10月20日、TechStartupsが「OpenAI seeks $1.4 trillion valuation in $30 billion funding push ahead of Anthropic IPO」と題した記事を公開した。OpenAIが1.4兆ドル超の評価額で約300億ドルの資金調達を急ぐ背景には、Anthropicの株式上場が迫るという明確なタイムプレッシャーがある。直近の評価額(8520億ドル)から64%超の上昇を数か月で実現しようとする動きは、AIセクターの資金調達競争が新たな局面に入ったことを示している。
Anthropic IPOの前に評価額を「先に刻む」OpenAIの戦略
今回の調達に特徴的なのは、そのタイミングだ。Anthropicは11月中旬の株式上場を準備しており、OpenAIはAnthropicの財務情報が公開市場で精査される前に投資家のコミットメントを確保しようとしている。
Willkie Farr & Gallagherのキャピタルマーケット共同議長Edward Bestはロイターに対し、次のように述べた。
"OpenAI could want to set its own valuation and not have to worry about a comp (comparison). It's really a two-horse race in terms of being public."
(OpenAIは自社の評価額を先に設定し、比較対象を気にせずに済むようにしたいのだろう。上場という観点では、完全に二頭立てのレースだ)
AnthropicのClaude(クロード)は特にエンタープライズ顧客やソフトウェア開発者の間で存在感を増している。元記事によれば、7月時点の年間売上高(ARR換算、つまり直近月次売上を12倍した推計値)は約650億ドルに達したと報じられている。ARR換算はSaaS企業の成長評価で広く使われる指標だが、確定した通期売上とは異なる点に留意が必要だ。直近の四半期売上高もQ2の116億ドルからQ3には168億ドルへと拡大した。
ただし、Anthropicへの評価は必ずしも楽観一辺倒ではない。当初議論されていた2兆ドルのIPO評価額に対し、Q3の結果が期待を下回ったこと、月次売上の成長鈍化が見られたことから、一部の投資家は1.5兆ドル前後を主張しているという。この評価額の再調整が、OpenAIにとって自社の評価額を先に市場に打ち込む好機となっている。
年率5兆円超の売上高——OpenAIが投資家に示した数字
OpenAIが投資家候補に提示した数字は大きい。
GPT-6 Astraモデル(OpenAIが2026年にリリースした最新世代モデル)のリリース後、年換算売上高(ARR)は500億ドルに達し、2026年末には700億ドルに到達する見込みだとロイターは報じている。これらはAnthropicのARR同様、現在の事業活動に基づく年換算の推計値であり、通期の確定売上ではない点に注意が必要だ。
今回の調達が成立した場合、1.4兆ドルの評価額はARR500億ドルに対して約28倍のマルチプル(倍率)となる。年末に700億ドルを達成できれば、同じ評価額でのマルチプルは約20倍に下がる計算だ。
OpenAIは今年3月にも、8520億ドルの評価額で資金調達を完了したばかりだ(元記事には「1220億ドルの資金調達」と記載されているが、一般的に報じられている同ラウンドの調達額とは大きく異なるため、元記事固有の集計方法・対象期間の可能性がある。詳細は元記事を参照)。今回の1.4兆ドル超という評価額はその64%超の上昇を意味し、未上場企業としては異例の規模感となる。
今回の調達ラウンドにはSoftBank、アブダビ系投資会社のMGX、および既存投資家が参加を検討しているとされる。金額・評価額ともに最終決定はしていない。
膨らむインフラコストと市場環境の逆風
OpenAIが資金を必要とする背景には、AIモデルの開発・運用に伴う莫大なインフラコストがある。データセンターへの投資、コンピューティングリソースの確保、モデルの維持費用は増大の一途をたどっており、調達した資金はこれらの継続投資に充てられる。
市場環境も手放しで楽観できる状況にはない。AIインフラ関連株は売り圧力を受けており、借入コストの上昇やデータセンター投資のリターンへの疑問も浮上している。OpenAIのコンピューティングリソース調達先の一つでもあるクラウドインフラプロバイダーCoreWeaveは、約500億ドルの借入残高が問題視された。Philadelphia Semiconductor Index(フィラデルフィア半導体株指数)構成銘柄の時価総額は、2週間足らずで約1.6兆ドルが失われている。
こうした逆風の中での大型調達は、2027年に想定されるOpenAI自身のIPOに向けた財務基盤を固める意味合いも持つ。
詳細はOpenAI seeks $1.4 trillion valuation in $30 billion funding push ahead of Anthropic IPOを参照していただきたい。