10月20日、Shane Downingが「Google DeepMind says four AI agents beat Minecraft in 27 hours by writing 2,783 programs of their own」と題した記事を公開した。Google DeepMindのAIエージェント4体がMinecraftの最終ボス「エンダードラゴン」を倒すことに成功した——しかもゲーム専用ツールを一切使わず、エージェント自身が書いた2,783本のプログラムだけを武器に、27時間かけて。
2,783本のプログラムを自己生成してMinecraftをクリア
Google DeepMindが発表した論文によれば、Gemini 4 Argonベースの4体のAIエージェントが、Minecraftの最終ボス「エンダードラゴン」を倒すことに成功した。所要時間は27時間14分。この間、エージェントたちは短いJavaScriptプログラムを合計2,783本書き続け、42個のヘルパー関数を共有しながらゲームを進めた。
なお、「Gemini 4 Argon」という名称について補足しておく。元記事タイトルでは単に「Gemini 4 agents」と表記されているが、本文中では「Gemini 4 Argon」と記されており、これはGemini 4世代モデルのコードネームまたはバリアント名とみられる。Google DeepMindによる公式な正式名称の詳細は現時点では明確に公表されていない。
重要なのは、これが「ゲームプレイ特化のAI」ではないという点だ。Gemini 4 Argonはもともと「実世界のソフトウェアエンジニアリング、法務・財務などのエンタープライズ知識業務、サイバーセキュリティ防衛」向けに設計された汎用フロンティアモデルである。Minecraftのクリアは、長期にわたる複雑なワークフローとエージェント間の協調を示すためのベンチマークとして位置づけられている。
Mineflayerで動き、チャットで協調する
各エージェントは、Minecraft Bot向けのオープンソースJavaScriptライブラリMineflayerを通じて個別のプレイヤーとして動作した。Mineflayerはブロックや生物の位置情報をAPIとして提供し、経路探索プラグインによってルート計画も可能にするライブラリで、人間のMinecraftクライアントを模倣してサーバーと通信する仕組みをとる。エージェント同士の連携はゲーム内チャットと共有ノートで行われ、スクリーンショットは使わずテキストとステータスデータのみでやり取りした。
役割分担は人間が設定したわけではない。開始から約10分後、ボット「janesick」がチャットで分業を提案し、自然に以下の役割が固まった:
- Gyldenia:食料・ベッド・火打石の調達
- Bulicame:ダイヤモンドの採掘
- Janesick:鉄と道具の管理
- Auratian:ネザーポータルの構築
ネザーポータルへの道中、Ghastの火の玉でアイテムが焼失するトラブルが発生。エージェントたちはその原因を診断し、再発防止のルールを自ら書き加えた。
エンダードラゴン戦:605回死んで、最後は土ブロックで解決
クリアまでの約半分の時間がエンダードラゴン戦に費やされた。ドラゴンを倒すには10個のエンドクリスタルを破壊する必要があるが、クリスタルが高所にあり接触できない状態が続いた。この局面でAuratianが土ブロックを積み上げてクリスタルに到達するという方法を発見。4時間40分かけて10個すべてを破壊し、その39分後にドラゴンを撃破した。
ドラゴン戦だけで69回死亡。全体の死亡回数は605回に達した(イージー難易度にもかかわらず)。プログラムのうち22%はエラーで終了している。
コストは約520ドル、通常料金なら1,000ドル超
今回の実行では、約13.5億トークンの入力(91%はキャッシュから提供)と、約2万4,000回のモデル呼び出しで約1,600万トークンの出力(うち4分の1が思考トークン)が発生した。
Gemini 4 Argonの50%割引導入価格を適用した場合のコストは520ドル超。オブザーバーエージェントを含む通常価格換算では1,620ドルに達する。
比較対象として、AI Bengineering(Anthropicモデルを用いたAIエージェント実験を主に扱うYouTubeチャンネル・技術コミュニティ)がClaude Opus 5の単一エージェントで行ったMinecraftドラゴン撃破の事例がある。こちらは37種の既製高レベルツールを使用し、3時間56分・1回の死亡・388回のツール呼び出しでクリアしており、コストはAPIレート換算で約93ドルだった。今回のGemini実験は規模・コスト・死亡回数のいずれも桁違いだが、「人間が書いたゲーム特化ツールを一切使わない」という縛りのもとでの汎用エージェント協調を実証した点が異なる。
論文著者らはこれを「(我々の知る限り)AIエージェントによるMinecraftの初のエンドツーエンド自律クリア」と主張しており、「事前にシードを調査したり、人間が書いたゲーム固有ツールを使用したりしていない」という条件を付している。ただし、この「初のエンドツーエンド自律クリア」という主張に対する独立した第三者機関による検証や、研究コミュニティからの反論・異議については、執筆時点で元記事内では特に言及されていない。過去にもMinecraftを題材としたAIエージェント研究(VPTやVoyagerなど)が存在するが、それらとの条件の差異については論文本体での精査が必要だ。
詳細はGoogle DeepMind says four AI agents beat Minecraft in 27 hours by writing 2,783 programs of their ownを参照していただきたい。