9月30日、Keith Kirkpatrickが「Microsoft Splits the Copilot Pricing Model Into Everyday and Advanced AI」と題した記事を公開した。MicrosoftがCopilotの料金モデルを「日常AI」と「高度AI」の2層構造に分割し、企業のAIコスト管理に新たな課題と新たな管理手段の両方をもたらすという変更について詳しく論じている。
料金体系の骨格:USLとUBBの2本立て
2025年9月25日、Microsoftはいわゆる「FinOps(Financial Operations)チーム」——クラウドや技術コストの予算管理を担う部門——が注視すべき料金体系の変更を発表した。
Copilotの課金は以下の2層に分かれる:
「日常AI(Everyday AI)」:ドキュメントの要約、会議録の箇条書き生成といった定型的なタスク。既存のユーザーサブスクリプションライセンス(USL)、つまりユーザー単位の月額課金に含まれる。GPT-5.6やSonnet 5(AnthropicのClaudeシリーズに属するモデル)はUSLに含まれ、Opus 5(同じくAnthropicのより高性能なモデル)は利用上限付きで利用可能。フェアユース上限に達したユーザーには警告が表示され、追加費用なしで「Auto」モードに切り替えられる。
「高度AI(Advanced AI)」:長時間稼働するエージェントや自律ワークフロー(Cowork、Code、Autopilot、SharePointの新機能、FableやAstra——いずれもGoogle DeepMindが開発するフロンティアモデル——を含む)。こちらは使用量課金(UBB:Usage-Based Billing)で、「Copilotクレジット」を消費する。UBBの利用にはUSLが前提条件となる。
エンタープライズ向けには、UBBはデフォルトでオフの状態になっており、管理者がMicrosoft 365管理センターで支出ポリシーを作成して初めて有効になる。
「予測可能な床、変動する天井」という問題
Keith Kirkpatrickが指摘する核心はここだ。USLによってブロードな従業員展開のコストは読みやすくなる一方、UBB側のコスト予測が困難という問題は解消されていない。
Copilot Creditsの単価は1クレジット=0.01ドル(事前購入で最大20%割引)。しかし消費量はモデル、実行時間、コンテキスト、使用ツールによって変動する。「午後いっぱい稼働する多段階の財務モデル」(記事内の例)が何クレジット消費するかは、事前には分からない。
管理者はAzureのリソースグループへのチャージバック(コスト配賦)や、Microsoft Graph APIによる支出ポリシーの自動管理が可能になった。また、Cowork、CodeのほかWork IQ APIのコスト管理、グループ単位のモデルアクセス制御、エンドユーザーへのクレジット残量の可視化といったFinOps機能も順次追加される(Copilot Studioエージェントのコスト管理は10月予定)。こうした管理ツールの整備は、コスト予測の難しさを部分的に緩和する取り組みとして評価できる点でもある。
「課金はあくまで"努力"ベース」という本質的な限界
記事が最も鋭く指摘するのはここだ。Copilotクレジットはコンピューティングリソースと実行時間に対して課金される——つまり、4時間かけて誤った結果を出したエージェントも、素早く正解を出したエージェントも、同じクレジットを消費する。
新しい「Cowork消費インサイト」機能は、どのシナリオがクレジットを消費し「何を生み出したか」を示す方向に踏み出している。だが価格体系そのものはアウトカム(成果)に紐づいていない。ROIの証明責任は顧客側に残る。アウトカムベースの料金体系が企業ソフトウェア全体で議論されている流れの中で、Microsoftのこのアプローチは12〜18ヶ月以内に見劣りする可能性がある、とKirkpatrickは述べている(あくまで著者による見通しであり、確定的な予測ではない)。
競合への牽制と、そのリスク
Microsoftは「一部のベンダーが日常的なAI作業もメータリング(従量課金)している」と名指しこそしないが批判し、それがアクセスの制限につながると主張する。Claude(Anthropic)とChatGPT(OpenAI)との内部コスト比較(40プロンプト×2ユーザープロファイル)も公開している。
ただし注意が必要な点がある。この比較はMicrosoftが自社でモデリングしたものであり、交渉済み割引は含まれていない。さらに皮肉なことに、CopilotのUSLおよびUBBはどちらもOpenAIとAnthropicのモデルで動いており、Microsoftはこれらのモデルの再販業者でありながら競合として比較を行っている。
企業購買担当者が今すべきこと
記事は購買側へのアドバイスも具体的に挙げている:
- まず目的とするビジネス成果を特定し、どのワークフローが高度AIを正当化するかを見極める
- 時間短縮やサイクルタイム削減といった定量的な効果を測定する
- その上でUBBの支出ポリシーを設定する
また、MicrosoftはUBBの一部機能を将来的にUSLに移行すると述べているが、その時期と条件はMicrosoftの裁量に委ねられている。複数年契約を結ぶ企業は、この移行のタイミングや条件を契約に盛り込む交渉を行うべきだ、とKirkpatrickは指摘する。
詳細はMicrosoft Splits the Copilot Pricing Model Into Everyday and Advanced AIを参照していただきたい。