9月22日、madrobot.blogが「"This is China speed": giant AI data centres are rising in Inner Mongolia's potato fields」と題した記事を公開した。中国・内モンゴルのジャガイモ畑に巨大AIデータセンターが急速に建設されている実態を、BBCの現地取材をもとに詳しく伝えている。
「じゃがいも首都」がデータセンター群に変わる
内モンゴル自治区のウランチャブ(Ulanqab)は、長年にわたり中国公認の「ジャガイモの都」として知られてきた地方都市だ。その畑に今、Huawei・ByteDance・DeepSeek(AIモデル開発で知られる中国のAIラボ)といった中国テック系企業・組織向けの巨大データセンターが次々と立ち上がっている。
BBCの中国特派員Laura Bickerが現地を取材したところ、ある建設作業員はこう笑いながら語ったという。
「これが中国速度(China speed)だ」
「中国速度」とは、超短期間での大規模建設を指す中国の慣用表現で、この文脈ではデータセンター群が文字通り畑の上に数カ月単位でそびえ立っていく様子を指している。電気エンジニアによれば、現場では年1フェーズのペースで建設を進めており、さらに多くのフェーズが控えているという。習近平がトランプとワシントンで会談する準備を進めていたまさにその時期に、取材が行われた。
なぜ「僻地」なのか——立地の合理性
ウランチャブが選ばれた理由は明快だ。
- 土地が安い:人口希薄な地域であり、用地取得コストが低い
- 風力・太陽光発電が豊富:すでに大規模な再生可能エネルギーインフラが整っている
- 冷涼な気候:サーバー冷却に必要な水の消費量を抑えられる
同様の立地条件を持つ寧夏(Ningxia)、甘粛(Gansu)、貴州(Guizhou)でも、数百棟規模のデータセンター建設が進む。北京政府はこれらの施設に蓄積される計算資源を、経済・安全保障の両面で不可欠なインフラと位置づけており、2030年までにAIを産業・社会の90%に組み込むという目標の基盤と捉えている。
米国とは異なるAI戦略
中国が採るアプローチは、OpenAIやAnthropicの閉鎖型モデルとは対照的だ。習近平は中国企業に対し、誰でも改変可能な安価なオープンソースモデルの開発を奨励している。最先端チップへのアクセスを米国の輸出規制で遮断されているにもかかわらず、技術の共有によって中国の研究開発は加速してきた。
米国側の見方は厳しい。トランプ大統領は「AIを制する者が勝つ」と発言し、AnthropicのCEO Dario Amodeiは対中チップ禁輸の継続を求め、中国がリードした場合は「米国と世界に深刻な危険をもたらす」と警告した。これに対し、中国の国営メディア「環球時報(Global Times)」は「冷戦の脚本」と一蹴している。
人材の「帰還」も加速
インフラだけでなく、人材面でも変化が起きている。BBCによれば、中国は年間約500万人の理工系卒業生を輩出しており、米国の約50万人と比べて10倍の規模だ。さらに、米国の移民政策の厳格化や米中関係の悪化を背景に、海外に出た人材が戻るケースも増えている。
イェール大学とケンブリッジ大学で学んだ中国科学技術大学のJack Zhang氏はBBCにこう述べた。
「米国に向かう学生・研究者は減り、米国から中国に戻る人は増えている。これは非常に明確な傾向だ」
地元住民の声——恩恵はあるのか
一方、ウランチャブの住民全員がこの変化を歓迎しているわけではない。データセンター建設のために村ごと移転させられたケースもあるが、BBCは移転人数や補償額の実態を確認するのが困難だったと報じている。電力の一部は依然として石炭に依存しており、乾燥地帯での水資源への影響も懸念されている。
匿名の地元住民はこう語った。
「このビッグデータは、普通の人間にはまったく関係ない。私たちに何の恩恵があったというんだ?」
子どもたちがデータセンターに就職できたZhangさんという男性は「中国は今、世界の最前線にいる」と誇らしげに話す。しかし、ひび割れたスマートフォンと月40元(約800円、換算レートは2026年9月時点の実勢レートに基づく)のWi-Fiドングルで羊の世話をする農家の男性にとって、AIレースは別の惑星の話だ。「ビッグデータとかそういうの……まあいいと思うけど、俺には関係ない」。
習近平とトランプが会談の場で「AIは勝たなければならない競争だ」と語る一方、ウランチャブの畑では、その競争がきわめて物理的な形で進行している。
詳細は"This is China speed": giant AI data centres are rising in Inner Mongolia's potato fieldsを参照していただきたい。