10月13日、MadRobotが「Dragon Quest creator Yuji Horii says he made a detective game with Claude in 30 minutes」と題した記事を公開した。この記事では、ドラゴンクエストの生みの親・堀井雄二氏がAnthropicのAI「Claude」を使い、わずか30分で推理ゲームを制作したことについて詳しく紹介されている。
「絵も描けなくても、プログラムしなくても」
2026年10月11日、堀井雄二氏はXに無料のゲームを投稿した。タイトルは「取調室の小宮」(Interrogation Room Komiya)。制作時間は「ほんの30分ほど」で、「絵を描けなくても、プログラムしなくても、AIに指図するだけで、ひとりで、そこそこのゲームを作れてしまいます。ホントびっくりです」と述べている。
投稿は10月13日時点で約300万回表示、2万件以上のいいねを集め、日本国内外のゲームメディアに取り上げられた。
ゲームはブラウザで動作するClaudeアーティファクトとして公開されている。Claudeアーティファクトとは、Anthropicのチャットボットがリクエストをもとにビルドする共有可能なミニアプリのことだ。スマートフォンでもPCでもプレイできるが、現在は日本語のみ対応。
ゲームの中身
プレイヤーは刑事となり、質屋荒らし事件の容疑者・72歳の元錠前師「小宮」を取調室で尋問する。午後9時から11時(弁護士到着まで)の制限時間内に20手でアリバイの嘘を暴く設計だ。
容疑者は当初「10時には寝ていた」と答えるが、証拠品(防犯カメラの静止画、手製のロック・ピック、未払いの病院代など)を5種類の展示物から選んで突きつけることで矛盾を追い詰める。画面には「動揺度」と「頑固さ」の2つのゲージがあり、強く追及すると両方が上昇、お茶を出すと落ち着き、沈黙は徐々に相手を揺さぶる。頑固さが100に達すると小宮は口を閉ざす。
4つの嘘を崩すと決定的な質問が解禁され、自白を引き出せればS・A・Bのいずれかの評価と結末が提示される。ゲーム内のすべての台詞は事前に書き込まれており、内部にチャットボットは存在しない。
堀井氏の原点との対比——40年前と何が違うか
堀井氏がこのゲームを1983年の「ポートピア連続殺人事件」と比較しているのが、この投稿の核心だ。
その昔、PCで『ポートピア連続殺人事件』を作った時は、自分で物語を考え、絵も描いて、プログラムもして、ひとりでゲームを作りました。
ポートピアはEnixが1983年にリリースした犯人を追う推理アドベンチャーで、小島秀夫氏(メタルギアシリーズ)がゲーム業界に入るきっかけになった作品の一つとして、小島氏自身が名を挙げている。当時と同じ「ひとりで作る推理ゲーム」を、40年後にAIで30分で再現してみせたわけだ。
では「何が違うか」という問いへの答えは何か。記事の論旨を整理すると、変わったのは「実装コスト」であり、変わっていないのは「設計者の判断」だ。絵を描く、コードを書くという工程はAIが代替できる。しかし謎の構造、手がかりの配置、嘘の積み上げ方、そして結末の設計は、40年前と同様に堀井氏自身が行っている。AIは「ひとりで作る」ことのハードルを大幅に下げたが、「何を作るか」を決める部分は人間の側に残っている——というのが、この30分の実験が示す現時点での結論といえる。
なお、ポートピアのリメイク「Next: The Portopia Serial Murder Case」(5つの新たな事件を収録)が堀井氏の監修のもと制作中で、2027年にSwitch 2・Switch・PC向けにリリース予定であることも記事では触れられている。
「驚異的」か、「警鐘」か
ゲームへの反応は二分している。Nintendo Lifeの報道コメント欄には厳しい声も多かった。
Creative BloqのデジタルアーツエディターIan Deanは、同誌の記事(MadRobot記事が引用元として参照)において以下のように書いている。
30分で作れるのは小さなミステリーであって、商業リリースではない。そして、その職人技はデザイナー自身から生まれている。謎の見せ方のテンポ、ゲームを満足させるもの、省くべきもの、発展させるべきもの――そのどれもAIからは生まれていない。
— Ian Dean, Creative Bloq
この記事が公開された翌日、BloombergはEpic Gamesが傘下のディズニーゲームチームに対し手書きのコードをやめClaudeに任せるよう指示したと報じており、AIとゲーム開発の関係が急速に変化しているタイミングでの出来事だった。
「コードは数分で書けた。しかし嘘の内容、手がかりの設計、そして結末を作ったのはポートピアを書いた人間だ」という記事の締めくくりが、現時点でのAIコーディングの実情をよく表している。
詳細はDragon Quest creator Yuji Horii says he made a detective game with Claude in 30 minutesを参照していただきたい。