10月28日、PYMNTS.comが「Visa Credentials Reach 5.2 Billion as Network Expands Into Agentic Commerce」と題した記事を公開した。「エージェンティックにおいて、信頼がスケールへの最大の障壁だ」——CEO Ryan McInerneyのこの発言が示すように、Visaは52億件のクレデンシャル基盤とトークン化インフラを武器に、AIエージェントが自律的に購買を実行する新時代の「信頼インフラ」としての地位確立を目指している。
「信頼」がエージェンティックコマース最大の壁
Visaは現在、約50のAIパートナーを本番環境で稼働させており、今後数か月でその数を倍増させる見込みだ。2026年10月に行われた第4四半期決算説明会で、CEO Ryan McInerneyはAIエージェントが消費者や企業に代わって購買を実行する「エージェンティックコマース」への対応を本格的に語った。
エージェンティックコマースとは、ユーザーが明示的に操作せず、AIエージェントが自律的に商品の購入や請求書の支払いを行う仕組みを指す。この領域では、「そのエージェントが誰の指示を受け、どの範囲で支出してよいか」を担保する仕組みが不可欠になる。
「エージェンティックにおいて、信頼がスケールへの最大の障壁であることは明らかだ」— CEO Ryan McInerney
McInerneyはB2B決済(自動請求支払い・インボイス決済)をエージェンティックコマースの初期ユースケースとして挙げた。また、Visa社内でも製品開発・エンジニアリングチームの60%以上がエージェンティックなツールチェーンを採用済みで、12人のチームがステーブルコインプラットフォームの機能を7週間で開発したと報告した。
なお、Visaは2025年にAIエージェントによる商取引を支援する「Visa Intelligent Commerce」プログラムを発表しており、今回の決算説明会における言及はその取り組みの延長線上にある。同プログラムでは、AIエージェントがVisaの決済インフラを安全に利用できるよう、認証・支出制限・トークン管理の仕組みをAPIとして提供することを想定している。
52億件のクレデンシャルとトークン化の進展
クレデンシャル総数は52億件(前年比6%増)に達した。コブランドカード、富裕層向け製品、デビットポートフォリオの拡大が主な要因だ。
トークン化(カード番号を一意のトークンに置き換えてセキュリティを高める技術)の普及も進んでいる:
- 全クレデンシャルの50%超がトークン化済み
- eコマーストランザクションの60%超がトークン化
- 200の国・地域でトークン化トランザクションを処理
タップ決済(非接触決済)は世界の対面取引の約85%、米国では75%に達した。Tap to Phoneは2500万台以上のモバイルデバイスで年間10億件を超えるトランザクションを処理し、中小企業への普及が進んでいる。
このトークン化インフラがエージェンティックコマースの技術的な土台になると、Visaは位置づけている。エージェントによる購買も、同一のトークン管理・認証の枠組みで扱える設計だ。
ステーブルコイン決済が商用フェーズへ
Visa Directは2026会計年度に150億件以上のトランザクション、約1.5兆ドルの決済量を処理した。ステーブルコインを使ったプリファンディングおよびクロスボーダー送金サービスは、パイロットから商用稼働に移行した。
ステーブルコイン決済の規模は年換算250億ドル超で、前年比10倍の成長率だ。現時点で5種類のステーブルコイン・10のブロックチェーンをサポートしており、最初の提供はUSDCだが、他のステーブルコインへの対応も予定されている。
「我々はステーブルコインに中立であり、ブロックチェーンにも中立だ」— McInerney
ステーブルコインにリンクしたカード決済量は150%超の成長を記録した。
業績と2027年の見通し
財務面では、第4四半期の純収益が前年比13%増の121億ドル、年間では15%増の460億ドルとなった。
2027会計年度の見通しとして、Visaは調整後収益の低二桁成長(low double-digit growth)を予測しており、トークン化・エージェンティックコマース・ステーブルコイン・ビジネス決済への投資を継続する方針だ。決算発表後の時間外取引で株価は1%下落した。
数字の上では堅調な成長が続くVisaだが、本決算の核心はむしろ戦略的な方向性にある。トークン化インフラ・ステーブルコイン対応・AIエージェント向け認証の三つを組み合わせることで、Visaは「人間が操作する決済ネットワーク」から「エージェントが信頼して使える決済インフラ」への転換を図っている。エージェンティックコマースの普及速度がそのまま同社の次の成長エンジンになるという読みだ。
詳細はVisa Credentials Reach 5.2 Billion as Network Expands Into Agentic Commerceを参照していただきたい。