10月2日、Futurum Groupが「AI Proves Value, But Only 13% of Organizations Scale It」と題した記事を公開した。BearingPointの大規模調査をもとに、AIが価値を実証しているにもかかわらず当初のビジネスケース通りにスケールできている組織がわずか13%にとどまる実態と、その根本原因を分析している。
AIは成果を出している。では、なぜ広がらないのか
BearingPointが公開したレポート「Scaling AI for measurable impact」(※元記事では2026年10月1日付として参照されている)は、欧州・米国・中国の13カ国にわたる1,050名のCスイート(CEO、CFO、CIOなど経営幹部)を対象とした大規模調査に基づいている。
結論から言えば、AIは多くの組織でビジネス価値を生んでいる。AIを導入した組織の約4分の3が「測定可能なビジネスインパクトがあった」と回答し、約4割が「売上増加とコスト削減の両方を実現した」と答えた。
にもかかわらず、当初のビジネスケース通りに全面的にスケールできた組織は13%のみ。残りの約4分の3は、スコープの縮小あるいは期待以下のスケールにとどまっている。
BearingPointのFrédéric Gigantはこう述べる。「孤立した成功を組織的なインパクトに変えるのはマネジメントの規律だ」。技術の問題ではなく、組織の問題だという指摘だ。
成熟度による4段階の分類
BearingPointは組織をAI活用の成熟度によって以下の4段階に分類している。
- Explorers(探索段階):15%
- Experimenters(実験段階):20%
- Implementers(実装段階):54%
- Leaders(先進段階):11%
ここで顕著な差が現れる。Leadersの約半数はAIを計画通りにスケールできているのに対し、Implementersで同じことができているのはわずか**6%**だ。さらに、Leadersの70%はAIプロジェクトの大半を財務的なKPIに紐付けているが、Implementersでは34%にとどまる。
スケールを阻む障壁として調査が挙げるのは「複雑な規制環境」「レガシーシステムとの統合」「データ品質」だ。だが、それ以上に根本的な問題がある。スケーラビリティをAI導入前に正式に評価している組織は3分の1未満という事実だ。Leadersはこの順序を逆転させており、ガバナンスと財務的説明責任をプロジェクト開始時点から組み込んでいる。
2030年に向けて広がるギャップ
財務インパクトの見通しも示されている。
- コスト削減10%以上を報告する組織:現在24% → 2030年に35%へ
- 売上増加10%以上を報告する組織:現在4% → 2030年に22%へ
AIへの投資意欲も高く、ROIが限定的であっても9割の組織が投資継続の意向を示している。ただし、意欲が実行能力に追いついていない状況が続いている。
AI成熟度の深い統合(deep integration)の割合は2025年の7%から2026年には11%に改善したが、依然として少数派だ。
エージェントAIと「人員過剰」という新たな問題
調査はさらに2つの課題を指摘する。
1つ目は、AIによる人員過剰(workforce overcapacity)だ。 現時点で62%の組織がAI導入によって10%以上の人員過剰を報告しており、この割合は2030年までに**94%**に達すると予測されている。単純な人員削減の話ではなく、AIガバナンス、エージェント・オーケストレーション(複数のAIエージェントを協調動作させる仕組み)、データサイエンス、人間とAIの協働設計といった新たな能力へのリスキルが同時に求められる。
2つ目は、エージェントAIへの対応遅れだ。 エージェントAIとは、指示なしに自律的にタスクを実行するAIシステムを指す。明確なアーキテクチャ戦略を持ち積極的に取り組んでいる組織は**13%、エンタープライズ全体にスケールしているのは10%**にすぎない。7割超の組織はいまだ学習・パイロット段階にある。一方、Leadersの59%はエージェントアーキテクチャの定義または積極的なスケール展開を進めており、Implementersの26%と大きく差が開いている。
スケールできない理由は技術ではなく組織にある
BearingPointが示す優先事項は以下の5点で、いずれも組織・マネジメント領域の課題だ。
- エンタープライズ価値ポートフォリオ管理
- 財務KPIとの紐付け
- 投資前のスケーラビリティ評価
- 人員再設計
- 人間とエージェントのガバナンス
AI導入のPoC(概念実証)は多くの組織で成功している。問題はその先にある。ガバナンスと説明責任の仕組みをいかに整備するか——それがスケールできる13%とできない87%の分岐点になっている。
詳細はAI Proves Value, But Only 13% of Organizations Scale Itを参照していただきたい。