マイノリティこそ多様性の宝庫

2021/04/12

僕は幼い頃から勉強もスポーツも芸術系も何をやってもダメな典型的な落ちこぼれ人間で、中学生くらいから「大人になったらどうやって食っていけばいいんだろう」とずっと悩んできました。

幸いにも高校の入学祝いに買ってもらったパソコンでプログラミングに夢中になれたおかげでその道で食っていこうと心に決め情報系の専門学校にいってIT企業に就職、念願のエンジニアになれました。

とはいえ根っから地頭が悪い僕は社会人になってからも同期がどんどん成長していく中でスキルが全く伸びず、5年目にたまたまインフラエンジニア(当時はシス管 = システム管理者などと呼ばれていた)という職域に巡り合い、ようやく心底ハマれることが見付かったと思ったものの、いくら勉強してもその道の先人達には到底追い付けず、やはり悶々とした日々が続いていました。

そんな中、当時まだサービスが始まったばかりのmixi(事業の主力がゲームではなくSNSだった時代)のコミュニティ機能を使って気分転換の意味も込めて地元で地域コミュニティを始めてみました。(起業を考えていたので人脈作りの側面もあった)

すると僕が当たり前のように知っている知識が非ITのかたにはとても役に立ったようで、仕事以外で人から感謝されることがこんなに嬉しいものなのかという原体験を得たのでした。

ただその一方で「友達なんだから(タダで)人紹介してよ」とか「友達なんだから(タダで)ITのこと教えてよ」的ないわゆるフリーライダー問題にも直面し、それがエスカレートしてきたためコミュニティを解散したんですが、その際今まで友達だと思っていた人が文字通りクモの子を散らすように一斉に離れていき、メリットのある・なしで人の態度ってこんなにも変わるものなのかと人間不信にもなりました。

そこで次にメリット・デメリットあまり関係ない気分転換の場として朝活コミュニティを始めました。

これは朝の出勤前のちょっとしたスキマ時間を使ったコミュニケーションの場で、たくさんの職業のかたと知り合うことができ現場の生の声が聞けてとても勉強になりました。

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それも数年でやめ、しばらく間が空いたあと仕事がだんだんとハードウェアに触る機会のない仮想化技術を使ったもの(今でいうクラウド)にシフトしつつある中で手が寂しくなってきたところで、Raspberry PiやArduinoといった安価で自分で触れるデバイスがあることを知って勉強し始めたんですが、ハードウェアの知識がほとんどない(かつ地頭が悪い)僕にとっては書籍やネット記事などでは理解が進まず、詳しい人にいろいろ教えてもらうには自分で場を作ればいいという発想で「Arduinoファン」というコミュニティを作りました。

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コミュニティを始めてみて思ったのは、Arduinoなどを使ったいわゆる電子工作の世界はやっている人は総数としてはそれなりに存在するものの、「自分のまわりにやっている人がいない」と肩身の狭い思いをしている人がかなり多く、皆で集まって楽しめる場所ができたということでクチコミでどんどんメンバーが増えていったことです。

メンバーのみなさんには他のコミュニティや別分野の人とも交流してもらいたいと当初から考えていたので僕の友人・知人で少しでも興味があればイベントに呼んでみたり、他のコミュニティと合同でイベントを行ったり、別の地域に行った時などにその地域のコミュニティのイベントに遊びに行ったり、自分自身もコミュニティもマンネリ化しないように意識してきました。(もちろん自分がそうしたいからやっているんですが)

そうした活動の中で見えてきたことは、

僕は一つ一つのスキルは平凡である(これは元から分かっていること)
しかし親が商売をやっていたこともあって人見知りすることが全くない
人と人を繋げることに喜びを感じる
つまり技術以外にも興味のあることが実は多い

という自己理解です。

エンジニアはスペシャリスト気質で人見知りの人が多いので、僕はエンジニアとしての平凡さを他の素養で補えると考えました。

僕のふわっとした考えを言語化してくれているかたが!

そんなことを以前からぼんやり考えていましたが、ゆるスポーツの生みの親としても有名なコピーライター澤田智洋さんの著書『マイノリティデザイン』に出会って読んでみると、弱みは武器になるということが論理的かつご本人の体験をもとに丁寧に解説されていて、なんだかものすごく自分が肯定された気持ちになりました。

苦手なことを克服するために膨大な努力をするのではなく、弱みと強みを掛け合わせれば唯一無二の存在になれる、そしてそういう人が増えれば世の中は多様性に満ちていく。

自分がマイノリティだからといって悲観することは全くなく、むしろレアキャラになれる可能性を秘めていることを優しく教えてくれる素敵な本なので、自分がマジョリティ側でないなと悩んでいるかたは読んでみてはいかがでしょうか。