10月21日、Sarah Amslerが「Fearing AI replacement? Here's what IT leaders think」と題した記事を公開した。この記事では、AIによる雇用代替への不安に対してITリーダーたちが実態をどう見ているかについて詳しく紹介されている。
「AIに仕事を奪われる」は本当か
AIがソフトウェア開発の工数を削減しているのは事実だが、それがそのままIT職の消滅を意味するわけではない。Gartnerの「2027 CIO and Technology Executive Agenda」調査によると、ITリーダーの40%が2027年にIT人員を増やす計画を持っており、特にサイバーセキュリティ、データ・アナリティクス領域での採用拡大が見込まれている。なお、この調査はGartnerが毎年実施するCIO・テクノロジーエグゼクティブ向けの大規模サーベイであり、世界各国の企業・公共機関のITリーダーを対象としている。
Gartnerのバイスプレジデント兼アナリストであるAlicia Mullery氏は、フロリダ州オーランドで開催されたGartner IT Symposiumでこう述べた。
「ITジョブの大多数は、相当程度のロールのリスキリングが必要になる。その筆頭がソフトウェアエンジニアリング、そしてデータ・アナリティクスだ。」
「リスキリング(reskilling)」とは、現在の職種とは異なるスキルを新たに習得することを指す。単なるスキルアップ(upskilling)とは区別される概念で、役割そのものが変わることを前提とした再教育を意味する。
ITリーダーたちの率直な声
本記事の核心は、複数のITリーダーへのインタビューだ。「今導入している自動化技術が、いずれ自分のチームの仕事を奪うと心配しているか?」という問いに対する回答は、一様に「No」ではなかった。微妙なニュアンスの差がある。
「心配すべきはAIではなく、チームのスキル進化」
Principal Financial GroupのCIO(エンタープライズビジネスソリューション担当)、Ryan Downing氏は明確に否定した。
「心配していない。むしろビジネスが必要とする成果を出せているかどうか、そしてチームが将来も価値を生み出し続けられるよう正しいスキルを積めているかを心配している。個別のソリューションや技術が人を置き換えることよりも、そちらをはるかに気にしている。」
「"リソースがない"という言い訳は通じなくなる」
Progress SoftwareのAI・ビジネストランスフォーメーション担当バイスプレジデント、Ben Schein氏は、もう少し踏み込んだ見方をしている。
「人間がリードするという考え方はまだ成立すると自分に言い聞かせている。方向性を与え、焦点を定める人間が必要だ。ただ、『リソースが足りない』『あの案件は後回しだ』という言葉が通じる時代は終わりに近づいている。それは人員が不要になることを意味するかもしれないし、使い方が変わることを意味するかもしれない。」
「水を入れた容器に手を入れると水が溢れる」
Guardrail TechnologiesのCEO、T.J. Marlin氏(AIガバナンスおよびリスク管理ソリューションを手がけるスタートアップ)は、代替と創出が同時に起きるという見方だ。
「水が入った容器に手を入れれば水は溢れる。AIも同じだ。ディスプレースメント(役割の押し出し)は起きる。ただ同時に、AIと協働して新たな役割を作り出す機会も生まれる。あるロールのコストを下げながら、別のロールを生み出している。」
「データ層はなくならない。製品層はすでに変わっている」
CoralogixのCTO、Yoni Farin氏は、自社サービスの実データを根拠に語る点が具体的だ。
「データ層は消えない。製品層はすでに変わっている。Coralogixでは今、セッションの40%以上がヘッドレスMCPとCLIから来ている。つまりユーザーはプラットフォームのUIを開かず、エージェントが直接アクセスしている。そのエージェントが大量のデータを生成している。何をやっているか常に把握し、『それは正しかった』と振り返れる体制が必要だ。」
ここで言う「MCP(Model Context Protocol)」とは、AIエージェントがツールやAPIと連携するための通信プロトコルである。「ヘッドレス」とはGUIを持たない状態での操作を指す。Farin氏の発言は、AIエージェントが増えるほどデータ監視・可観測性(observability)の需要が高まるという逆説的な構造を示している。
ITリーダー・技術職全般への示唆
各リーダーの発言を整理すると、共通して浮かぶのは「役割がなくなるのではなく、変わる」という認識だ。ただし、Schein氏が示唆するように、「リソース不足」を理由に先送りしてきた仕事がAIで消化されれば、同じ人数が必要かという問いは避けられない。これはエンジニアに限らず、ITマネジメントや意思決定層にとっても等しく突きつけられる問いである。
Gartnerが指摘する通り、ソフトウェアエンジニアリングとデータ・アナリティクスがリスキリングの最前線となる。AIを使いこなす側に回るか、AIが生成したものを監視・評価する役割を担うか——いずれにせよ、現状維持のスキルセットで乗り切れるという楽観は難しい。
詳細はFearing AI replacement? Here's what IT leaders thinkを参照していただきたい。