10月3日、Political Wireが「New AI Czar Unveils Goals」と題した記事を公開した。トランプ政権が新設したホワイトハウスのAIタスクフォースと、国家情報長官のジェイ・クレイトンが事実上の「AIツァーリ(AI政策責任者)」に就任したことについて詳しく伝えている。
クレイトンDNI就任とAIツァーリ指名の経緯
国家情報長官(DNI)のジェイ・クレイトンは、トランプ政権発足後にDNIへ起用された人物だ。元SEC(米証券取引委員会)委員長として金融規制・法律分野のキャリアを積んできた背景を持つ。テクノロジー業界出身ではなく、規制・ガバナンス側のプロフェッショナルという位置づけである。
今回CNBCは、トランプ大統領がクレイトンを事実上の「AI czar(AIツァーリ)」に指名したと報じた。「AIツァーリ」とは、特定政策領域を省庁横断的に統括する大統領直属の調整役を指す米政界の慣用表現だ。
米国のAI政策をめぐっては、バイデン前政権が2023年10月に大統領令14110(EO 14110)を発令し、AI安全性・リスク管理を重視する包括的な枠組みを整備した。しかしトランプ政権はその後この大統領令を廃止。以降、政権としての統一的なAI戦略を再構築する動きが続いてきた。また、バイデン政権末期に署名された国家安全保障覚書(AI NSM)も、国家安全保障の文脈でAIを位置づける文書として注目されてきた経緯がある。今回のタスクフォース設立は、こうした政策的空白を埋める動きとも読み取れる。
120日以内にAIリスクと機会を報告
Wall Street Journalの報道によると、ホワイトハウスの新設AIタスクフォースは120日以内に、AIのリスクと機会を評価し、連邦政府の責任範囲を明確にした報告書をまとめる。このタスクフォースを主導するのがクレイトンだ。
クレイトン自身はその役割についてこう語っている。
「大統領は、超知能(superintelligence)において我々がリーダーであり続けること、そしてアメリカ国民の利益を最優先にすることを確実にするためのグループを立ち上げるよう求めた。」
120日という期限は、報告書の公表が2027年2月初旬ごろになる計算だ。その内容が、連邦政府のAI調達・利用・規制の枠組みを大きく左右する可能性がある。
政策の方向性に何が問われるか
タスクフォースの任務として明示されているのは以下の点だ。
- AIのリスクと機会の評価
- 連邦政府としての責任範囲の策定
- 米国が超知能(superintelligence)分野でのリーダーシップを維持するための方針
「superintelligence(超知能)」という言葉をトランプ政権の公式ミッションに組み込んだことは注目に値する。政権が中国との技術覇権争いを強く意識していることが読み取れる表現であり、規制強化よりも「リーダーシップ維持」を前面に出した姿勢は、バイデン政権期のAI安全・リスク重視の路線とは明確に温度差がある。
クレイトン起用の背景
クレイトンはAI技術者ではなく、法律・金融規制の専門家だ。国家情報長官という職にあることから、安全保障・情報収集の観点でAIを捉える立場に置かれている。テクノロジー業界からの登用ではなく、規制・ガバナンス側の人物を充てた人事は、政権がAIを純粋な産業振興の問題としてではなく、国家安全保障と一体の課題として扱っていることを示唆している。
タスクフォースがどのような報告書をまとめ、それが連邦政府全体のAI政策にどう反映されるかは、米国のAIガバナンスの今後を占う上で注視すべき動向だ。
詳細はNew AI Czar Unveils Goalsを参照していただきたい。