10月8日、RuntimeWire Staffが「Google Cloud's new work agent can route jobs to Claude and run for days」と題した記事を公開した。Google Cloudが発表した新しいGeminiエージェントは、競合であるAnthropicのClaudeファミリーにもジョブをルーティングできる——自社モデルの囲い込みが当然とされるAIエージェント市場において、これは異例の設計判断だ。さらに数日間にわたる継続実行という長時間稼働能力も備えており、職場での自律エージェント実用化に向けた本格的な布石となっている。
Googleが公式にClaudeへのルーティングを謳う異例の判断
今回の発表で最も目を引くのが、モデルの複数対応だ。Geminiエージェントは、タスクの内容に応じてGeminiファミリーだけでなく、Anthropic(OpenAI対抗として注目される米AI企業)のClaudeファミリーにもジョブをルーティングできる。将来的にはプライベートモデルやオープンモデルへの対応も予定している。
Googleはこのルーティングを「出力品質の向上とコスト削減のため」と説明しているが、どちらの主張に対しても具体的な比較データは今回の発表では示されていない。また、どのタスクがGeminiに行き、どのタスクがClaudeに振られるのかの詳細も明らかにされていない。
競合他社のAIエージェントが自社モデルの利用を前提とする中、Googleが公式にAnthropicモデルへのルーティングを謳うのは、プラットフォームとしての開放性を打ち出す戦略的な判断だ。モデルを問わず「最善の出力を選ぶ」姿勢を示すことで、企業ユーザーへの訴求力を高める狙いがある。
数日間止まらず動き続ける——4種類のメモリが支える長時間稼働
もう一つの特徴が長時間稼働だ。Geminiエージェントは、マルチステップのタスクを複数のサブエージェントに並列または順次委譲しながら、数時間〜数日間にわたって処理を継続できる。
記憶の管理についても具体的な設計が示されており、クラウド上で以下の4種類のメモリを保持するとされている:
- セッションメモリ:進行中のタスクの状態
- セマンティックメモリ:業務を通じて収集した知識
- プロシージャルメモリ:手順の実行方法
- エピソディックメモリ:過去のアクション履歴
このアーキテクチャは、Googleが2026年4月にGemini Enterpriseをエージェントの構築・オーケストレーション・ガバナンスのプラットフォームとして発表した方向性の延長線上にある。セッションをまたいで文脈を保持できることで、人間が都度状況を説明し直す手間を省き、真の意味での「継続的な自律実行」を目指した設計といえる。
GmailもSlackも入口になる——Workspaceの文脈を起点に動く
エージェントの起動方法は複数用意されている。Gmail、Docs、Sheets、Slides、Chatで@Geminiと入力する方法に加え、Slack、Microsoft 365、コマンドライン経由でもアクセスできる。さらにAPIを通じて他サービスから利用することも可能で、Workspaceの外から始まるタスクにもエージェントを組み込める。
Googleが挙げる活用例は以下の2つだ:
- マネージャーがメールで「プロジェクトの進捗をスライドにまとめて」と依頼すると、Workspace Intelligenceがリクエストを検出し、ワンクリックでエージェントに委譲できる
- チームの定例ミーティング設定をエージェントに依頼すると、チャットや過去のイベントスレッドから参加候補者を特定し、カレンダーを確認して組織外の関係者も含めたメール調整を開始する
Googleはエージェントを「チームメンバーの一員」として位置づけており、財務アナリストのような特定の組織的役割を担わせることも想定している。
プレビュー段階で問われる実用性——信頼性の証明はこれから
現時点でGeminiエージェントはプライベートプレビューの段階だ。一部のWorkspace BusinessおよびEnterpriseプランの顧客向けに近く一般提供が予定されているとGoogleは述べている。
発表内容はあくまでGoogleが期待する動作を示したものであり、実際の信頼性は未知数だ。企業が評価する際に問われるのは以下の点になるだろう:
- 適切な人物やドキュメントをどれだけ正確に特定できるか
- アクションに対してどのような権限モデルが適用されるか
- マルチステップの処理コストが、人間が調整するコストを実際に下回るか
エージェントが業務を自律的に進めた後に人間が確認・修正作業を余儀なくされるようでは、価値は大きく損なわれる。プライベートプレビューの結果次第で評価は大きく変わりそうだ。
詳細はGoogle Cloud's new work agent can route jobs to Claude and run for daysを参照していただきたい。