10月29日、TechCentralが「OpenAI wants to buy AI chips from Google to reduce its reliance on Nvidia」と題した記事を公開した。検索・AI分野で真っ向から競合するOpenAIとGoogleが、チップ売買という形でビジネス上の取引関係に入る――この逆説的な構図が、AI半導体市場におけるNvidia一強体制の綻びを象徴している。The Informationの報道を受けて注目が集まるこの取引は、単なるサプライチェーン多様化の話にとどまらず、AI業界全体の勢力図が塗り替わりつつあることを示すものだ。
OpenAIがGoogleのTPUを購入へ――競合関係を超えた取引
The Informationの報道によれば、OpenAIはGoogleからTPU(Tensor Processing Unit)を購入する計画を持っている。具体的な金額は非公開だが、この動きはOpenAIにとって明確な戦略転換を意味する。同社はこれまでAI推論・学習の主要インフラをNvidiaのGPUに強く依存してきた。
TPUはGoogleが独自開発したAI専用アクセラレータで、行列演算を高速化するために設計されている。Nvidiaの汎用GPU(A100/H100系)とは異なり、機械学習ワークロードに特化したアーキテクチャを持つ。Googleは最近になってTPUハードウェアを外部パートナーへ限定提供し始めたばかりだが、Anthropicとの提携などを通じてすでに需要が急増しており、Google社内の研究チームでさえ調達遅延が発生しているという。
Google親会社Alphabetの最高財務責任者Anat Ashkenaziは、今年末のTPU販売による収益は小規模にとどまる一方、財務面での本格的な回収は2027年を見込んでいると述べた。
「ライバル」との距離が急速に縮まる
OpenAIとGoogleは検索エンジンおよびAI分野で直接競合する関係にある。ChatGPTの台頭はGoogleに「コード・レッド」を宣言させ、Geminiの急ピッチな開発を促した経緯がある。にもかかわらず、両社のビジネス関係は近年急速に深まっている。OpenAIはすでに最上位モデルをGoogle Cloud上でホスティングすると発表しており、これはAmazon Web Services(AWS)との既存契約に続く形だ。競争と協調が同時並行で進む「コオペティション」の構図が、AI業界では常態化しつつある。
このTPU調達をめぐっては、2025年半ばに「OpenAIがGoogleからチップを借用している」との報道が出た経緯がある。当時OpenAIはシステムへの統合計画を否定していたが、今回の報道でその実態がより明確になった形だ。タイトル通り「Nvidia依存の低減」が公式の目的として語られており、調達先の分散がOpenAIにとって既定路線となっていることが改めて浮き彫りになった。
Nvidia依存脱却への複数の手
OpenAIのハードウェア戦略は、Google TPU調達だけではない。同社はBroadcomと共同で自社設計のAIチップを開発しており、今年末には実用化される見通しだ。
調達先の多様化と自社チップ開発を並行して進める背景には、AI推論需要の爆発的な拡大に対してNvidiaの供給が追いつかないという現実がある。また、H100/H200系チップの価格高騰もコスト面でのリスクとなっている。自社チップが実用化されれば、Google TPUと組み合わせることでNvidiaへの依存度をさらに引き下げる選択肢が生まれる。
なお、こうした動きはOpenAIに限ったことではない。Alphabet、Microsoft、Amazonの3社だけで、今年のAIインフラ投資額は合計最大6,000億ドル(約90兆円)に達すると見られており、業界全体でインフラ整備が急ピッチで進んでいる。巨大なキャッシュを持つプレイヤーが一斉にNvidia以外の調達先を模索し始めている点で、今回のOpenAIの動きは業界のトレンドを象徴するものでもある。
構図のまとめ
| プレイヤー | 役割 |
|---|---|
| OpenAI | TPU購入側。Nvidia依存を分散しつつ自社チップも開発中 |
| TPU供給側。Anthropicに続く有力顧客を獲得 | |
| Nvidia | 既存の主要GPU供給者。依存低減の標的に |
| Broadcom | OpenAIの自社チップ開発パートナー |
この表が示す構図の本質は、Nvidiaを「外す」方向に複数のプレイヤーが同時に動き始めたという点にある。GoogleのTPUが外部向けに本格展開され、かつてのライバル企業がその顧客になるという逆説的な構造は、一時的な調達上の都合ではなく、AI半導体市場における長期的な再編の予兆と見るべきだろう。Nvidiaが圧倒的なシェアと技術優位性を持つ現状は変わらないが、業界の主要プレイヤーが揃って「依存低減」を明言し始めたという事実は、その一強体制に確かな亀裂が入り始めたことを示している。
詳細はOpenAI wants to buy AI chips from Google to reduce its reliance on Nvidiaを参照していただきたい。