10月1日、The Newsが「AI boom could trigger severe market shocks, Bank of England warns」と題した記事を公開した。イングランド銀行(Bank of England)のアンドリュー・ベイリー総裁が「ある時点で資産価格の修正が起こり得る」と明言し、AIバブル崩壊が世界の株式・クレジット市場全体で損失を増幅させるリスクがあると公式に警告した。高レバレッジで膨らんだAI投資が一斉に巻き戻された場合のシステミックリスクを、中央銀行のトップが具体的に言及したことは、市場関係者にとって看過できない警告だ。
イングランド銀行が「AIバブル崩壊」の可能性を認める
ベイリー総裁は、AIへの大規模な資本流入によって資産価格が急騰しており、テクノロジー支出と金融市場の結びつきが強まっていると指摘した。企業収益の期待値や生産性向上が市場予測を下回った場合、その反動は市場全体に波及しかねないという見方だ。中央銀行としてAI分野への投資額を「非常に注意深く」監視していると述べた。
「AIバブルが崩壊すると思うか」と問われたベイリー総裁は、「ある時点で資産価格の修正が起こり得る」と明言した。中央銀行トップがバブル崩壊の可能性をここまで直接的な言葉で認めたことは、金融市場に対して強いシグナルを送るものとなっている。
懸念の核心:負債と高レバレッジで膨らむAI投資
イングランド銀行の金融安定政策委員会(Financial Policy Committee、FPC)は、AI関連の事業拡大の相当部分が急増する負債と高いレバレッジによって支えられていると指摘している。なお、FPCは金融システム全体の安定を監督する委員会であり、金利決定を担う金融政策委員会(Monetary Policy Committee、MPC)とは別組織である。
高レバレッジとは、借入資金を使って投資規模を実際の自己資本以上に拡大している状態を指す。好況時には利益を増幅する一方、相場が反転した際には損失も同様に増幅されるため、金融安定上のリスク要因として中央銀行が強く警戒するポイントとなる。
これが意味するのは、投資家心理が突然転換した場合、世界の株式市場とクレジット市場全体で損失が増幅されるリスクがあるということだ。過去数年でAI企業に投じられた資金は、一部の企業の時価総額を数兆ドル規模に押し上げており、その評価が実態と乖離しているとの見方がFPC内で強まっている。
「大きな可能性」と「相当なリスク」の両面
ベイリー総裁はAI技術そのものを否定しているわけではない。「経済成長を強化する大きな可能性がある」と認めつつも、「同時に相当なリスクも伴う。その両方に対処しなければならない」と語った。AIの潜在的な恩恵を評価しながらも、金融システムの安定を守る立場から楽観論を戒める姿勢を明確にしている。
元記事によれば、ベイリー総裁はAIのリスクと恩恵の両面がUK経済にとって重要な課題だと位置づけており、規制当局として状況を注視し続ける意向を示している。
背景:なぜ今、中央銀行がAIを警戒するのか
2023年以降、OpenAIやNVIDIAをはじめとするAI関連企業への投資が世界規模で急増した。NVIDIAの時価総額は一時3兆ドルを超え、S&P 500指数全体のパフォーマンスを少数のAI関連銘柄が牽引する構図が続いている。こうした急激な資産価格の上昇は、2000年代初頭のドットコムバブルと重ねて語られることが増えており、当時も一部のインターネット関連企業への過剰な期待が市場全体を巻き込む急落を引き起こした。
金融当局が「構造的なボトルネック」や「高バリュエーション」に対して警戒を強めるのは、こうした歴史的文脈があるからでもある。ドットコムバブル崩壊時には、NASDAQが2000年のピークから約78%下落し、その影響は実体経済にまで及んだ。
今回の警告は、英国だけでなく国際的な懸念の高まりを反映している。現在のテック相場が急激な調整局面を迎えた場合、その影響はグローバルな金融システム全体に及ぶ可能性があると、イングランド銀行は強調している。AI投資が国境を越えてシステム全体に組み込まれている現状では、一国の中央銀行の警告が他国の金融当局や機関投資家の行動にも影響を与えることになる。
詳細はAI boom could trigger severe market shocks, Bank of England warnsを参照していただきたい。