10月27日、Digital Trendsが「Ollama brings free, local text-to-speech to your Mac with natural-sounding AI voices」と題した記事を公開した。音声認識(STT)ではWhisperがオープンソース化で市場を塗り替えたが、テキスト読み上げ(TTS)はいまだ有料サービスが主流だ。Ollamaはその構図を変えようとしている。
クラウド不要・無料のTTSがMacで動く
Ollamaは、AIモデルをローカルで実行するオープンソースのランタイムだ。macOS・Windows・Linuxに対応しており、プロンプトはサーバーに送信されず、学習にも使用されないため、プライバシーを重視するユーザーから支持されている。
そのOllamaが今回、Mac向けにTTSモデルのサポートを開始した。採用したのは**Gradium(旧称:Phono、AIオーディオ技術を専門とするスタートアップ)が開発したPhonon**というモデルファミリーだ(GitHubリポジトリ)。テキストを音声に変換する処理をすべてMac上で完結させる。
音声の質も実用的な水準にある。Ollamaのブログに掲載されたサンプルは自然な発音で、Zoey・Easton・Freya・Hughといった複数のボイスから選択でき、アメリカ英語とイギリス英語のアクセントに対応する。英語以外では、フランス語・ドイツ語・スペイン語・ポルトガル語のモデルも用意されている。
なお、日本語対応については現時点で言及がなく、対象言語はいずれも欧州系言語にとどまっている点は注意が必要だ。
AppleのMLXで高速化、M5 Max比で35%速い
パフォーマンス面での目玉は、**AppleのMLXフレームワーク**との統合だ。
MLXはApple Siliconに最適化された機械学習フレームワークで、Appleが開発しオープンソースで公開している。OllamaはこのMLXを活用することで、MacBook Pro(M5 Max)上でGradium自身のランタイムより35%高速に動作すると主張している。精度の低下もないという。

さらに実用的な工夫として、チャットモデルと組み合わせてAIの回答を音声で読み上げる使い方ができる。最初の1文が生成された時点で再生が始まるため、回答全体の生成を待つ必要がない。
導入手順とライセンスの注意点
動作要件はApple Silicon Mac+Ollama 0.40.11以降。導入はPhononモデルをpullするだけだ。
ollama pull phonon
ライセンスについては注意が必要だ。英語モデルはApache 2.0で商用利用も可能だが、フランス語・ドイツ語・スペイン語・ポルトガル語・多言語モデルは非商用限定となっている。個人利用や社内ツールでの検証には問題ないが、製品への組み込みを検討する場合は対象モデルのライセンスを事前に確認すべきだ。Windows・Linuxへの対応は近日中に予定されている。

背景:TTSはまだ「有料の壁」が高い領域
STT分野ではOpenAIのWhisperが2022年にオープンソースで公開され、ローカル実行が一気に普及した。これによりクラウドSTTへの依存度は大きく下がった。一方でTTSは事情が異なる。高品質なモデルの開発コストが高く、ElevenLabsやOpenAI TTSといった商用サービスが市場をリードしてきた。ElevenLabsは月額5〜330ドル程度のサブスクリプション、OpenAI TTSはAPI利用で100万文字あたり15ドルという価格帯であり、個人開発者や小規模チームにとってはコストが障壁になりやすい。オープンソース陣営ではCoqui TTSなどの取り組みもあったが、音声品質や多言語対応の面で商用サービスとの差は大きかった。
Ollamaが無料・ローカルで自然な音声合成を提供するのは、WhisperがSTTで果たした役割をTTSで担おうとする動きとして位置づけられる。ただし現時点では対応言語が英語・欧州系言語に限られており、日本語話者にとってはすぐに実用できる段階ではない点は留意が必要だ。今後のモデル拡充が注目される。
詳細はOllama brings free, local text-to-speech to your Mac with natural-sounding AI voicesを参照していただきたい。