10月28日、CNBCが「Google alters its cloud playbook, enlisting partners to sell more AI chips」と題した記事を公開した。Googleが長年自社クラウド専用として温存してきたTPUチップを外部に開放し、OracleやOpenAIを含むパートナー経由での販売に踏み切ったことを詳報している。Nvidiaが圧倒的なシェアを握るAIチップ市場に、Googleが本格参戦する転換点として注目される動きだ。
GoogleのTPUがついに「外販」へ
Googleが2013年から開発を続けてきた独自AIチップ「TPU(Tensor Processing Unit)」を、自社クラウドインフラの外部に販売する動きを本格化させている。
今週、AlphabetはOracleがGoogleのTPUを提供すると発表した。顧客がGoogle Cloud以外のインフラでTPUにアクセスできるのはこれが初めてだ。さらにCNBCは、OpenAIもGoogleからTPUを購入する計画であることを確認した(The Informationが先行報道)。
これまでGoogleは、チップ・モデル・クラウドサービスをワンストップで提供する「フルスタック戦略」を売りにしてきた。その方針を大きく転換し、外部パートナーを通じた販路拡大に舵を切った形だ。
TPUビジネスの規模感
TPU事業の市場規模についてはアナリストによって見方が分かれるが、いずれも大きな成長を示している。
- TD Cowen:2026年下半期に94億ドル、2027年に625億ドルのTPU売上を予測
- Wells Fargo:第3四半期に約90億ドル、2027年に990億ドルを予測
CFOのAnat Ashkenazi氏は7月の決算説明会で、既存契約からのTPU収益の大部分は2027年に計上される見通しだと説明している。
Google Cloudの売上高は第2四半期時点で250億ドル。AWS(420億ドル)、Microsoft Azure(290億ドル)に次ぐ3位だが、成長率は最も速い。アナリストは第3四半期の前年比成長率が**約90%**に達すると見込んでいる。
「スタック全体を最適化できる」というGoogle固有の強み
Google Cloud CEOのThomas Kurian氏は、9月のGoldman Sachsのカンファレンスで「GoogleのAIサーバーは2年以内に投資回収できる。自社シリコンで動くサーバーはその約半分の期間で回収できる」と述べた。スタック全体を自社で最適化できることが理由だ。
業界調査会社SemiAnalysisの試算では、Googleの最新TPU「Ironwood」(関連報道:Google unveils Ironwood, seventh-generation TPU competing with Nvidia)は、NvidiaのGB200サーバーと比べてTCO(総所有コスト)が約44%低いとされる。
ただし、外販にはマージン面のトレードオフが伴う。TD Cowenによれば、TPU外販時の営業利益率は**約20%**。Google Cloud全体の営業利益率(直近約35%)を下回る。Harding Loevner(Alphabet株保有)のポートフォリオマネージャー、Uday Cheruvu氏は「クラウドの営業利益率が30%台半ばを大きく超えるのは難しい」と見ている。
最大顧客はライバルAI企業
GoogleのTPUの最大顧客は競合AIモデルを持つAnthropicだ。AnthropicはGeminiと競合するClaudeを開発しており、昨年10月に最大100万TPUを数百億ドル規模で使用する契約をGoogleと締結した。Mizuhoはこの契約について「Googleが最も近いモデル競合相手に武器を提供している」と表現している。
さらにAnthropicのTPU調達を支援する資金スキームも動き始めた。GoogleのTPU開発パートナーでもあるBroadcomが、BlackstoneおよびメガバンクらによるTPU・ネットワーク機器購入を目的とした630億ドル規模のファイナンス・ビークルを組成。購入したチップをAnthropicに5年間リースする仕組みだ。William Blairのアナリストによれば、このスキームはAnthropicの2027年需要の約半分をカバーする規模だという。
AnthropicはIPO申請書(S-1)の中で「Google、Amazon、Nvidia、AMDのシリコンを使用し、各ワークロードに最適なチップを選択できる」と記載している。
Nvidiaへの挑戦
Check Capital ManagementのマネージングダイレクターChris Ballard氏は「非常に強力な競合相手であり、最終的にはNvidiaからシェアを奪う可能性がある」とGoogleの位置づけを評している。
AIチップ市場でNvidiaが圧倒的なシェアを持つ中、GoogleがTPUの外販・パートナー経由販売を本格化させたことは、チップ市場の構造変化を示す動きだ。OracleのクラウドにTPUが乗り、OpenAIがNvidiaではなくGoogleのチップを購入するという構図は、数年前には考えにくかった。
詳細はGoogle alters its cloud playbook, enlisting partners to sell more AI chipsを参照していただきたい。