10月4日、startuphub.aiが「Eisman says AI bubble rests on two customers」と題した記事を公開した。この記事では、著名な空売り投資家スティーブ・アイスマンがAIバブルの構造的脆弱性を指摘し、業界全体がOpenAIとAnthropicという2社の顧客に依存していると警告した内容について詳しく紹介されている。以下に、その内容を紹介する。
LLMプロバイダーに「堀(モート)」はない
アイスマンといえば、2008年のサブプライム危機を予見した空売り投資家として知られ、映画『マネー・ショート』でも取り上げられた人物だ。その彼が今、AIバブルの構造を解剖している。
彼の分析の核心はシンプルだ。LLMプロバイダーには競争優位の「堀(モート)」が存在しない。
比較として彼が挙げるのは以下だ。
- Googleの検索:90%のシェアを持つモノポリー的な堀
- SalesforceやServiceNow:乗り換えコストが高いため、顧客が逃げない
- ハイパースケーラー(AWS、Azure、GCP):データセンターに1,000億ドル規模の設備投資ができる資本の堀
一方でClaudeを使っている開発者は、より良いモデルが出れば明日にでも乗り換える。LLMプロバイダーは本質的に差別化が難しい商品(コモディティ)に近い。
ここに構造的なジレンマがある。ハイパースケーラーは資本の堀を持ちながら、クラウド収益の多くをモートなきLLMテナント企業に依存している。
「AI滅亡論」は規制を呼び込むための演出か
アイスマンが踏み込んだもう一つの論点が、規制をめぐる陰謀論的な見方だ。
「AIは人類を滅ぼす」という言説が広まっているが、彼はこれを規制誘導のための意図的なヒステリーと位置付ける。規制が入れば、中国のオープンウェイトモデル(重みを公開しているモデル)の普及を法的に封じ込め、米国の一部プレイヤーによる事実上の複占(デュオポリー)が生まれる——というシナリオだ。
根拠として彼が指摘するのは、Anthropic CEOのダリオ・アモデイらが「スローダウンすべき」と声高に訴える一方で、IPOを延期しているプレイヤーが一人もいないという事実だ。自社製品が本当に危険だと信じているなら、まず自分たちが止まるはずだという論理だ。
イーロン・マスクによる皮肉な指摘——「お前のプロダクトは世界を終わらせると言いながら、IPOへの出資枠はいくら確保できる?」——も同じ文脈で引用している。
財務面に出始めた亀裂
より即物的な話として、アイスマンはハイパースケーラーの財務体質の変化を問題視する。
Nvidiaチップの減価償却期間の延長については、マイケル・バーリ(こちらも『マネー・ショート』で描かれた人物)が2024年11月に指摘した問題だ。ハイパースケーラーが減価償却年数を3〜4年から5〜6年に延ばすことで、報告上の利益を底上げしているという会計操作の疑いである。アイスマンはこれを完全には否定しないが、「旧世代チップへの需要が依然強く価格が上昇しているため、今の段階では実害は限定的」とした上で、「もしOpenAIが失敗して連鎖が逆回転しても、問題の本質は減価償却とは無関係だ」と述べている。
より直接的な危険信号として挙げているのがOracleの株価挙動だ。直近の決算発表後、時間外で4〜5%、寄り付きで7%上昇したにもかかわらず、当日の引けには下落して終了した。S&Pのクレジット格付けはBBBマイナス、投資適格の中では最低水準(ジャンク債まであと1ノッチ)だ。
かつてMicrosoft、Amazon、Googleはキャッシュを生み過ぎて自社株買いしか使い道がなかった。今はキャッシュフローが消滅し、場合によってはマイナスになっている。Googleが上場以来初の株式増資で850億ドルを調達するなど、2年前には考えられなかった動きが現実になっている。
未解決の「電力」問題
アイスマンはエネルギーインフラ問題についても言及している。マスクの整理——「中国はチップ問題、米国は電力問題」——に同意しつつも、「電力不足がどれだけ実際の制約になるかはまだ確定できない」と留保している。電力は物理インフラのため、チップより解決に時間がかかる点は認識している。
AIへの楽観論が支配的な中で、「モートがない」「財務が悪化している」「規制論は演出だ」という視点は、少数意見ではあるが無視できない論点を含んでいる。
詳細はEisman says AI bubble rests on two customersを参照していただきたい。