10月21日、latent.spaceが「Claude Mods: Flipping the Harness Inside Out」と題した記事を公開した。あなたがClaude Codeにタスクを依頼し、エージェントが45ファイルの未コミット変更を抱えたまま作業を完了させようとしている——そのことに誰も気づかないまま。この記事が紹介するClaude Modsは、そうした「人間が見落とす情報」をAIが制御する層、すなわち「Attention Interface(注意のインターフェース)」という新概念を提唱し、エージェントハーネス(後述)の向きを機械側から人間側へと反転させる試みだ。
「ハーネスの反転」とは何か
AIエージェントの世界では長らく、ハーネス(エージェントと実行環境をつなぐ制御層)は「エージェント→マシン」という方向を向いていた。エージェントがコマンドを発行し、ファイルを編集し、ツールを呼び出す——その制御フローを管理するのがハーネスの役割だった。
Claude Modsはこの方向を逆転させる。「エージェント→人間」という向きにハーネスを向け直すことで、人間の注意をどこに向けるかを制御する層を作り出す。記事ではこれを「Attention Interface」と呼んでいる。
モデルが多くのハーネス機能をウェイトに吸収するにつれ、外側に残る層は必然的に人間に向き合う部分になる——というのがこの記事の中心的な主張だ。Claude Modsはその「人間向きの層」をユーザー自身がプログラムできるようにした仕組みである。
Claude Modsの仕組み
Claude ModsはTypeScriptまたはJavaScript関数で記述されたClaude Codeプラグインだ。CLIおよびDesktopのインターフェース内で動作し、以下のようなイベントに反応する。
- プロンプトの送信
- ツールコールの発生
- ターン終了時のレンダリング
Modはイベントを観察し、表示方法を変更し、デフォルトの挙動を上書きできる。エージェントハーネスのミドルウェアとして機能する。
重要な点として、ClaudeがMod自体を書いてくれる。Claude CodeにはMod作成スキルが組み込まれており、自然言語で「こういうModが欲しい」と伝えるだけでClaude自身が実装する。
実際に使って刺さった2つのMod
1. You Should Know(組み込み済み・デフォルトOFF)
Anthropicが公式に実装したMod。メインエージェントの動作を監視するサイドエージェントを走らせ、見落としやすい重要情報を通知する。
記事中の実例が具体的だ。あるUIテキストの整理タスクをClaude Codeに依頼したところ、エージェントはCompareView.swiftを編集して変更を適用し、スクリーンショットまで撮って完了した。ところがYou Should Knowが、そのファイルにはすでに未コミットの変更が存在し、さらに他45ファイルも同様の状態だったことを指摘した。デモ編集を破棄すれば、以前の未完成の作業も消えてしまうところだった。
エージェントトレースに埋もれて人間が見落とすような情報を、別のエージェントが拾い上げて通知する——この「二重監視」の構造が面白い。有効化はこちらのドキュメントから行える。
2. Next Steps Supervisor(自作Mod)
ファイル編集・コマンド実行・8回以上のツールコールを含むターンの後にのみ起動する監視Modだ。記事筆者がオープンソースで公開しているModSmithに含まれている。
ターン終了後に重要情報を最大6項目フラグし、次に取るべきアクションをボタン形式で提示する。ボタンをクリックするとそのままClaude Codeへの指示として送信される設計だ。
3社のAttention Interface比較
記事では、同様の「注意の制御」問題にアプローチする他社製品との比較も行っている。
| 設計者 | 自由度 | |
|---|---|---|
| ChatGPT Intelligent UI(OpenAI) | モデル自身が回答ごとにUI生成 | ほぼゼロ |
| Cursor PR Routing & Approval | チームがポリシーを記述 | ルールは設定可、インターフェースはCursor固定 |
| Claude Mods | ユーザーとエージェントが共同で構築 | フック箇所・表示内容・アクション全て自由 |
ChatGPT Intelligent UIはモデルがコンポーネントライブラリから動的UIを生成する。Cursor PR Routing & Approvalはコード所有権とコミット履歴に基づいてレビュアーを割り当て、リスクスコアが閾値以下のPRは自動承認する仕組みだ。なお、Cursorには「PRがポリシーファイルを変更していた場合、そのPR自身のレビューには編集後のポリシーを使わない」というルールがある。エージェントが自分のPRを通すためにルールを緩めることを防ぐ設計だ。
Claude Modsの差別化は「インターフェースそのものを自分で設計できる」点にある。ただし、その分だけ設計コストはユーザーが負う。
現状の課題
記事はMod活用の問題点も率直に書いている。
ノイズ問題: Next Steps Supervisorは「ファイル編集・コマンド実行・8回以上のツールコール」のいずれかを含むターンで起動するが、実際には111ターン中99ターンがその条件を満たした。ほぼ毎回通知されると、人間は流し読みを始める——Attention Interfaceの目的を自分で壊す結果になる。
コスト問題: 監視チェックのたびに会話がフォークされ再読み込みが走る。プロンプトキャッシュでカバーされる部分もあるが、ModのREADMEによれば50kトークンのセッションで1チェックあたり約5〜6k input-equivalent tokensのコストがかかると試算されている。
信頼問題: ModはユーザーのAPI権限で動く。Anthropicのドキュメントには「Modはサンドボックス化されていない」と明記されている。ファイルの読み書き、全プロンプトの閲覧、使用量の消費が可能だ。--safe-modeで起動しても組み込みModは動作し続ける。
一方で、自分が書いたModは自分で直せる。ノイズが多いセッションでは/supervisor offで即座に無効化できる点は、固定のサードパーティツールにはない強みだ。
Modの実用性を測るテスト
記事筆者はModの有用性を判断するシンプルな基準を提示している。
「見落としていた何かを浮上させたか、判断を楽にしたか、余計な出力に気を取られずにアクションを取れたか。どれも満たさなければ、それは飾りに過ぎない」
現時点では「自分がワークフローの摩擦に気づき、Modを設計する」という流れが必要だ。記事の末尾では、次のステップはハーネス自身が摩擦に気づくこと——すなわち、Attention Interfaceを改善するループ自体をエージェントが担う段階——について言及されている。Attention Interfaceという概念がまだ黎明期にある以上、その設計をどこまでエージェントに委ねられるかが、今後の実用性を左右する問いになりそうだ。
詳細はClaude Mods: Flipping the Harness Inside Outを参照していただきたい。