10月24日、Futurismが「Behind the Scenes, Meta's Board Is Battling With Mark Zuckerberg Over His Out-of-Control AI Spending」と題した記事を公開した。MetaのCEOマーク・ザッカーバーグによる野放図なAI投資をめぐり、取締役会との間で深刻な権力闘争が起きているという内部対立の実態を詳細に伝えている。
取締役「辞任も辞さない」という異常事態
報道の核心は、ザッカーバーグの報酬引き上げ要求をめぐる取締役会との対立だ。Wall Street Journalの報道によれば、この争いは「権力とカネをめぐる戦争」と表現されるほどのもので、取締役3名で構成された交渉チームは、ザッカーバーグが要求を引き下げない場合の「最後の手段」として集団辞任まで検討していたという。
ただし、この報酬交渉はあくまで表面上の問題だ。対立の根本にあるのは、ザッカーバーグが主導するAI投資の膨張である。
AIへの過剰投資がフリーキャッシュフローをマイナスに押し下げる
WSJの報道によれば、MetaのAI支出の拡大が直接の引き金となり、同社は2026年第3四半期にフリーキャッシュフローが21億2000万ドルのマイナスに転落した。純利益ベースの損益とは異なるが、同社のフリーキャッシュフローがマイナスに転じるのは2012年以来初めてのことだ。
Dakota WealthのシニアポートフォリオマネージャーであるRobert PavlikはReutersに対し、次のように述べている。
「支出が増え、フリーキャッシュフローがマイナスで、支出に見合う収益が生まれていない。投資家にとっては、まるでカネを捨てているような状態に見える」
Metaの株価はここ1ヶ月で13%以上下落しており、市場も懸念を隠していない。
「楽観的なケースに備えた先行投資」という理論
ザッカーバーグ自身は2025年10月の投資家向け説明会(本稿公開時点からおよそ1年前)で、この積極的なAI投資戦略を「必要なリスクテイク」と位置づけていた。
「最も楽観的なシナリオに備えるため、積極的に先行投資してキャパシティを積み上げることが正しい戦略だと考えている」
同時に、ハイパースケールなAIアプローチ(巨大なデータセンターやインフラへの大規模投資によるAI開発手法)が危険な金融バブルを生み出しているとも認識していたという。強気の発言と自己矛盾する認識を同時に抱えていたことになる。
現実との衝突:製品面でも相次ぐ失敗
投資が膨らむ一方、Metaのプロダクトは成果を出せていない。MetaのAI製品は外部機関によるセキュリティテストで問題が発覚し、AI活用による業務自動化の計画も頓挫。さらにAIエージェント「Muse」がプライベートなデータを外部に共有するという安全性の問題も浮上している。
巨額を投じたAI戦略が、財務・製品の両面から同時に壁にぶつかっている構図だ。
ガバナンスの問題として見たとき
この件が示すのは、テクノロジー企業のガバナンスの難しさでもある。Metaは二重株式構造(デュアルクラス株)を採用しており、ザッカーバーグが議決権の大部分を握る構造だ。創業者がCEOとして絶大な権限を持つこの仕組みのもとでは、取締役会が「辞任をちらつかせる」以外に有効な制御手段を持てないケースが生じる。取締役会が集団辞任を検討するほど追い詰められた背景には、こうした構造的な非対称性がある。
※編集部の考察:AI投資の意思決定がどのようなガバナンスのもとで行われるべきか、Metaの事例は一つの極端なケーススタディとなっている。元記事はガバナンス構造の詳細には立ち入っておらず、上記のデュアルクラス株に関する補足は公開情報をもとに編集部が加筆したものである。
詳細はBehind the Scenes, Meta's Board Is Battling With Mark Zuckerberg Over His Out-of-Control AI Spendingを参照していただきたい。