11月5日、The Cooldownが「Nearly 1 in 3 hiring managers say their companies rehired for the same jobs they cut for AI」と題した記事を公開した。AIや自動化を理由に廃止したポジションを復活させた企業が全体の**32%**に上るという調査結果だ。「AIに置き換えられる」という言説が先行する一方で、現場では組織知識・人間関係・予期せぬ問題対応といった要素がボトルネックとなり、単純な自動化では補えないケースが次々と露呈している。
AI名目の人員削減、3割が「同じポジションを再雇用」
この調査は、人材派遣・採用支援大手のRobert Halfが米国の採用担当者2,000人を対象に実施したものだ。調査方法・実施時期の詳細は元記事に明示されていないが、32%の組織がAIまたは自動化を理由に廃止したポジションを復元したと回答している。カスタマーサービスやエンジニアリング領域が特に影響を受けた分野として名前が挙がった。
復元した理由として、採用担当者が挙げた内訳は以下の通りだ。
- **40%**:組織固有のノウハウや文脈がAIでは対応不可
- **38%**:想定以上の監視・品質チェック業務が発生
- **35%**:生産性の向上が期待値を下回った
こうした現象は元記事の中で「AIブーメラン(AI boomerang)」と表現されている。削減した人材がブーメランのように戻ってくるという意味合いで、元記事由来の表現だ。業界全体に定着した用語ではないものの、今回の調査結果を端的に言い表している。
Klarnaの失敗と軌道修正
最も象徴的なケースが、スウェーデンのKlarnaだ。同社はBNPL(Buy Now Pay Later=後払い決済)のパイオニアとして知られ、「チャットボットが数百人のエージェント相当の能力を持つ」と公言してカスタマーサービス人員を大幅に削減した。しかし、2025年にCEOのSebastian Siemiatkowskiが「チャットボットへの依存が行き過ぎた」と認め、人間のカスタマーサービス担当者の採用を再開している。
現在の運用は、ルーティン的な問い合わせは自動化を維持しつつ、感情的な内容を含む苦情・特殊なケース・複雑な問題には人間が対応する体制に切り替えた形だ。大々的なAI移行を宣言した企業が方針転換を余儀なくされた事例として、業界内で広く注目されている。
Fordのケース:自動化された品質検査の限界
Fordでも同様の事例が確認されている。自動化された品質検査が期待水準を満たさなかったため、製造上の欠陥を特定・原因究明し、品質基準の改善に活かせる経験豊富なエンジニアを採用・昇格させた。対象には元社員やサプライヤー出身者も含まれており、同社はAIと技術者の組み合わせが品質向上に貢献したとしている。
Klarnaのカスタマーサービス領域とFordの製造品質管理という、業種・職種ともに異なる二つのケースが同じ結論——「AIだけでは補えない人間の役割がある」——に行き着いている点は注目に値する。
見落とされていた「非公式な仕事」
ジョージタウン大学マクドノー・スクール・オブ・ビジネスで経営学を教えるBrooks Holtom氏は、企業がAIに業務を割り当てる際に従業員の実際の働き方を把握できていないと指摘する。
従業員は職務記述書に書かれた業務以外にも、誰も想定していなかった問題のトラブルシューティングや、AIが代替できない人間関係の維持・組織知識の蓄積を担っている。自動化できるタスクにのみ焦点を当てると、こうした「非公式な貢献」が可視化されないまま失われる。削減後に問題が顕在化して初めて、その価値に気づくというパターンが今回の調査でも繰り返されている。
AI削減を推進した主な企業
記事内では、AI関連の人員削減を発表した企業としてMicrosoft、Barclays、Krogerの名前が挙げられている。なかでもKrogerは、新CEOのもとでAI活用による業務重複排除を掲げ、約3,000人規模のコーポレート職削減を計画しているとされる。これらの企業が今後「AIブーメラン」の当事者になるかどうかは、現時点では不明だ。
削減から再雇用へという流れは、AI導入コストの二重計上(削減コスト+再雇用コスト)という経営上の問題も孕んでいる。性急な自動化判断がかえってコスト増につながるリスクは、今後の企業のAI戦略において重要な検討事項になるだろう。
詳細はNearly 1 in 3 hiring managers say their companies rehired for the same jobs they cut for AIを参照していただきたい。