10月23日、madrobot.blogが「American Express is cutting 5% of its staff to get ready for AI」と題した記事を公開した。American Expressが過去最高の四半期売上を記録した直後に全従業員の約5%・3,800人規模の削減を断行し、その理由をCFOが「AI自動化の前段階として組織を最適化するため」と公言した——好業績と大規模リストラが同時に起きるという異例の構図が、業界内外で注目を集めている。
「AI自動化の前に、まず組織を最適化する」
注目すべきは、発表の中身よりもAmexがその理由を公言した点だ。多くの企業が人員削減を「効率化」という曖昧な言葉で包む中、同社CFOのChristophe Le CaillecはCNBCの取材に対し、その意図を率直に語った。
You don't want to automate processes that are not optimally structured. So what we're doing here is to reduce layers and increase spans of controls, so that we can automate and take advantage of AI in the coming quarters and the coming years.
— Christophe Le Caillec, CFO, American Express
要するに、「構造が最適化されていないプロセスを自動化しても意味がない。だから今、管理層を削ぎ落とし、組織をフラットにする。その後でAIを走らせる」という2段階戦略だ。引用中の「spans of controls(スパン・オブ・コントロール)」とは、1人の管理職が直接管掌する部下の人数を指す組織論上の概念で、これを拡大するということは中間管理層を減らして各マネージャーの管理範囲を広げる、すなわち階層をフラット化することを意味する。
まず人間の管理層を減らし、次に自動化でさらに削る——後続の削減が何人規模になるかは、Le Caillecは明言していない。
好業績の最中での断行
今回の削減は、業績悪化を受けた緊急措置ではない。Amexは2026年第3四半期に売上高201億ドル(前年比9%増)、純利益37億ドルという過去最高の四半期売上を記録した上で、通期EPS(1株あたり利益)の見通しも18.30〜18.60ドルに引き上げた。
リストラ費用は税引前で3億3,600万ドル。これは同社が企業向け出張管理会社Global Business Travel Group(GBT)の持ち分売却で得た9億8,200万ドルの売却益の一部で賄われる。GBTはAmexが長年出資してきた持分法適用会社であり、今回の持ち分売却はリストラ原資の確保と事業ポートフォリオ整理を兼ねた判断とみられる。
CEO Stephen Squeriは「良い勢いがあるが、次の数年でイノベーションを加速し勝ち続けるには、よりアジャイルで効率的な組織になる必要があった」と述べた。
わずか3ヶ月で方針が転換
今年7月の第2四半期決算説明会で、Squeriは異なるトーンで話していた。AIがカスタマーサービス業務に与える影響について、「担当者数は増えていない。時間をかけて自然減で減っていくだろう」と述べ、技術の成熟度については「アーリーステージどころか、まだプレシーズンだ」と表現していた(American Banker報道)。
それが3ヶ月後、能動的な人員削減と「AI準備」という明確な言葉に変わった。
同時期に発表されたプロダクト面では、レストラン予約サービス「Resy」とOpenAIの連携や、AIエージェントが顧客に代わって購入・決済を行う「Intent Intelligence」フレームワークの導入も明らかにされている。
金融業界で相次ぐ同様の動き
Amexの発表前日、Barclaysも約5,000人(全体の約5%)の削減を発表しており、「AIによる技術変革効率化」を明示的な理由として挙げた。開発者職も対象に含まれている。
他の事例も増えている。AppleはAppleCareサポートの5,000人をAIエージェントに置き換える計画を策定(現在は保留中)。Anthropicの調査データでは、ジュニアエンジニアの採用が27%から9%に急減していることが示されている。
大手金融機関が2日連続でAIを理由に大規模削減を発表したことは、業界全体の方向性を示す指標として見逃せない。
何が起きているのか
Amexのケースは「AI導入に伴う雇用への影響」が抽象論ではなくなった具体例として機能する。フラット化した組織構造に後からAIを流し込むというアーキテクチャ的な発想は、エンジニア視点でも理解しやすいロジックだ。今回の3,800人が最後ではない可能性を、CFO自身が示唆している点は重要だ。
詳細はAmerican Express is cutting 5% of its staff to get ready for AIを参照していただきたい。