10月10日、The Decoderが「OpenAI revenue keeps surging as company seeks $30 billion in fresh capital」と題した記事を公開した。OpenAIの年間収益率(ARR)が当初報告の約700億ドルから500億ドルへと修正された経緯と、その背景にある会計処理の差異について詳しく報じている。数字だけを見ると業績悪化と誤読しかねないが、実態はまったく異なる。
「700億ドル」が「500億ドル」に——数字が変わった理由
最も注目すべきは、この数字の修正がOpenAIの業績悪化を意味するわけではない点だ。
当初Axiosが報じた「ARR約700億ドル」という数字は、OpenAIとAnthropicの収益を比較可能にするために計算方法を調整したものだったと、Axiosが後から説明している。Financial Timesは2026年9月末時点のOpenAIのARRを約500億ドルと報じた。
差異の根源はクラウドパートナー経由の売上計上方法にある。
- Anthropic:クラウドパートナー(AWS等)経由で顧客に販売した際、顧客が支払う全額を収益として計上し、クラウド側の取り分は費用として処理する。
- OpenAI:一部のパートナー契約では、自社の取り分のみを収益として計上する。
どちらも米国会計基準(US GAAP)に準拠した正当な処理だ。どちらが適用されるかは、取引における各社の役割——顧客関係の主体が誰か、製品提供の責任が誰にあるか——によって決まる。
つまり会計上の定義の違いであり、事業の実態が変わったわけではない。
修正報道が株式市場を揺さぶった
それでも、Financial Timesの報道が出た直後、テック株、特にチップ関連株が数パーセント下落した。
この反応は、市場がOpenAIとAnthropicという米国AI大手2社の業績数字にいかに敏感に反応しているかを示している。AIインフラへの巨額投資が続く中、投資家はその収益化ペースを注視しており、数字の「修正」だけで売りが走る状況になっている。
こうした市場の神経質さが、AnthropicのIPO慎重姿勢や、OpenAIが自社IPOを2027年に先送りしている背景にもあると記事は指摘する。Sam Altman CEOは遅延の理由としてセキュリティリスクを挙げているが、延期の方針自体は最近のサイバーセキュリティインシデントよりも前から固まっていたという。
事業の実態:成長は続いている
修正後の数字にかかわらず、OpenAIの成長ペース自体は依然として速い。
- Q3の全体ARR成長率:前四半期比77%増
- エンタープライズ収益の成長率:同107%増(CNBCより)
- 2026年末までにARR700億ドル達成を見込む(Bloomberg、OpenAI自身が資金調達交渉の場で提示した数字)
現在OpenAIは、企業価値1.4兆ドル(プレマネー)を前提に、少なくとも300億ドルの新規資金調達を交渉中だ。2026年3月には852億ドルのポストマネーバリュエーションで最大122億ドルを調達したばかりであり、その半年後にさらに大型の資金調達を目指している。
ユーザー数の面でも、OpenAIはDevDayで以下の数字を公表した:
- 週間ChatGPTユーザー数:12億人超
- ChatGPT WorkおよびCodexの週間ユーザー数:3,500万人超
- OpenAI製品を利用する企業数:250万社
成長の主な牽引役はエンタープライズ販売と、Claude(Anthropicの主力モデル)や中国発のAIモデル群(DeepSeekなど)との価格競争だ。新たにリリースされたGPT-6.1-Solはその戦略の一環で、OpenAIがDevDayで発表したGPT-6ファミリーの最新モデルの一つである(※GPT-6ファミリーはOpenAIの第6世代モデル群の総称で、現時点では一般向けにすべての製品が公開されているわけではない)。コーディングアシスタントの**Codex**もGPT-6ファミリーの人気を背景に急成長している。
AIバブル論争への影響
この一連の数字をめぐる混乱は、AI業界のバリュエーション信頼性という問いを改めて浮かび上がらせる。各社が異なる会計処理を採用している以上、単純な数字比較には注意が必要だ。
より本質的な問いは、各社が積み上げるコンピュートへの巨額投資に対して、収益成長が追いつくかどうかだ。それは最終的に、企業が実際に示せる生産性向上の成果にかかっている。
※編集部の考察:本文中のAnthropicが「直近1年未満でクラウド契約だけで500億ドル超を積み上げている」という数字は、元記事の記述に基づいているが、Anthropicの公式発表ではなく第三者報道に依拠した数字である点に留意されたい。
詳細はOpenAI revenue keeps surging as company seeks $30 billion in fresh capitalを参照していただきたい。