9月29日、Search Engine Journalが「Anthropic Publishes Prompting Guidance For Claude Opus 5.5」と題した記事を公開した。AnthropicがClaude Opus 5.5向けに整備した公式プロンプティングガイドは、Opus 5との互換性を維持しつつも、effort設定・think-careful系指示・エージェント向けの時間管理など複数の点で従来の書き方を見直すよう求める内容となっている。Anthropicが近年推進してきた「拡張思考(extended thinking)」モデルの系譜において、Opus 5.5はその設計思想をさらに徹底した位置づけにある。思考プロセスをモデル自身が管理するという方向性が強まったことで、従来型のプロンプトエンジニアリングの常識が一部覆された形だ。
バージョン体系について:Opus 4.x系とOpus 5.x系の違い
本文中に「Opus 4.7」への言及が登場するため、あらかじめ整理しておく。AnthropicのClaudeシリーズはメジャーバージョン(Opus 3、Opus 4、Opus 5)ごとにアーキテクチャが刷新されており、Opus 4.7はOpus 4系の派生モデル、Opus 5.5はOpus 5系の派生モデルだ。両者は別系統であり、プロンプティング上の推奨事項が異なる部分がある。ガイドはOpus 5向けの既存プロンプトを起点として使うことを推奨しており、Opus 4.x向けの設定を直接流用することは想定されていない。
最初に確認すべきこと:effort設定の再テスト
このガイドでエンジニアが最初に着手すべき変更点は、effort(思考量)設定の再テストだ。
Claude Opus 5.5はデフォルトのeffortがmediumに変更されており、Opus 5のデフォルトであったhighより1段階低い。またOpus 5では一部条件下でthinkingをオフにできたが、Opus 5.5ではthinkingを無効化できなくなった。無効化しようとするとエラーが返る。
Anthropicがthinkingを無効化不可にした背景には、Opus 5.5の性能がextended thinkingを前提として設計・最適化されているという事情がある。thinking無しでの推論精度が保証されない以上、オプションとして提供することがかえって品質上のリスクになると判断されたとみられる。これはAnthropicが拡張思考を「オプション機能」から「コアアーキテクチャ」へと位置づけを変えた動きとも読める。
重要なのは、Opus 5でのeffort設定をそのまま流用しないことだとガイドは強調する。Anthropicの内部テストでは、Opus 5.5のmedium effortがコーディングや知識系タスクにおいてOpus 5のhigh effortと同等か、それ以上の結果を示している。effortを下げたいときはプロンプトで調整しようとする前にeffort設定そのものを下げることを試みるべきで、xhighやmaxは品質に明確な差が出るタスクに限定して使うよう推奨されている。
なお、コードを一切変更しなくても、Opus 5.5に切り替えた時点でeffortは自動的にmediumで動作する。
「よく考えてから答えて」という指示を削除する
チャットアプリケーションを開発しているエンジニアに特に関係するのが、**"think carefully"(よく考えてから答えて)系の指示の見直し**だ。
Opus 5.5はモデル自身がどの程度思考するかを判断し、その主要な制御はeffortで行う設計になっている。そのため、システムプロンプトに「慎重に考えてから答えなさい」といった指示が残っていると冗長になる可能性がある。
Anthropic自身がチャット製品でテストしたところ、この種の指示を削除したところ返答の開始が早くなり、「返答の質に明確な低下は見られなかった」と報告している。
なお、AnthropicはOpus 4.7向けのドキュメントでは逆に、effortを低く抑える必要がある場面では「このタスクは複数ステップの推論を含みます。答える前によく考えてください」といった指示を追加することを勧めていた。Opus 5.5ではモデルのアーキテクチャが変わったことで、この方針が転換された形だ。Opus 4.x系でのノウハウをそのまま持ち込まないよう注意が必要だ。
エージェント・フロントエンド向けの追加ガイダンス
マルチエージェント構成を使っている開発者向けには、タイムバジェット(time budget) の活用が推奨されている。タスクの推定所要時間をモデルに渡し、Opus 5.5が経過時間を追跡する仕組みだ。APIレベルでは、システムプロンプト内にテキストとして推定時間を記述して渡す形が想定されており、たとえば「このタスクの推定所要時間は10分です」といった自然言語での指定が基本となる。厳格なタイムアウトとは別の「ソフトな目安」として機能するため、ハードタイムアウトと組み合わせて使うことがガイドでは推奨されている。
Anthropicのテストでは、タイムシグナルを使う小規模なエージェントグループが、シグナルなしで動く単一エージェントより速く調査タスクを完了し、回答品質も同水準を維持できたとされる。
メール本文など外部ソースからテキストをペーストして処理させる用途では、ランダムIDを付与したタグでコンテンツを囲み、そのタグの扱い方をシステムプロンプトで明示する手法が推奨されている。ただし、タグはプレーンテキストであるため、プロンプトインジェクション対策の一層目に過ぎないとガイドは明記している。追加の検証・サニタイズ処理を別途実装することが前提となる。
フロントエンドプロジェクトでは、クリーム色の背景やピル型ボタンといったデフォルトUIを避けるよう、スタイルを明示的に指定することが勧められている。「AI感のある見た目は避けて」という曖昧な指示では、別のデフォルトに置き換わるだけで解決にならないとのことだ。
既存プロンプトとの互換性と注意点
ガイドはOpus 5のプロンプトは引き続き大きな修正なく動作するとしており、Opus 5向けのガイダンスを起点に使うことを推奨している。ただし、以下の点は要注意だ。
- Opus 5でthinkingをオフにした状態でmax_tokensを設定している場合、Opus 5.5では「thinking」部分もそのトークン上限を消費するため、出力が途中で切れる可能性がある
- グラフや画像を読み取るためのワークアラウンドなど、旧モデル固有の記述が残っている場合も再確認が必要とされている
関連リンク
- Claude Opus 5.5 プロンプティングガイド(Anthropic公式)
- 拡張思考(Extended Thinking)ドキュメント(Anthropic公式)
- Claude APIリファレンス(Anthropic公式)
AnthropicはClaude Opus 5.5のプロンプティングガイドを公式ドキュメントとして公開している。既存のOpus 5向けシステムプロンプトを持つプロダクトは、effort設定とthink-carefully系の指示から順に見直すのが現実的な出発点となりそうだ。
詳細はAnthropic Publishes Prompting Guidance For Claude Opus 5.5を参照していただきたい。