定して、今やってることと改善案をバックログに書き出しまくるなども行けそうな気がする。(過去の自分の仕事を省みながら、、、)

② ゴールはハッキリしているが足の長い企画業務

たとえば、「ほにゃららシステムを導入する」「ほげほげ制度を新設する」という全社規模の企画で、社内リリースまで半年かけて行なうなどのケースだ。
この場合、ゴールはけっこう明確なんだけれども、実際のところは企画の骨格を作り、システム・制度の形に仕立て、運用を設計し、細かいルールに落とし込み、必要なドキュメントやツールを作る、とプロセスはめっちゃある。
一連のプロセスを進めていくなかで、追加の課題が見えてきたり、ゴールイメージが具体化されたり、場合によってはゴール設定の見直しが必要になったりする。とくに、新規企画ものは手探り対応なので、進めながら分かることも多い。
ただし、こういった企画は関係者も多く、社内影響も大きいので、最初の段階で進め方を丁寧に決めて、役割分担をし、それぞれに期日を守ってやっていくという進め方を取ることが多い。また期日までになんとか仕上げることを優先すると、追加の課題やゴール見直しなどは目を背けたいのも正直なところだ。
さらに、社内に変に話がリークして独り歩きなんかすると意図しない伝わり方で炎上したりするケースもあるので、お披露目できるまで内容はクローズドで進めたい気持ちにもなる。(透明性のため進捗状況はオープンにするけど、具体的なアウトプットはクローズドなど)
つまり、企画業務の本来的な性質と、実際の仕事の希望的進め方は相反する部分があると思うのだ。ぶっちゃけね。これを本の中では、アジャイルに変えようとする人たちと、従来組織の対立として書いてあるが、アジャイル推進しようとする本人たちの中にも相反する気持ちが対立するんじゃないかと思う。
だからこそ、関係者で(できれば社内全体とも)「この企画はアジャイルに進めよう」という合意形成と、アジャイルに即したフレームを導入することがポイントなのだろう。
今までと同じ進め方をしているなかで、ある日突然「それでは向き直りをして、方針を見直しましょう」「まだ決まりきってないけど、社員にぶつけて考えを聞いてみましょう」となると「これまでの方針はダメだったということかな・・・」「100%じゃないものを見せて何を言われるか・・・」など恐怖心が勝ってしまう。
「方針は何度も見直しながら精緻にしていくものだよ」「社員も理解している前提でフィードバックをえて、社員のニーズによりマッチしたものを作ろう」という認識の共有が大事そうだし、これはとても良いマインドセットだと思う。
実際、今私が関わってる企画業務においても、途中での方針見直しやフィードバック回収が行われてその時は正直ドキドキしたけれど、結果としてはやって良かったと実感していた。本を読んで「あぁ、あの進め方がアジャイルね」と理解納得したので、あらかじめの仕組みとして今後は入れていけるように促進したい。

③ 答えが見えない探索系の業務

ここがアジャイルに取り組むメリットが最大化される本丸領な気がする。
コーポレートも定常業務をちゃんとやっていれば良いだけではなくなってきていて、組織をより良くすることへの取り組みが大事になってきている。②で述べたような大掛かりな企画はどちらかというと「会社が組織をどうしたいか?」が強いが、③においては従業員にとって日々の業務や社員生活がより良いものになった結果、エンゲージメントや生産性が向上して組織が上向くといった、従業員起点のものをイメージしている。
しかし、顧客(=主には従業員)のニーズはどんどん多様化していて、どこの誰が何に困っているのか、どんなソリューションを提供すればハッピーなのか、外から見ているとわからないことが多い。また、コーポレートには「あの部署が今大変らしい」などの話は入ってきやすいものの、実際にどう大変で、どんな影響があって、働く人たちは何に困っているのか?まではよくわからないことも多い。人事がヒアリングをしたけど、直接的な手は打てず。。。で終わることもある。
従来では手の打ち方が分かって方針を立てられてからじゃないと動きづらい部分があったが、アジャイルにすると「課題を解き明かす」ことを方針に、「ヒアリングをしてまずはhogehogeについて明らかにする」という仮説検証から1つのスプリントとして回し始めて「ここまでしかわからなかった」というのも立派な結果の1つになる、というのはすごく心強い仕組みだと思った。私たちがスプリントを回し続ける、という意志を絶やさない限り、「じゃあ次はどうしたらいいか」を考えて実行し続ける動力になりそうだからだ。もちろんコーポレート部門の目的や、会社の意図に一致していることが前提だが、闇雲に何が課題かを各自で悶々するよりも、仕組みに乗せて自分達でフィードバックを返しながら進めていく方法は是非取り入れたい。

直近で、具体的に実践できそうなこと

① 経理の月次決算短縮化

この半年、経理担当のマジックにより20→10営業日まで短くなってきているものの、年度内に6営業日までに縮めようという目標がある。
そのためにはいくつかのポイントで何かやり方を根本から変えないとダメそうで、経理の頑張りだけでなく、労務・社員・取引先の協力も必要っぽい。っぽいのだけど、個別の課題洗い出しや進め方は未定である。バックログを敷いて、毎月のゴールを置いて、振り返って・・・という進め方は課題の精緻化や関係者の巻き込みをしていく観点でも良さそうなので、具体的に検討したいと思う。

②は自分の手元だけでやってくの難しそうというのも現実なので、いったん割愛。できることからやってく。

③ 事業サイドへの入り込み

下期以降、もっとコーポレート自ら事業サイドに入り込んでのサポートができないか?を考えたいという漠然とした思いはある。つい、コーポレートが手の届く範囲、私たち自身に利害がある業務だけの従業員体験を考えがちだが、本当はもう一歩よりリアルにメンバーが働くところまで入り込んで、よい社内基盤を作っていけるようになりたい。と思うはいいものの、果たしてどこからどうして行こうかイメージがついておらず、抽象的な夢物語の域を越えられていない。こういう自分達にニーズがあるのか、もわからない。
ただまさに仮説を検証しながら、解像度を上げて、具体の方針に落とし込んでいくというのはアジャイルに進めるっていうのに打ってつけな気がする。またチャレンジングなことであるから、事業サイドにご迷惑はかけない前提である程度失敗も許容しながら進めていけることなのではないか?
というわけで、下期スタートに向けてどういうフレームで進めると良いかからボチボチ考え始めたい。

この本をうちの部署で輪読会してみるのもありかもな。
いったん今日はおしまい。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?