10月24日、Southeastern University学長のKent Ingle氏が、Fox NewsのOpinionセクションに「AI hasn't replaced humans. Employers are still betting on college degrees」と題したオピニオン記事を寄稿した。AIの台頭にもかかわらず、雇用主の大多数が依然として大学卒業資格を重視しているというGallup調査の結果を軸に、学位の現代的な意義を論じている。
雇用主の80%が大卒を優遇
「AIが人間の仕事を奪う」という言説が広まる中、実際の採用現場は異なる動きを見せている。
Ingle氏が引用するのは、Gallupが実施した雇用主を対象とした調査(調査の正式名称・実施時期・サンプル数は元記事に明記されていないため、詳細は元記事リンク先を参照されたい)だ。この調査によれば、学位を必須要件としていないポジションにおいても、大学卒業者を採用する傾向があると回答した雇用主が80%に上る。また、雇用主の6割が高等教育機関への高い信頼感を示している。
さらに注目すべきデータがある。回答した雇用主の約半数が「AIの普及により、今後5年間で大学の学位はむしろ重要性が増す」と見ているのに対し、「学位の価値が下がる」と答えたのは全体の約4分の1にとどまった。自動化が進むほど学歴の価値が高まるという、一見逆説的な見方だ。
なぜAI時代に「学位」なのか
この背景には、自動化の限界に対する雇用主側の現実的な認識があるとIngle氏は主張する。
反復的・定型的な業務がAIに代替されていく一方で、「人間にしかできないスキル」の価値が上昇しているというのが同氏の見立てだ。記事の中でIngle氏が挙げる具体的な能力は以下のとおりだ(これらは著者の主張として提示されており、上記Gallup調査から直接導出されたデータではない)。
- 対人知性(relational intelligence):人との関係を構築・調整する力
- 摩擦を乗り越える能力:困難な状況や対立を処理する力
- 複雑な問題を解決するレジリエンス
雇用主の目線では、大学の学位は単なる知識の証明ではないとIngle氏は言う。「数年にわたるプロジェクトをやり遂げ、批判的なフィードバックを受け入れ、多様なチームと協働できる人材であることの証明」として機能しているという。
信頼が最も低いのは「小規模事業者」
一方で、Ingle氏はGallup調査の気になるデータも示している。従業員10名未満の小規模事業者が、高等教育への信頼度が最も低いというものだ。
小規模事業者は採用ミスのコストを負担する余裕が少なく、即戦力を求める傾向が強い。Ingle氏は、大学がこのギャップを埋めるために地域企業と連携し、カリキュラムを実際の労働市場のニーズに合わせていく必要があると主張している。
「信頼は永遠ではない」という警告
記事はさらに、大学側への楽観論を戒める視点も提示している。現時点での雇用主からの信頼を、学費値上げやキャンパス施設の豪華化の根拠に使うべきではないとIngle氏は明言する。
また、「知的な脆弱性(intellectual fragility)」への警戒も促す。厳密な議論よりも感情的な快適さを優先する大学は、グローバル競争に通用しない人材を輩出することになる。雇用主が求めているのは批判的思考ができる人材であり、同意を強要するだけの環境が育てる人材ではないというのが、Ingle氏の主張の核心だ。
AIが人間の仕事を代替するという物語は今も根強いが、実際に採用を担う側のデータはそれとは異なる方向を示している。本記事はあくまでIngle氏個人のオピニオンであるが、キャリア設計や高等教育政策を考える上で、引用されているGallupの調査結果は押さえておく価値がある。
詳細はAI hasn't replaced humans. Employers are still betting on college degreesを参照していただきたい。