10月5日、Futurismが「McDonalds Has Secretly Deployed AI Models to Determine Exactly What to Charge You for Its Mid Fast Food Burgers」と題した記事を公開した。マクドナルドが米国内の全店舗でAIモデルを密かに導入し、顧客ごとの支払い許容額を推定して価格設定に活用していた実態を、Reutersの調査報道をもとに詳しく報じた内容である。
フランチャイジーへの「事実上の強制」——これが最大の問題点だ
この報道で最も注目すべきは、単に「AIが値段を決めている」という事実ではなく、本社がフランチャイズオーナーに対してAI価格システムの利用を事実上強制していたという構造的な問題だ。
Reutersの取材に対し、マクドナルド本社は「AIの価格設定ポータルはツールであり、義務ではない」とコメントした。しかし、Reutersが取材したフランチャイズオーナー3人は、このAI価格スキームの利用を事実上強制されたと証言している。
実態はさらに踏み込んだものだ。本社はフランチャイジーに対して年3回以上AIの価格ガイダンスを送付しており、オーナー側が推奨価格に従わない「価格非遵守(pricing non-compliance)」を追跡・記録している。CEOのクリス・ケンプチェンスキー氏は投資家に対し、この「価格非遵守」をフランチャイジーの評価指標に組み込むと述べたと報じられている。
AIモデルへの目標値は、提携先のAI企業Tiger Analyticsと協力して設定される。その内容の一例が「少なくとも2年間価格改定していないメニュー項目の値上げを優先する」というものだ。
AIが「あなたの財布」を値踏みする仕組み
Reutersの調査報道によると、マクドナルドは機械学習アルゴリズムを使い、全米約1万4,000店舗のメニュー価格を個別に最適化している。このシステムは毎日数百万件の取引データを継続的に分析し、各店舗における「最適価格」を算出する仕組みだ。
「顧客ごとの支払い許容額を推定する」とされるが、元記事ではその個人特定の具体的な手法——たとえば位置情報・購買履歴・デバイス情報などの活用有無——については詳細が明かされていない点には留意が必要である。あくまで店舗単位・エリア単位での価格最適化が中心的な手法として報じられている。
その結果として生じる価格差は、想定以上に大きい。Reutersが実際に調査したところ、カリフォルニア州フレズノ市内でわずか2マイル(約3.2km)しか離れていない2店舗のビッグマック価格が5.69ドルと6.89ドルと判明した。差額は**約21%**である。
フランチャイジーと本社の利益相反
興味深いのは、AIの価格推奨に不満を持っているのが「客だけではない」という点だ。マクドナルド本社はフランチャイズ店の利益ではなく売上から手数料を取る仕組みのため、本社は値下げ推奨によってもボトムラインを維持できる。一方でオーナー側は、値下げが収益を直撃する。AIが近頃値下げを推奨するケースが増えているとされており、これがフランチャイジーと本社の間で摩擦を生んでいる。
前述の「価格非遵守」の追跡と合わせて考えると、本社がAIを通じてフランチャイジーの価格裁量を実質的に制限しつつ、自社の収益構造は守るという非対称な関係が浮かび上がる。
食品業界全体に広がるAI動的価格設定
AI主導の動的価格設定(ダイナミックプライシング)は食品業界で増加傾向にあるが、評判リスクを理由に企業が公表することはほとんどない。
なお、参考として、2024年12月にはInstacartが一部ユーザーを対象にAI動的価格設定ツールを密かにテストしていたことが発覚し、批判を受けてプログラムを中止した経緯がある。分析によれば、このスキームに晒された家庭は年間最大1,200ドルの追加支出を強いられる可能性があったとされている。
マクドナルドのAI活用はこれだけにとどまらない。AIを使った採用システムの導入や、2度目の挑戦となるAIドライブスルーの実験も並行して進めている。
詳細はMcDonalds Has Secretly Deployed AI Models to Determine Exactly What to Charge You for Its Mid Fast Food Burgersを参照していただきたい。