11月5日、SiliconAngleが「Tencent releases Hy4, powerful frontier LLM introducing visual understanding and computer use」と題した記事を公開した。テンセントがHyシリーズ初となるコンピュータ操作機能を搭載した大規模言語モデル「Hy4」を正式リリースし、視覚理解・自律エージェント・ゲーム開発支援を一体化した同社のフロンティアモデルとして位置づけている。
コンピュータ操作機能を初搭載——Hy4の概要
テンセントはHy4を正式公開した。同社のHyシリーズとして初めてコンピュータ操作(computer use)機能を搭載したモデルであり、視覚理解・推論・ツール呼び出しを組み合わせることで、長期的な自律タスク(long-horizon agentic tasks)を実行できる。コンピュータ操作機能とは、モデルがスクリーンショットを認識しながらGUI操作やアプリケーション制御を自律的に行う能力を指し、Anthropicが Claude 3.5 Sonnetで導入して注目を集めたアプローチと同系統の機能にあたる。
モデルの規模は7700億パラメータ(うちアクティブパラメータは490億)、コンテキストウィンドウは100万トークン。Mixture-of-Experts(MoE)構造を採用することで、全パラメータを常時稼働させずに推論コストを抑えつつ大規模な表現力を確保している。位置づけとしてはMistral AIや北京Moonshot Technology、Z.AIなど欧州・中国系のオープンウェイトフロンティアモデルと同等の水準とされている。
前身のHy4 Preview(8月28日公開)と比較して、指示追従、長文脈理解、エージェント型長期タスク、深い調査(deep research)の各領域で性能が向上。また、前バージョンで確認されていた「過剰な推論」と「過剰な検証」の問題——思考ステップが不必要に冗長になったり、同一の検証を繰り返したりする挙動——も修正されている。
ゲーム開発・フロントエンド強化が目玉
エンジニアとして注目したい点は、フロントエンドおよびゲーム開発向けの強化だ。複雑なビジネスロジック、状態管理、オーケストレーションを含むタスクへの対応を重点的に改善しており、視覚的に洗練されつつ完全に動作するUIの生成精度を引き上げている。UIコード生成は既存モデルにとって難所のひとつであり、見た目は整っていても動作しないコードが生成されやすい領域だったが、この課題への対応が明示されている点は実用面で意味が大きい。
ゲームエンジンとの統合面では、**Unreal Engine、Unity、Godotへの深い対応が追加された。複雑なゲームロジックやマルチプレイヤー実装をサポートするとされており、ゲームロジックの生成・補完・デバッグなどの用途での活用が想定される。ベンチマーク上の改善率は、GameDev benchで+19.1%、GameLogic benchで+9.8%**(Hy4 Preview比)。ただし、比較元の絶対スコアは非公開となっており、他モデルとの直接比較は現時点では難しい。
なお、ゲームの複製・リバースエンジニアリングへのAI利用が業界的に問題視される流れもある中、AnthropicはClaude CodeおよびOpus 5.5モデルでこうした用途をブロックする対応を取っている。テンセントのHy4がこの点でどのようなポリシーを採るかについては、現時点で言及されていない。
科学的推論の強化とRecursive Self-Improvement
科学的推論の向上に際して、テンセントはRecursive Self-Improvement(再帰的自己改善、RSI)と呼ばれるアプローチの次段階を採用している。RSIとは、モデル自身またはその派生システムが自らの出力・学習プロセスを評価・改善するフィードバックループを指す概念で、AI研究コミュニティでは能力の自律的な向上を実現する手法として研究が進んでいる。
具体的には、自律型AIリサーチエージェントシステムである「Hyra 2.0」ハーネスを活用している。Hyra 2.0はテンセントが独自に構築したリサーチエージェント基盤であり、Hy4と同一アーキテクチャを共有する小規模モデルの事前学習インフラを最適化するために用いられた。つまり、より小さなモデルが学習基盤の改善を担い、その成果がHy4の訓練品質の向上につながるという、エージェントが訓練パイプラインに関与する構成となっている。こうしたアプローチは、人間のリサーチャーが設計したカリキュラムに依存せず、モデル自身の能力評価を起点に学習を最適化できる点で注目される。
価格と提供状況
現在、Tencent Cloud TokenHub、WorkBuddy、CodeBuddy、Yuanbao、WeCom AIアシスタント、Imaなどで利用可能。サードパーティ経由ではOpenRouter、Hermes、OpenCodeからもアクセスできる。
価格はHy4 Previewから据え置きで、入力トークン100万件あたり約0.90ドル、出力トークン100万件あたり約2.70ドル、キャッシュ済み入力トークン100万件あたり約0.045ドル。
コスト効率を重視したFlashバージョンも近日公開予定。モデルウェイトとシステムカードについても、オープンソースへの取り組みの一環として数日以内に公開する予定とされている。
詳細はTencent releases Hy4, powerful frontier LLM introducing visual understanding and computer useを参照していただきたい。