9月29日、CNBCが「House Speaker Johnson says he hopes AI guardrails are 'voluntary' amid Congress inaction」と題した記事を公開した。この記事では、米下院議長マイク・ジョンソンがAIの安全対策について「自主的であるべき」との立場を示し、議会が実質的に動けない中での規制空白が浮き彫りになっている。
「ガードレールは自主的であることを望む」
マイク・ジョンソン下院議長(共和党、ルイジアナ州選出)は29日朝、CNBCの「Squawk Box」に出演し、AIの安全対策に関して「自主的なものになることを望んでいる」と発言した。同日午後にはドナルド・トランプ大統領も交えたAI関連の会合が予定されており、ジョンソン議長は「今日の会議から何が出てくるか見てみる。業界側も安全に取り組む姿勢を投資家や消費者に示したいと考えているはずだ」と述べた。
「望む(hope)」という表現が示すとおり、これは義務的な規制を排除する宣言ではなく、自主規制を好ましい方向性として示したものだ。ただし義務的な規制を求める声が高まるなかでの発言として、その政治的意味合いは小さくない。
議会は事実上、停止状態
議会は今週末から選挙後まで休会に入る。AIの規制論議は「初期段階」に留まっており、立法が実現する見通しは当面ない。
こうした状況のなか、業界側は逆説的なメッセージを発信している。テック企業のCEOたちは「自分たちが開発した技術は、制御を失えば壊滅的なリスクをもたらす」と警告しながら、同時にAIが経済成長と生産性向上を牽引する柱であるとも主張している。
規制をめぐる具体的な提案はすでにいくつか浮上している:
- フロンティアラボ(GPT-4やClaudeといった最先端の大規模AIモデルを開発・運用する企業群を指す業界用語)への独立監査人の設置
- 新たな製造物責任法の導入
- AIモデルに対する規制審査の義務化
ジョンソン議長は責任(ライアビリティ)の免除について問われると「そういう話は出てこない」と答え、「製造物責任法がすでに適用される」との認識を示した。AIに対して既存の製造物責任の枠組みをそのまま適用できるかどうかは、法律家や政策立案者の間でも見解が分かれており、この発言自体が今後の論点になる可能性がある。
OpenAIのモデル非公開と、AnthropicのIPO警告
タイミングとして見逃せないのが、同日前後に起きた二つの出来事だ。
OpenAIは28日、開発中だった新モデルを社内の安全基準を満たせないとして公開中止にしたと発表した。モデルの具体的な名称については元記事での記載に依拠するが、安全審査を理由にリリースを見送るという判断そのものが、業界内でも自主規制の機能を示す事例として受け止められている。
AnthropicはIPO目論見書のなかで、自社技術が「人類に対する壊滅的または実存的なリスクをもたらす可能性がある」と明記した。CEOのダリオ・アモデイはAI開発のペースを落とすよう求める発言も行っており、規制を求める声は今後も強まる見通しだ。IPO目論見書という法的拘束力を持つ公式文書にこうしたリスク記述が盛り込まれた点は、単なる広報的な警告とは重みが異なる。
ジョンソン議長はこの日、アモデイのほかにMetaのマーク・ザッカーバーグ、Alphabetのサンダー・ピチャイ(Sundar Pichai)とも会談する予定だった。
「自主規制」に委ねることの意味
政府が具体的な規制を整備しないまま、AIの安全対策を企業の自主的な取り組みに委ねるという構図は、ソーシャルメディアやプラットフォーム規制でも繰り返されてきたパターンだ。規制の空白期間が長引くほど、後追いで法整備が困難になるという懸念は根強い。
比較軸として参照されることが多いのが、EUが2024年に施行したAI Act(EU AI規制法)だ。リスクレベルに応じた義務付けを軸とするこの枠組みは、米国の「自主規制優先」アプローチと対照的な立場を取っており、国際的な規制競争の観点からも注目されている。
議会が休会中のあいだも、業界側の自己申告による安全対策の発表と、新モデルの開発・公開は続く。「自主的なガードレール」がどこまで機能するかは、今後の焦点となる。
詳細はHouse Speaker Johnson says he hopes AI guardrails are 'voluntary' amid Congress inactionを参照していただきたい。