10月20日、Dataconomyが「DeepSeek and Huawei team up on AI chip design to challenge Nvidia」と題した記事を公開した。AIモデル企業であるDeepSeekが、チップメーカーであるHuaweiのチップ設計そのものに投資家として関与するという異色の協業だ。単なるソフトウェア最適化にとどまらず、ハードウェア設計レベルから両社が手を組むことで、NvidiaのH100/H200が支配するAIチップ市場に風穴を開けようとしている。
DeepSeekがHuaweiのチップ設計に投資
The Informationの報道によると、DeepSeekはHuaweiのAIチップ設計に投資し、両社は新チップの開発とソフトウェア最適化で協業する計画だ。
具体的には、HuaweiのAI向けプロセッサであるAscendチップの設計を刷新し、性能向上を図る。DeepSeek側からは、大規模言語モデル(LLM)の運用時に発生する計算上の問題データをHuaweiに提供する。これにより、実際のワークロードに即した改善が可能になる。
Huaweiが特に注力するのは、メモリ帯域幅効率と次世代Ascendチップの相互接続フレームワークの2点だ。大規模モデルのトレーニングは数千チップを同時稼働させる長時間の計算を伴うが、この協業はその困難を軽減することを狙っている。
CUDAへの対抗軸:CANNの強化とオープンソース化
今回の協業でエンジニアが注目すべき点は、NvidiaのCUDA(AIチップ向けの業界標準的な並列計算プラットフォーム)に対抗するHuawei独自の計算プラットフォームCANN(Compute Architecture for Neural Networks)の強化だ。
CANNはHuaweiが独自に開発したAI向け異種演算プラットフォームで、Ascendチップ上での演算を最適化するためのライブラリ・カーネル・ランタイムを含む。CUDAがNvidia GPU向けにPyTorchやTensorFlowとの広範な連携を長年かけて整備してきたのに対し、CANNはPyTorchとの互換レイヤー(torch_npu)を提供するものの、エコシステムの成熟度・サードパーティライブラリの対応状況では依然として差がある。
CUDAは長年にわたりAI開発の事実上の標準として機能しており、これを崩すのは容易ではない。両社はこの課題に対し、フルのハードウェアアーキテクチャとソフトウェアスタックをサポートするローカルAIモデルを含むオープンソースエコシステムの開発という形で臨む。オープンソース化によって開発者コミュニティを取り込み、エコシステムを育てる戦略とみられる。
一方、DeepSeek側は超低コスト設計による高効率AIモデルの追求を目指すとされている。DeepSeekはこれまでも、少ないリソースで高性能なモデルを実現するアプローチで注目を集めてきた経緯がある。
Ascendのロードマップ:2027年に向けて
Huaweiは2027年に向けたAscendチップのロードマップを発表している。
- 第1四半期:Ascend 960DTの投入予定
- 第3四半期:Ascend 960PRの投入予定
現行世代として広く知られるAscend 910B・910Cは、米国の対中輸出規制が強化される中でHuaweiが国内市場向けに供給を拡大してきた製品だ。次世代の960シリーズはこれらの後継にあたる位置づけとなる見込みだが、現時点でNvidiaの最新世代との詳細な性能比較は公表されていない。
AscendチップはかつてNvidiaのH100と同クラスの競合製品を目指していたが、米国の対中制裁によって大きな制約を受けた。その後、Huaweiは改良を重ねてきたものの、依然としてNvidiaとの性能差は課題として残る。今回のDeepSeekとの協業は、そのギャップを埋める手段として位置づけられている。
米中AI半導体競争の文脈
米国の輸出規制によってNvidiaの先端チップへのアクセスを断たれた中国は、国産チップエコシステムの整備を急いでいる。DeepSeekがHuaweiとの協業に踏み込む背景には、こうした制約への現実的な対応という側面もある。
DeepSeekは低コスト・高効率なモデル設計で、HuaweiはAscendチップとCANNプラットフォームの改善で、それぞれ強みを持ち寄る形の協業だ。CUDAエコシステムの牙城を崩せるかは、オープンソースコミュニティがどこまで育つかにかかっている部分が大きい。
詳細はDeepSeek and Huawei team up on AI chip design to challenge Nvidiaを参照していただきたい。