10月29日、StartupHub.aiが「Anthropic now merges 30,000 changes a day」と題した記事を公開した。AnthropicがClaude Codeを活用して1日あたり3万件のコード変更をマージするまでに至ったAIエージェント開発の実態を詳しく紹介したものだ。記事を通底するテーマは「コードを書くことはすでに解決済み、次の競争軸は検証にある」という認識であり、現場データと複数の識者の発言がそれを裏付ける構成になっている。
1日3万件。5月の2,500件から何が変わったか
Googleで14年のキャリアを持ち、現在はAnthropicでClaude Codeの開発者体験を統括するAddy Osmaniが、カンファレンス「AI Engineer」でAnthropicの内部数字を公開した。
Anthropicのコードマージ数は5月の約2,500件/日から、現在は約3万件/日に急増している。12倍の伸びだ。この変化を支えているのが、人間がレビューする前にエージェントがビルドを実際のユーザーのように試す仕組みである。
具体的には、Claudeが最初のレビューを担当し、ブラウザで画面を開き、ツールとリンティングを実行し、動画やスクリーンショットなどのエビデンスを記録する。さらに編集のたびに差分を解析するフックが動いて、プルリクエストを素早く修正するループが回る。チームの「良い品質の定義」は Claude.md や agents.md といった共有ファイルにコード化されており、レビュアーは何が正解かを迷わず判断できる。
「コーディングは解決済み」という前提で話が進んでいる
Osmaniがカンファレンスで述べた発言の中で目を引くのが「コーディングは解決済み」という表現だ。これはAnthropicの公式見解というよりOsmani個人の認識として示されたものだが、76%の開発者が「AIは自分が検証できるより速くコードを生成する」と報告しているという数字がその根拠として挙げられており、問題の重心はすでに「書くこと」から「検証すること」に移っているという認識だ。
コードレビューインフラを手がけるSonarのManish Kapurは、同じ課題を「ゼロトラスト、多層検証」と表現し、以下の3層に整理した:
- 決定論的レイヤー: バグやSQLインジェクションなどのセキュリティ問題
- エージェントレイヤー: ロジックと意図の検証
- サプライチェーンレイヤー: CVEや悪意あるパッケージの検出
Sonar自身もこの方向性でプロダクトを構築しており、静的解析(SAST)が見逃しがちなロジックバグを狙うHunterエージェントもその一環だ。
現場データが示す「3割は落ちる」という現実
CircleCIが今年集計した2,800万ワークフローのデータによると、スループットは59%向上した一方、本番環境へのマージ試行の3件に1件は依然として失敗している。生成速度の向上が検証の成功率を自動的には改善しないことを示すCircleCIの数字だ。
Sonarが1,000人超の開発者を対象に実施した調査でも、84%が「AIによってフィーチャーや修正が本番に届くのが速くなった」と回答しているが、同時にプルリクエストのサイズが拡大していることも確認されている。速くなっているが、確認の負荷も増えているという構図だ。また、冒頭で触れた「76%の開発者が検証が追いついていないと感じている」という数字もSonar調査に由来するものとして元記事では紹介されている。
コーディング面接を廃止したAnthropicの社内変化
Osmani自身は現在、1日に数回プロダクトをシップして、その摩擦をClaude Codeに直接フィードバックするサイクルで働いている。これはGoogleの査読文化とは大きく異なる開発スタイルだ。
Anthropic内部での変化はさらに踏み込んでいる。AnthropicのエンジニアリングチームメンバーであるFelix Bergerが明かしたところでは、実行コストが十分に下がった結果、Anthropicはコーディング面接を廃止した。エージェントを使いこなす若手エンジニアが、経験年数の長いエンジニアを上回るアウトプットを出すようになったためだという。
Osmaniは、モデルの品質はすでに十分な水準に達しており、次の改善余地は検証にある、と整理している。エンドツーエンドテスト、プロパティテスト、ビジュアルチェックを組み合わせてチームが自信を持って自動マージできる状態を作ることが、今の競争軸だという見立てだ。
詳細はAnthropic now merges 30,000 changes a dayを参照していただきたい。