10月6日、Phoronixが「Meta Developing Compressed RAM "CRAM" For Linux: Better Than ZRAM & Zswap」と題した記事を公開した。MetaがLinux向けに開発中の新しいメモリ圧縮技術「CRAM(Compressed RAM)」が、読み取り速度においてRAWのDRAMとほぼ同等を達成し、書き込み速度においても既存のZRAMやZswapを大幅に上回るというベンチマーク結果が明らかになった。
ZRAMの根本的な限界とは何か
Linuxサーバーやデスクトップで広く使われているメモリ圧縮技術には、ZRAMとZswapがある。どちらもメモリ不足を補う仕組みだが、共通の構造的な弱点を抱えている。圧縮・展開処理をCPUがソフトウェアで行うため、アクセスレイテンシがネイティブDRAMより大幅に悪化するのだ。メモリ効率を上げようとすればするほど、CPU負荷とレイテンシのペナルティが積み重なる——このトレードオフは長年、カーネル開発者を悩ませてきた。
MetaのGregory Price氏が2026年のLinux Plumbers Conference(LPC、プラハ開催)で発表したCRAMは、この前提を根本から覆す試みだ。LPCはLinuxカーネル開発者が集う年次技術カンファレンスであり、Metaクラスの企業がここで提案を行うことは、本格的なアップストリーム化に向けた強い意志の表れとみてよい。
ハードウェアオフロードという解法
CRAMの核心は、圧縮・展開処理をCPUから専用ハードウェアに切り離すアーキテクチャにある。これにより、圧縮メモリに対してキャッシュライン・バイト単位のアクセスを維持したまま、高速に動作する。従来のZRAMやZswapがブロック単位でしか扱えないのとは対照的だ。
Metaほどの規模のデータセンターオペレーターは、汎用CPUに依存しない専用ハードウェアをサーバーに組み込む余地を持っており、こうした技術を実用化できる数少ない組織のひとつだ。
ベンチマークが示す数値
発表で公開されたベンチマーク結果は具体的だ。
- 読み取り性能: CRAMはRAWのDRAMと同等速度を達成。読み込み専用データであれば、圧縮されていることがほぼ透過的になる。
- 書き込み性能: ZRAM・Zswap・通常スワップのいずれと比較しても、CRAMが大幅に上回る。
圧縮処理にCPUを介在させる以上、ZRAMやZswapのレイテンシオーバーヘッドは構造上避けられない。CRAMはその構造自体を変えており、「圧縮しながらもネイティブに近い速度」という長年のトレードオフを崩す可能性を持つ。
実装の現状と今後
CRAM対応に必要な個別コンポーネントの大部分はすでにLinuxメインラインに取り込まれているとのことだ。ゼロから作るのではなく、既存のカーネルインフラを積み上げる形での実現を目指しており、完全なアップストリームの時期は明言されていないが、Price氏は継続的に作業を進めているとしている。
Metaがこの技術に取り組む動機は明確だ。FacebookやInstagramなどの大規模インフラを抱える同社にとって、サーバー1台あたりのメモリ効率を数パーセント改善するだけで、数十万台規模のフリート全体では無視できないコスト差が生まれる。メモリ価格の高騰とデータセンター規模の拡大が続く中、ソフトウェアだけでなくハードウェアレベルの最適化を追求するこの姿勢は、FollyなどOSSへの継続的な貢献とも一貫している。
技術比較まとめ
| 項目 | ZRAM / Zswap | CRAM |
|---|---|---|
| 圧縮処理 | ソフトウェア(CPU) | ハードウェアオフロード |
| アクセス粒度 | ブロック単位 | キャッシュライン・バイト単位 |
| 読み取り速度 | RAWより低下 | RAWと同等 |
| 書き込み速度 | RAWより低下 | ZRAM・Zswapより大幅に高速 |
| メインライン状況 | 実装済み | 主要コンポーネントは取り込み済み |
CRAMの詳細な発表資料はLinux Plumbers Conference 2026のセッションページで公開されている。
詳細はMeta Developing Compressed RAM "CRAM" For Linux: Better Than ZRAM & Zswapを参照していただきたい。