10月19日、Sourav Rudraが「Linux Kernel 7.3 Release is Good News For Gamers Short on VRAM」と題した記事を公開した。
Linux 7.3が正式リリースされた。今回の目玉は、VRAMが不足していてもゲームが動作し続けるようになる仕組みだ。「インディ・ジョーンズ アンド ザ グレート・サークル」を8GB VRAMのカードで動かしたところ、9GB要求のタイトルであってもプレイ可能な状態を維持できたと報告されている。それだけでなく、特定の条件下でアプリが数百ms単位でフリーズするメモリ管理のバグも修正され、最悪ケースの遅延が705msから2ms未満へと大幅に改善された。ゲーマーとサーバー管理者の双方にとって恩恵の大きいリリースだ。
VRAMが足りなくても動く――Valveエンジニアが持ち込んだ仕組み
ValveエンジニアのNatalie Vockが実装したVRAMオーバーコミット対応が、今回の目玉機能だ。
VRAM(Video RAM)はCPU用のシステムRAMとは独立した、GPUが直接アクセスする高速メモリ領域だ。ゲームのテクスチャや描画データはここに置かれるが、近年のAAAタイトルはVRAM消費量が増加しており、8GB前後のミドルレンジGPUでは要求スペックに追いつかないケースが増えている。これまではVRAMが枯渇するとパフォーマンスの急落やクラッシュが頻発していた。
7.3では、VRAMが満杯になった際に重要度の低いデータをシステムRAMに退避させることで、ゲームが必要とするメモリ空間を確保する。OSレベルのスワップと概念は近いが、GPUメモリ管理層で動作する点が異なる。前述の「インディ・ジョーンズ」での動作確認はその実証例だ。なお、このパッチセットはすでにValveのSteamOSに先行して取り込まれており、7.3はそれをLinuxメインラインに統合したかたちとなる。
同じくValveのTimur KristófrによるRadeonカードのGPUハング(GPU停止状態)回復改善も加わっている。従来はリセット時にグラフィックスメモリ全体を巻き込んでいたが、描画処理を担うGFXブロックのみをリセットする方式に変更された。グラフィックスメモリはそのまま保持されるため、ハング後の回復が格段に速くなる。
メモリ管理のフリーズ、705msから2ms未満へ
ゲーミング以外でも重要な修正が入っている。ZTEのエンジニアが発見した問題で、KSM(Kernel Samepage Merging)内のロック処理が原因だ。KSMはメモリの節約を目的とした機能で、同一内容のメモリページを検出して一つにまとめる。メモリを多く使うサーバーや仮想マシン環境で広く使われているが、メモリ逼迫時にロック処理が詰まり、アプリが数百ミリ秒単位でフリーズするケースがあった。修正後のストレステストでは、最悪ケースが705msから2ms未満に改善している。
小米(Xiaomi)のWenchao HaoはzRAMやZswapが使う圧縮メモリアロケータzsmallocでも同様のロック遅延を修正した。こちらはRaspberry Pi 4Bで最大1.83倍、20コアIntelシステムで1.4倍のスループット改善が確認されている。
AMD関連のアップデート
- Zen 6(Family 1Ah Model 80H) 向けにHSMPドライバがプロトコルv7をサポート。次世代チップへの先行対応だ。
amd-pstateドライバのDynamic EPP(エネルギー性能プリファレンスの動的調整)が、システム全体の一括スイッチからCPUコア単位での有効化に対応した。powersaveガバナー下で「dynamic」を選択することで利用できる。- Ryzen AI HaloミニPCのLED制御が新ドライバ
amd_halo_ledでメインラインに統合された。これまでAMD独自のDebianベースディストリビューション「Ryzen AI Developer Platform」経由でしか操作できなかった機能が、一般的なLinux環境でも使えるようになる。
その他の変更
- Apple M3 Pro / Max / UltraチップでのLinuxブート初期サポートが追加された。現時点では基本的な起動確認レベルの対応で、すべての機能が動作するわけではないが、Asahi Linuxプロジェクトの取り組みと並行してサポートが広がっている。
- RISC-Vが11個の新しいISA拡張をサポート。
- Logitechの
logitech-hidppドライバがHID++ 2.0対応デバイスのボタンリマップに対応。 hid-steamドライバが2026年版Steam Controllerをサポート。Steam ControllerはValveが展開するSteamエコシステム向けのゲームパッドで、Linux上でのサポート強化はSteam Deck系デバイスとの連携改善にもつながる。- Lenovo ThinkPadのUSB-C制限モードセキュリティ機能がLinuxで利用可能に。
入手方法
Linux 7.3を手軽に試すには、Ubuntu 26.10が最短ルートだ。FedoraやArch Linuxも順次アップデートが届く見込みで、既存のUbuntu環境に最新メインラインカーネルを手動インストールする方法もある。ただし、手動インストールにはリスクが伴うため、事前のデータバックアップは必須だ。
詳細はLinux Kernel 7.3 Release is Good News For Gamers Short on VRAMを参照していただきたい。