10月10日、tftc.ioが「Super Micro Contractor Pleads Guilty in $2.5B China AI Server Scheme」と題した記事を公開した。Super Microの元請負業者がわずか3週間で5億1000万ドル超のNvidia製AIサーバーを違法に中国へ流通させたとして有罪を認めた。総額約25億ドルに上るこのスキームは、東南アジアのペーパーカンパニーとダミーサーバーを駆使した組織的なものであり、米国の輸出規制体制そのものの構造的な脆弱性を露わにした事件として注目を集めている。
元請負業者が4つの連邦罪で有罪答弁
サンノゼ拠点のAIサーバーメーカー、Super Micro Computer(NASDAQ: SMCI)の元請負業者であるTing-Wei「Willy」Sunが、マンハッタン連邦地裁で以下の4罪について有罪を認めた。
- 米国輸出規制違反の共謀
- 密輸
- 米政府への詐欺
- 司法妨害
この事件の核心は、H100・H200を含むNvidiaの最上位GPUを搭載したAIサーバー約25億ドル相当を、商務省産業安全保障局(BIS)の輸出許可を取得せずに中国の顧客へ流通させた点にある。BISはAI・軍事転用リスクを根拠にこれらのGPUを輸出規制対象(EAR規制品)に指定しており、許可なしに中国へ持ち出すことは連邦法違反となる。
※なお元記事では「B200」の記載は確認されていないため、本記事では元記事に明記されているH100・H200のみを対象として記述している。
2026年3月19日にニューヨーク南部地区連邦検察が公開した起訴状では、Sunに加えてSuper Micro共同創業者でビジネス開発担当上級副社長のYih-Shyan「Wally」Liaw、台湾販売マネージャーのRuei-Tsang「Steven」Changも起訴されている。ただし現時点で有罪答弁に至ったのはSunのみだ。
Super Microは起訴を受け、Liaw・Changの2名を行政休職処分とし、Sunとの契約を終了。政府の調査に協力すると表明している。
3週間で5億1000万ドルが動いた
手口の詳細が記事の読みどころだ。
被告らが使った手法は、東南アジアのペーパーカンパニー(パススルー法人)を中継地点として活用し、サーバーを無地の箱に再梱包、偽の最終需要者書類(エンドユーザー証明)を生成するというものだ。さらに2025年12月には、商務省の検査官を欺くためにダミーサーバーを現場に配置する偽装工作まで行っていたとされる。
中でも衝撃的な数字が2025年4月下旬から5月中旬のわずか3週間で5億1000万ドル超が流れたという事実だ。この規模と速度は、組織化された物流、中国側の確実な需要、そして販売時点で完全に腐敗したサプライチェーンの存在を示している。「孤立した事件」という言い訳が成立しないペースだ。
Super Microが2026年8月に完了した社内独立調査では、現在の上級経営陣が流用スキームを認識していた証拠はなく、同社が輸出規制対象製品を既知の制限対象者に直接販売した証拠もなかったとされる。会社自体は被告として起訴されていない。ただし、LiawとChangの裁判が進む中でこの結論が維持されるかは別問題だ。
コンプライアンスの構造的な弱点
記事はこの事件を単なる犯罪報道にとどめず、輸出規制体制そのものの脆弱性として捉えている。
輸出規制の執行は現状、販売マネージャーやブローカーといった「人間の信頼」に依存している。その結果、攻撃対象(アタックサーフェス)は「電話一本と東南アジアのLLC(合同会社)」になってしまう。ライセンスに基づく政府規制サプライチェーンは、最も腐敗しやすいインサイダー一人の強度しか持てない。
米国がNvidiaの高性能GPUを規制しているのは、それらがAI開発競争の基盤となるからだ。BISによるAI向け半導体の輸出規制強化は2022年以降段階的に拡大しており、2023年のアップデートではH100を含む高性能GPU全般が規制対象に加えられた経緯がある。Wall Streetが織り込んでいるAI投資拡大のシナリオは、「コンピュートがライセンスの通りの場所に届く」という前提の上に成り立っている。Sunの有罪答弁は、その前提に25億ドルの注釈を付けた。
今後の注目点
LiawとChangの裁判は未解決のまま継続中だ。上場AI企業の共同創業者がどこまで追及されるかは、政府が企業サプライチェーンへの介入をどれだけ本気で進めるかの試金石になる。特にLiawはSuper Micro共同創業者という立場であり、経営幹部個人への刑事責任追及という観点で業界全体に緊張をもたらしている。
並行して、Super Microに対する証券集団訴訟も進行している。この訴訟は、同社が輸出規制リスクや内部統制の問題を投資家に適切に開示していたかどうかを争点としており、刑事事件の帰趨が民事訴訟の展開に直接影響する可能性がある。経営陣の関与の有無・開示義務の範囲・コンプライアンス体制の実効性という三つの論点が、今後の両裁判を通じて問われることになる。
記事は「3週間5億1000万ドル」という数字を根拠に、これが唯一の活動ではなく、類似の事案が今後さらに表面化するとみている。
詳細はSuper Micro Contractor Pleads Guilty in $2.5B China AI Server Schemeを参照していただきたい。