9月30日、PYMNTSが「Robinhood Unveils New AI Agents and 24/7 Weekend Trading」と題した記事を公開した。1日あたり3,000万回近いAPI呼び出し、1万5,000人以上のアジェンティック取引口座——Robinhoodが発表した「Robinhood Agents」は、個人投資家がAIエージェントを自ら構築して自動売買に使える環境であり、その基盤インフラはすでに商用スケールで稼働している。週末を含む24時間365日取引の拡張とあわせ、個人投資家向け証券サービスの設計思想を大きく塗り替える可能性がある。
ユーザーが自分でAIエージェントを作れる「Robinhood Agents」
9月29日、Robinhoodはテキサス州ヒューストンで開催した自社イベント「HOOD Summit 2026」において、Robinhood Agentsを発表した。
この機能は、Robinhoodのユーザーが自身のAIエージェントを構築し、投資戦略の立案、銘柄リサーチ、自動売買などを行えるようにするものだ。同社プロダクトマネジメント担当バイスプレジデントのAbhishek Fatehpuria氏は次のように述べている。
「安全性とセキュリティを核に、アジェンティック・ファイナンス(AIエージェントが金融行動を自律的に実行する仕組み)の新標準を打ち立てる。AIに精通しているかどうかに関わらず、Robinhoodを使わないことは不利になる。」
今回の発表は、今年5月に開始した「アジェンティック取引」の延長線上にある。5月のローンチではサードパーティ製のAIエージェントをRobinhoodに接続できるようにした。それ以来、1万5,000人以上のユーザーがアジェンティック取引口座を開設し、エージェントがRobinhoodのツールを利用する回数は1日あたり3,000万回近くに達しているという。
「パワーユーザー」市場を狙い撃ちにした戦略
PYMNTSのリサーチ部門であるPYMNTS Intelligenceの調査によれば、月に27件以上の異なるタスクにAIを活用する「パワーユーザー」は全消費者の10%を占める。75%が1年以上AIを継続利用しており、AIをすでに日常の金融ルーティンに深く組み込んでいる層だ。
一方で、AIを全く使わない層は依然として全消費者の**53%、ベビーブーマー世代では72%**に上る。Robinhoodが照準を合わせているのは、この多数派ではなく、株の調査に偶発的にAIを使う段階を超えたパワーユーザー層だ。自社製のAIエージェント構築環境を提供することで、こうしたユーザーのプラットフォームへの依存度をさらに高める狙いがある。
週末も含む24時間365日取引へ
もう一つの発表が、週末取引を含む24時間365日の株式取引の拡張だ。
Robinhoodは2023年に「Robinhood 24 Hour Market」を立ち上げ、平日の時間外取引を可能にしていた。今回の拡張では、日曜夜8時(米東部時間)から金曜夜8時まで、数百銘柄の株式およびETFを取引できるようになる。
同社のチーフ・ブローカレッジ・オフィサーであるSteve Quirk氏は次のように語る。
「ニュースは市場の開始を待ってくれない。週末取引のローンチにより、顧客も待つ必要がなくなる。」
週末に重要な経済指標や企業発表が出た場合でも即座に対応できる仕組みは、特に個人投資家にとって実質的なメリットがある。機関投資家は週末でもヘッジ手段を持つが、個人投資家はこれまで月曜の寄り付きまで動けなかった。
エンジニア視点での注目点
アジェンティック取引APIの設計と安全機構
今回の発表で特に興味深いのは、Robinhoodが単にAI機能を「提供する」のではなく、ユーザーがエージェントを自ら構築できる環境を整えた点だ。5月のローンチ時点ではサードパーティ製エージェントの接続が主眼だったが、今回はRobinhood自身がエージェント構築基盤を提供する形に踏み込んでいる。
元記事の範囲では、対応モデルや使用言語スタックの詳細は公開されていない。ただし、Fatehpuria氏が「安全性とセキュリティを核に」と強調している点は注目に値する。アジェンティックAIが実際に売買注文を執行する構成では、誤発注・ループ実行・想定外のポジション構築といったリスクが現実的に生じうる。同社が1日3,000万回近い呼び出しをすでに商用スケールでさばいているという事実は、レート制限・認可制御・異常検知といった安全機構がある程度成熟していることを示唆している。具体的なAPI仕様やMCP(Model Context Protocol)対応の有無については、今後の公式ドキュメント公開が待たれる。
日本の個人投資家・規制環境との対比
※編集部の考察
日本の投資家にとって、この発表は対岸の話にとどまらない視点がある。日本では金融商品取引法上、AIによる完全自律的な売買指示(投資一任)には投資顧問業の登録が必要であり、個人が自作のAIエージェントに売買を「任せる」構成が現行規制でどう解釈されるかは明確でない。また、週末取引についても、国内の証券取引所は土日を休場としており、国内株を対象とした同様のサービス展開には制度的なハードルがある。米国でRobinhoodが実現しつつある「個人がエージェントを自作して24時間自動売買する」という体験は、日本の規制環境では現時点で直接的な対応が困難な部分も多い。一方で、海外ETFや米国株への投資が一般化している日本の投資家が、将来的にこうしたプラットフォームへアクセスする可能性を考えると、規制動向と合わせて注視する価値のある動きだ。
詳細はRobinhood Unveils New AI Agents and 24/7 Weekend Tradingを参照していただきたい。