11月6日、The Decoderが「Anthropic's $1.5 trillion IPO hits resistance as investors balk at valuation」と題した記事を公開した。Anthropicが目指す1.5兆ドルのバリュエーションに対し、投資家が「まだ高い」として強硬に値引きを求めており、IPOが暗礁に乗り上げつつあるという内容だ。
1.5兆ドルでも「高すぎる」——投資家が難色
Reutersの報道によると、Anthropicは来週予定していたロードショー(IPO前に機関投資家向けに行う説明会ツアー)の開始が難しい状況にある。潜在的な出資者の間では、スケジュール通りの実施を疑問視する声が上がっている。
バリュエーションをめぐる攻防が激しい。Anthropicは今年9月時点で最大2兆ドルの企業価値を見込んでいたが、現在は1.5兆ドルで調整を試みている。それでも投資家側は評価額が高すぎるとして難色を示しており、ある投資家は1兆ドルという水準まで引き下げるよう求めたと伝えられている。
投資家が強気に値引きを求める背景には明確な理由がある。Anthropicは現時点でまだ赤字であり、AIインフラのスケールアップのためにキャッシュを大量に消費し続けている。加えて、直近のS-1(SEC=米証券取引委員会への目論見書登録書類)の更新版に10月の売上データが含まれていないことも不安材料となっている。
市場環境も逆風に
タイミングも悪かった。直近のテック株安でAIセクター全体に売り圧力がかかっており、AIインフラ投資に対する投資家の目線はかつてなくシビアになっている。Wall Street Journalも同様に、IPO投資家の懐疑的な姿勢を報じている。AIセクター全体に対する売り圧力が続けば、Anthropicは最大1,000億ドル規模と試算されるIPO自体を延期する可能性がある。延期になれば、AIセクター全体への投資家心理をさらに冷やしかねない。
Anthropicとは——設立経緯と競争環境
Anthropicは2021年、OpenAIの元幹部らがAIの安全性研究を重視する方針のもとで設立したスタートアップだ。大規模言語モデル「Claude」シリーズを擁し、OpenAIのGPT-4oやGeminiと並ぶ主要モデルとして認知されている。
資金調達面ではGoogleとAmazonがそれぞれ数十億ドル規模の出資を行っており、財務的な後ろ盾は厚い。それでも、大規模なGPUクラスタの整備・運用に伴うキャッシュバーンは莫大であり、黒字化の時期が見通せないことが今回の投資家の慎重姿勢につながっている。AI企業のIPOとしては、2023年に上場したArm Holdingsが時価総額600億ドル超を達成した例があるが、1.5兆ドルという水準はその25倍以上に相当し、ハードルの高さが際立つ。
※編集部の考察:Armは設計IPに特化したファブレスモデルで安定したライセンス収益を持つのに対し、Anthropicはモデル開発・運用コストが重く、収益構造の違いが評価額の正当性を巡る議論を複雑にしている。
論点の整理
Anthropicを取り巻く主な懸念材料と現状の数字を整理すると以下のとおりだ。
- 当初想定バリュエーション(9月時点):最大2兆ドル
- 現在の目標バリュエーション:1.5兆ドル
- 一部投資家が提示した水準:1兆ドル
- IPOの規模(推定):最大1,000億ドル
- 主な懸念材料:継続赤字、高水準のキャッシュバーン、S-1での10月売上未開示、テック株安によるAIセクター全体への売り圧力
バリュエーションへの反発、赤字体質、市場環境の悪化——三つの逆風が重なる中で、Anthropicがいつ、どのような条件でIPOに踏み切るかは、AI業界全体の資金調達環境を占う試金石にもなりそうだ。
詳細はAnthropic's $1.5 trillion IPO hits resistance as investors balk at valuationを参照していただきたい。