10月10日、IEEE Spectrumが「Solar-Powered Data Centers Turn Wasted Sunlight Into AI Compute」と題した記事を公開した。この記事では、太陽光発電の余剰・廃棄電力をAI推論用GPUクラスターに直接供給するスタートアップ「Rune Energy」のアプローチについて詳しく紹介されている。
「電力を探してデータセンターを建てる」ではなく「電力があるところにデータセンターを持ち込む」
大規模データセンターの建設において、今や最大のボトルネックは土地でも資金でもなく、電力の確保だ。グリッド(送電網)への新規接続には数年を要するケースも珍しくなく、AmazonやMicrosoftといった大手が原子力発電所への直接接続を模索しているのはその典型例である。
サンフランシスコのスタートアップRune Energyは、この問題に対して逆転の発想でアプローチする。グリッド接続を待つのではなく、「電力が余っているが使われていない場所」にデータセンターを持ち込む、というモデルだ。
同社のCEO、William Laydenの推定によると、ユーティリティ規模の太陽光発電では年間5万GWh(ギガワット時)の電力が無駄になっているという。太陽光発電は日中の発電量が需要を上回る時間帯に出力を絞る「カーテールメント(curtailment:出力抑制)」を余儀なくされるほか、インバーター(DC→AC変換装置)の処理能力を超えた際に発生する「インバータークリッピング」でも電力が失われる。
CTO、Varun Palivela の言葉が本質をついている。
「私たちはすでにエネルギーが豊富な未来にいる。ただ、そのエネルギーが時間的・空間的に孤立しているだけだ。大規模データセンターが直面する電力制約は、本当のボトルネックではなく、リソース配分の問題だ」
DC直結でGPUに給電するモジュール「RELIC」
Rune Energyの製品はRELIC(Renewable Energy Linked Intelligent Compute)と呼ばれるモジュール型データセンターだ。長さ約2.4m、幅約0.6m、高さ約1.5mのコンテナに、ネットワーク機器・冷却システム・電源エレクトロニクス・GPUをすべて収納する。最大消費電力は100kW、重量は約900kg(2,000ポンド)。
最大の技術的特徴は、太陽光パネルが生成するDC電力にインバーターを介さず直接接続する点だ。ユーティリティ規模の太陽光発電は約1,500Vの標準電圧を持つ。RELICはDC-DCコンバーターで電圧をGPUが消費できるレベルまで降圧する。AC変換を省くことで変換ロスを削減できる一方、ジョージア工科大学のConstance Crozier助教授は「DC→AC変換効率は通常95〜97%と高いため、効率面での恩恵はそれほど大きくないだろう。主なメリットはコンポーネントコストの削減だ」と冷静に分析する。
RELICにはNvidiaのB300 GPUを搭載しており、複数モジュールを相互接続することで128基から2,000基以上のGPUクラスターを構成できる。Rune自身はこれをモジュール製造会社と位置づけており、カリフォルニア州マウンテンビューの自社工場で製造、ソーラーファームへのデプロイは「DCリンクに2本のケーブルを接続するだけ」で完了するという。要求から1週間以内にデータセンターを稼働させた実績もあるとLaydenは述べる。
既存の大規模データセンターが必要とする大型変圧器やスイッチギアは調達に数カ月〜数年かかることもあるが、RELICはこれらのサプライチェーンボトルネックを回避できる。
日照がない時間帯の対処法
太陽光発電の最大の課題は間欠性だ。数日間曇りが続いた場合はどうなるのか。Laydenによると、各RELICモジュールにバッテリーを内蔵し、24時間365日の継続稼働を確保しているという。
ただし、RELICはグリッドへのバックアップ接続を持たないため、バッテリー容量の設計は非常に重要だ。Crozier助教授は「夜間・曇天時の稼働に十分な電力を蓄積し、かつ日照の良い日にバッテリーを充電できるよう、太陽光とバッテリーの規模を適切に設計する必要がある」と指摘する。また、「発電源とデータセンターを同一地点に配置し、バッテリーを組み合わせることで、グリッド側の負荷を変えずにデータセンターの電力をまかなう柔軟性が大きく高まる」とも述べる。
同社は各サイトの過去データを用いた詳細なモデリングを実施し、太陽光発電量とバッテリー・コンピューティングの最適サイジングを算出している。現在の稼働サイトはカリフォルニア、テキサス、マサチューセッツの3州。今後12カ月で100MWのコンピューティング規模への拡大を計画している。
対象ワークロードと市場上の位置づけ
※編集部の考察:RELICが対象とするワークロードはAI推論や小〜中規模のモデルファインチューニングだ。GPT-4クラスの大規模学習には向かないかもしれないが、推論需要が爆発的に拡大している現状では、間欠的な電力供給でも十分に価値を持つユースケースは多い。再生可能エネルギーとAIコンピューティングの組み合わせに関心のある読者は、IEA「Electricity 2024」レポートや、データセンターの電力消費動向を扱ったLawrence Berkeley National Laboratoryの調査も合わせて参照されたい。
詳細はSolar-Powered Data Centers Turn Wasted Sunlight Into AI Computeを参照していただきたい。