11月5日、PYMNTSが「Democratic Sweep Could Slow AI Build Out」と題した記事を公開した。今回の米中間選挙で民主党が議会・州レベルで広く議席を獲得したことを受け、AIデータセンターの建設計画や規制環境に与える影響を詳しく分析した内容だ。
テキサス州の「41%」が止まるかもしれない
今回の選挙で最も衝撃が大きかったのはテキサス州だ。同州は36年ぶりに民主党知事を選出した。当選したGina Hinojosaは、データセンター建設の州全域モラトリアム(一時停止措置)を2027年半ばの立法会期まで継続することを選挙公約として掲げており、この施策が実際に実行されるかは今後の立法プロセスを経ることになる。
この「6か月超の停止公約」が何を意味するかは、業界調査会社SemiAnalysis(AIインフラや半導体サプライチェーンを専門とする独立系リサーチファーム)の試算が示している。同社によると、テキサス州は2028年の米国新規データセンター容量の41%を計画上で占める。Axiosの報道によれば、仮に停止公約が実行されれば、同州のプロジェクトに長期的な遅延が生じる可能性があるとされている。
テキサスはさらに、30年超ぶりとなる民主党上院議員としてJames Talaricoを選出した。Talarico自身も、地域コミュニティへのデータセンター建設に対する発言権強化と、開発者への電力・水道コストの自己負担を主張していた。
「データセンター反対」が全米で票を集めた
テキサスにとどまらず、データセンターへの反発は全米的な争点になった。ワシントン・ポストの報道によると、10州41の行政区でデータセンターの制限・禁止をめぐる住民投票が実施され、うち29の行政区で可決された。
「有権者はAIとデータセンターにルールを求めると明確なメッセージを送った」と、AI規制推進団体Americans for Responsible Innovation(AIの安全・倫理的活用を推進するロビー団体)の共同創設者Brad CarsonはAxiosにコメントした。
Big Techへの「subpoena(召喚状)の森」
議会でも民主党が主要委員会の委員長ポストを握る見通しで、BigTechへの姿勢は強硬だ。マサチューセッツ州選出のEd Markey上院議員はPoliticoに「これだけの召喚状を印刷するために新しい森が必要になる」と述べた。下院監視委員会の新委員長に就くとみられるカリフォルニア州のRobert GarciaはXに一言投稿した。「Lawyer up(弁護士を雇え)」。
株式市場の明暗:既存大手 vs. 新興プレイヤー
選挙結果を受けた市場の反応は明確に二極化した。
- NvidiaとAMDはそれぞれ約1%下落(NASDAQが+1.75%、ダウが+1300ポイント超の上昇の中で)
- データセンター関連のApplied Digitalは**-4.1%、CoreWeave(NvidiaのGPUクラスターを大規模展開するAI特化クラウドプロバイダー)は-5.3%、Cipher Digitalは-14.3%**
- 一方、Amazon・Alphabet・Microsoft・Metaの株価はいずれも堅調な上昇
この対比をNeedhamのアナリストLaura Martinは明快に説明した。「規制のハードルが高くなれば、既存の大手は守られ、新規参入者のリスクと要求資本収益率(ROIC)は上がる。ハイパースケーラーはAIの既得権者だ」。
WedgeBushのアナリストDan Ivesも規制強化を一概に悲観的には見ていない。「トランプが拒否権を持つ以上、過激なAI規制法が通ることはないだろうが、テック業界は議会での交渉のテーブルに引き出される形になる」と述べた。
MuskとZuckerbergの対トランプ接近戦略に見直し圧力
今回の結果は、Mark ZuckerbergやElon MuskがTrumpとの距離を縮めてきた戦略の見直しを迫る可能性もある。MuskはPaxtonを含む共和党候補を支援するために4億ドル超を投じたが、Paxtonはテキサス知事選で100万票超の差で敗北した。ただし、Muskらの判断が「誤りだった」と断定できる状況ではなく、今後の政治的立ち位置への影響が注目される段階だ。
AIデータセンターの建設ラッシュが2024年から加速する中、今回の選挙結果は電力・水資源の地域負担問題を政治的争点として一気に浮上させた。SemiAnalysisのような業界調査機関がテキサスの容量インパクトを具体的な数字で示したことで、投資家が「規制リスク」をより現実的に織り込み始めている点は注視に値する。
詳細はDemocratic Sweep Could Slow AI Build Outを参照していただきたい。