11月4日、Craig Haleが「We were highly skeptical about the cost of AI': Revolut reveals it cut AI coding costs by cutting out Claude entirely」と題した記事を公開した。デジタルバンクのRevolutがAnthropicのClaudeを廃止し、オープンウェイトモデルの自己ホスティングに移行することでAIコーディングコストを最大90%削減した事例を詳しく紹介している。
Claudeを廃止し、推論コストを90%削減
ロンドン拠点のデジタルバンクRevolutは、AIコーディング支援にAnthropicのClaudeを使用していたが、コスト対効果に問題を抱えていた。ヘビーユーザーの一部は月に数千ドルものトークン費用を消費していたにもかかわらず、見合ったROIが得られていなかったという。
Revolutのインフラリード、David Abitbol氏は先月の講演でこう述べた。
「AIのコストについては非常に懐疑的だった。ローンチ時には厳しい予算制限を設けた」
その結果、Revolutが選んだ解決策はZ.aiが開発するオープンウェイトモデル(GLMシリーズ)を自社でホスティングすることだった。これにより、推論コストを約90%削減することに成功した。
※ Z.aiおよびGLMシリーズについて補足すると、GLMは清華大学発のChatGLMシリーズに連なるモデル系列とみられる。元記事ではGLM-5.1という具体的なバージョン名が言及されており、Z.aiとの開発関係も記載されているが、詳細は元記事およびZ.ai公式サイトを参照されたい。
コストの中身:トークン単価と自社インフラ
コスト削減の核心は、トークン単価の圧縮にある。元記事によれば、GLM-5.1の推論コストは入出力トークン合計で100万トークンあたり約0.30ドルとされており、これは商用APIの同等サービスの約10分の1に相当する。
さらに重要なのが、トークン上限の撤廃だ。Claudeを使用していた頃は予算制限のもとで運用していたため、開発者は使用量を気にしながらAIを使わざるを得なかった。自社ホスティングに移行したことで開発者が自由にAIを活用できる環境が整い、リードタイム生産性が70%向上、コーディング時間の生産性が60%向上したとAbitbol氏はGTC Berlinでも報告している。
Abitbol氏の言葉が端的に状況を示す。
「オープンソースはRevolutの優先事項になった。経済的に有利で、請求額は定額、月末に請求ショックを受けることもない。フロンティアモデルは例外的な用途にのみ使う」
自社ホスティングの現実:無視できないインフラコスト
ただし、自己ホスティングはタダではない。元記事によれば、Revolutは現在Nvidia B200 GPU(※注)を56基保有しており、GLMモデルの稼働だけでGPUメモリが380GB以上必要とされる。さらに、ユーザーごとのコンテキスト保持に6〜26GBのメモリが別途かかる見込みだ。
※ Nvidia B200は2024年発表の最新世代データセンター向けGPU。上記の56基という保有数およびメモリ要件はいずれも元記事に記載された数値である。
GPU調達費用、電気代、保守費用といったインフラコストは大幅に増加しているはずであり、「推論コスト90%削減」はあくまでモデル利用の直接費用の話だ。総所有コスト(TCO)ベースでの評価は別途必要であり、この点は本事例を自社に当てはめる際に注意が求められる。
「脱Claude」の流れはRevolutだけではない
Revolutに限らず、商用AIモデルの直接利用を見直す動きは広がっている。MetaやMicrosoftも社員によるClaude利用を制限する方針を打ち出したと複数メディアが報じており(※元記事もこの流れに言及しているが、各社の公式発表については各報道を参照されたい)、企業がAIコストのコントロールを重視し始めた流れの一環として捉えられる。
RevolutはもともとGoogleのGeminiを試験的に使用した後にClaudeへ移行した経緯があり、今回が初めてのモデル切り替えではない。試行錯誤を経た上での判断という点は、単なるコスト削減ではなく、AIインフラ戦略の成熟を示している。
また、Z.aiのGLMモデルについてAbitbol氏はデータプライバシーと監査可能性(auditability)を評価しており、金融機関として規制要件を意識した選定であることもうかがえる。オープンウェイトモデルはウェイトを自社環境で管理できるため、金融規制上のデータ主権の観点でも利点がある。
まとめ
Revolutの事例は、「有名な商用モデルをAPIで使い続ける」ことが必ずしも最適解でないことを示している。自社ホスティングには相応のインフラ投資が伴い、TCOの精緻な試算なしに追随するのはリスクがある。一方で、使い放題による開発者体験の改善、定額コスト構造の安定性、そてモデル実行環境の自社管理によるプライバシー・監査対応は、一定規模以上の組織には魅力的な選択肢になりうる。APIコストの膨張に課題感を持つ企業にとって、具体的な数値を伴った実例として参考価値が高い。
詳細はWe were highly skeptical about the cost of AI': Revolut reveals it cut AI coding costs by cutting out Claude entirelyを参照していただきたい。