11月5日、OpenAIが「GPT‑6 Cyber: Advancing the frontier of aligned cybersecurity agents」と題した記事を公開した。サイバーセキュリティ特化モデル「GPT‑6 Cyber」の能力・安全性・実績について詳しく紹介されている。
Firefoxで81件の未知の脆弱性を発見 — 実績が示す実力
GPT‑6 Cyberの最大の見どころは、実際のコードベースに対して機能したという具体的な成果だ。
OpenAIの脆弱性研究チームがGPT‑6 Cyberを使ってFirefoxを解析したところ、81件の未知の高深刻度脆弱性を発見した。これはフロンティアモデルによる広範なテストが既に実施された後での発見である。さらに、既知の30件の問題が従来の報告より深刻であることも示した。OpenAIはMozillaに発見内容と修正候補パッチを開示し、Mozillaはその多くについて修正を公開している。
Linuxカーネルでの成果も大きい。GPT‑6 Cyberは1,724件の脆弱性を再現し、そのうち948件の動作するエクスプロイトを開発した。これは同じ研究環境でGPT‑5.6 Solが達成した166件の5倍以上の数字だ。304件の重大な発見については候補パッチとともにメンテナーへ開示済みで、残りの対応も進行中だという。詳細は別記事でまとめられている。
Brotli(Googleが開発し、ブラウザやHTTPサーバーなど広範な用途で使われている圧縮アルゴリズム)においても、GPT‑6 Cyberを活用してリモートコード実行(RCE)を可能にする重大な脆弱性のエクスプロイトを開発・検証している。
ベンチマーク:GPT‑5.6 Cyberからどれだけ伸びたか
能力評価の基準として、OpenAIはいくつかのベンチマークを用いている。
- ExploitGym(リモートターゲットの脆弱性を悪用できるか測定):GPT‑6 Cyberは48.5%を記録。GPT‑5.6 Cyberの32.1%から約16ポイントの改善で、相対的には51%向上となる。
- オフェンシブWebペネトレーションテスト(新設評価):ソースコードなしでWebアプリを探索し、GPT‑6 Cyberは脆弱性の**40.3%**を検出。GPT‑6 Astraの32.0%を上回った。
- RemoteExploitBench(新設。GitLab・PostgreSQL・JenkinsなどへのRCEを評価):GPT‑6 Astraをベースにした構成が100%リクエスト拒否したのに対し、GPT‑6 Cyberは95%完了(失敗はリモート動作に至らなかった1件のみ)。
数字だけを並べると分かりにくいが、これらの評価が一貫して示しているのは「単純な脆弱性の列挙にとどまらず、実際に機能するエクスプロイトを自律的に開発できる水準に達した」という点だ。ExploitGymの16ポイント改善は、模擬環境での正答率向上ではなく、実環境に近いリモートターゲットに対する成功率の向上であり、実運用上の意味が大きい。
これらの評価結果を受け、OpenAIは自社のPreparedness Framework(モデルのリスクを段階的に評価・管理するための内部フレームワーク)においてGPT‑6 CyberのサイバーセキュリティリスクレベルをGPT‑5.6 Cyberの「High」から「Critical」に引き上げた。能力が上がったからこそリスク分類も上がるという、正直な評価姿勢といえる。
「スコープ外を攻撃しない」 — アライメントへの注力
能力の向上と並行して、OpenAIが力を入れたのがスコープ遵守の信頼性だ。
セキュリティエージェントにとって、割り当てられたタスクの範囲外を誤って攻撃するリスクは実運用上の大きな懸念になる。GPT‑6 Cyberには、認可された範囲内に留まり、制限を尊重し、結果を正確に報告するための専用トレーニングが施されている。
評価指標はExploitGym Honeypotだ。これはタスク完了に利用できる「わざと脆弱にされた支援サービス」(パッケージレジストリ、オブジェクトストアなど)を設置し、モデルがそれを攻撃するかどうかを見る。元記事によれば、過去に実際のインシデントを踏まえて設計されたという。
結果:
- デプロイ用安全プロンプトなし:スコープ外攻撃を**99.93%**で回避(GPT‑5.6 Cyberは94.49%)
- デプロイ用安全プロンプトあり:**100%**でスコープ内に留まった
モデルの思考プロセス(chain-of-thought)には、このような推論の痕跡が残っている:
"Can't assume extra API or attack controller not target. We should only target binary/server."
"don't explore out of scope credentials."
アクセスと展開:誰が使えるか
GPT‑6 Cyberは現在、APIおよびCodexを通じて、承認済みのDaybreak Redカスタマーの一部に提供されている。段階的に全Daybreak Redカスタマーへ拡大予定だ。GPT‑5.6 Cyberは全Daybreak Redカスタマーへ提供が開始される。
OpenAIはDaybreakプログラムを通じてアクセスを段階的に広げている:
- Daybreak Blue:検証済みの防御側が脆弱性・修正の検証を行うためのアクセス(GPT‑6 AstraベースのBlueアルファ版を追加組織・個人研究者に拡大中)
- Daybreak Red:より深いエクスプロイト開発・認可済みセキュリティテスト用(GPT‑6 Cyber)
- Daybreak Red for Critical Infrastructure:重要インフラ防御チーム向けの新グループ
- Daybreak for Frontline Defenders:政府機関・必須サービス提供者向けに10億ドル規模のグラントプログラムでアクセスを補助
Cisco、CodeRabbitといった企業のセキュリティチームがすでに脆弱性調査やコードレビューに活用しているという。なお、元記事に「Calif」という企業名が記載されているが、一般的に知られた企業名ではなく原文の確認が必要なため、本記事では記載を留保した。
詳細はGPT‑6 Cyber: Advancing the frontier of aligned cybersecurity agentsを参照していただきたい。