11月4日、MIT Technology Reviewが「Texas was the new epicenter of the AI data center buildout. That might be kaput.」と題した記事を公開した。この記事では、テキサス州を席巻した民主党の"ブルーウェーブ"が、同州のAIデータセンター建設ブームに与える政治的・経済的リスクについて詳しく報じている。
テキサスは米国最速のデータセンター市場だった
テキサス州はここ数年、米国で最も成長の速いデータセンター市場として、BigTechの大規模AI拠点が集中するエリアとなっていた。規制が少なく土地が広大で電力コストが低いとされてきたテキサスは、データセンター開発業者にとって理想的な立地だったが、2026年の中間選挙でテキサスに"ブルーウェーブ"(民主党の大規模な選挙勝利)が到来し、その状況が一変しつつある。
民主党のJames Talarico氏がKen Paxton氏を破って上院議員選に勝利。Gina Hinojosa氏は共和党現職のGreg Abbott知事を倒し、知事選を制した。さらに州下院でも民主党が24年ぶりの過半数を獲得した。Talarico、Hinojosaの両氏は選挙戦を通じてデータセンター問題を中心的な争点として訴え続けた。背景には、テキサス州独自の電力網ERCOT(Electric Reliability Council of Texas)への大規模な電力需要集中による電気料金値上げや、水資源・土地をめぐる地域住民の不満の高まりがある。
転換は選挙前からすでに始まっていた
業界内では、選挙結果を待たずして空気の変化が察知されていた。選挙当日、バージニア州Ashburnで開催されていたデータセンター業界カンファレンス「DCD」では、パネリストたちが「テキサスは長年、最も建設しやすい場所だったが、9月を境に変わった」と嘆いた。
Abbott知事はデータセンターへの超党派的な反感(電気料金の上昇や土地・水資源の問題が主因)を見越してか、自らも方針を転換。9月21日には州の主要規制当局に対してデータセンターの許可申請を停止するよう指示し、開発業者へのメール返信も止まったという報道も出ていた。
建設中の巨大プロジェクトが宙に浮く
問題の深刻さを示すのが、すでに着工済みの案件の規模だ。
- Stargate Frontier(Shackelford郡):計画容量1,820メガワット。現在テキサスで稼働中の最大施設の2倍以上の規模。なお「Colossus 2」はSpaceXがテネシー州で進める大規模GPU集積施設であり、Stargate Frontierはこれと同等規模とされる
- Nexus Hubbard:計画容量6,400メガワット。主にAnthropicへのクラウドコンピューティングリソース提供を想定した施設で、ルイジアナ州のMetaの「Hyperion」プロジェクトに次ぎ、米国で建設中のデータセンターとして第2位の規模
Hinojosa知事候補は2023年時点では建設雇用の促進を理由にデータセンターへの税制優遇を支持していたが、選挙戦中に全面的なモラトリアム(建設凍結)の導入を主張する立場に転換した。
資金調達も絞られ始めている
政治リスクだけではない。銀行・貸し手側もデータセンタープロジェクトへの融資審査を厳格化しており、資金調達環境が悪化しつつある。データセンター建設は現在の米経済成長を下支えする柱の一つとなっているため、政治・金融の両面からのブレーキが重なれば、波及効果は広範に及ぶ可能性がある。
有権者は「データセンター反対」を明確に示した
今回の中間選挙では、州の住民投票から連邦レベルの議席まで、有権者の意思は一貫していた。データセンターによる電気料金値上げから消費者を守る措置への支持、さらには新規建設の全面禁止を求める動きも票を集めた。BigTechが「AIがもたらす豊かさで医療が改善し、物価が下がり、科学的発見が増える」と訴えてきた説得戦略が、有権者に届いていないことが改めて示された格好だ。
規制実施は「言うより難しい」
ただし、実際に建設凍結が進むかは不透明な部分も多い。テキサスでは、プロジェクトの可否を単独で決める機関は存在せず、市・郡・州の各行政機関の複合的な判断によって進む。データセンター建設が活発な郡の中には選挙でRepublican寄りの結果が出たところもあり、州レベルの規制に抵抗する地方官僚が出てくる可能性もある。さらに、民主党の選挙戦を支援した建設労働組合がモラトリアムに反発するシナリオも現実的だ。
テキサスのブルーウェーブがデータセンター産業の死を意味するかどうかは、選挙公約を実際の政策に落とし込む過程で、多くの利害関係者の綱引きによって決まる。元記事は「規制実施は言うより難しい」という慎重なトーンで締めており、事態の帰趨はなお流動的だ。
詳細はTexas was the new epicenter of the AI data center buildout. That might be kaput.を参照していただきたい。