9月25日、Crunchbaseが「Tech Layoffs Outpace 2025 As Big Companies Shift Spending To AI」と題した記事を公開した。2026年の米テック業界のレイオフが前年比16.8%増で推移しており、AI投資へのシフトが主因となっている実態について詳しく分析している。
2026年1〜8月で約9.4万人——前年比16.8%増
Crunchbaseのレイオフトラッカーによると、2026年1月から8月までの米テック業界の人員削減数は少なくとも94,046人に達した。2025年同期の80,486人から16.8%増となっている。
推移に特徴がある。2025年12月に5,151人まで落ち着いたレイオフは、2026年1月に2万人超へ急増。さらに5月が最大の山となり、月間31,513人が削減された。これは2023年3月(36,602人)以来の最高水準だ。なお、2023年はコロナ禍の採用過多に対する反動として大規模な整理が業界全体で行われた年であり、2026年の状況とは背景が異なる。
5月の数字を押し上げた主因がMetaだ。同月、Metaは全従業員の約10%にあたる人員削減を実施した。後述の企業別集計表では2026年1〜8月の累計として10,400人を計上しているが、5月単月の削減分は約8,000人であり、残りは年初来の別バッチによる削減を含む。
6月以降は月ごとに減少し、8月は2,347人まで落ち込んだ。6〜8月の合計は19,331人で、前年同期比16.2%減となっており、直近の勢いは明らかに鈍化している。
「AIが理由」の割合が1%→33%に急増
Layoffs.fyiの創業者であるRoger Leeは、今年のレイオフの33%でAIが理由として挙げられていると指摘する。2024年はわずか1%だったことを踏まえると、急激な変化だ。彼のトラッカーでは、今年のグローバルレイオフのうち72%にあたる92,913人分がAI起因と分類されている。
※Layoffs.fyiの92,913人とCrunchbaseトラッカーの94,046人は別集計である。前者はグローバルかつ独自基準で「AI起因」を分類したもの、後者はCrunchbaseが追跡した米テック業界ベースの累計値であり、集計対象・期間・分類基準がそれぞれ異なる。
ただし、Leeは「AI起因とされる大規模レイオフでも、AIが実際に人間の仕事を代替しているという証拠はほとんどない」と述べている。実態は、大手テック企業がAIへの投資を積み増す一方で、その財源を捻出するためにコスト削減を行っているというものだ。
人事コンサルティング会社Challenger, Gray & ChristmasのAndrew Challengerも同様の見方をしており、AIが雇用に与える影響を2つに整理している。
- AIによる直接的な代替:コーディングなど一部の業務はより少ない人数でこなせるようになった
- 予算の優先順位変更:AI関連部門に資金を集中させ、それ以外の部門を削減している
「ある部門では人を切りながら、AI関連のポジションを同時に募集している」とChallengerは述べた。企業の求人票と人員削減発表が同時に出る現象はこのメカニズムで説明できる。
削減数トップ10:Amazon・Meta・Microsoftが上位
大企業がレイオフ全体の**約87%**を占めるという構造は昨年(85%)とほぼ変わっていない。
主要企業の削減数(2026年1〜8月累計)は以下の通りだ。
| 企業 | 削減数 |
|---|---|
| Amazon | 17,388人 |
| Meta | 10,400人(うち5月単月は約8,000人) |
| Microsoft | 4,800人 |
| PayPal | 4,760人 |
| Block / Cisco / Cognizant | 各4,000人 |
| Intuit | 3,000人 |
| Amdocs | 2,900人 |
| Visa | 2,600人 |
Amazonは1月に実施した16,000人規模のRIF(Reduction in Force:人員削減策)を中心に複数回の削減を行った。なお、Oracleについては2026年5月期の会計年度で約21,000人の従業員数減少が報告されているが、各削減の時期や詳細が不明なためトラッカーの集計には含まれていない。
また9月初旬には、Uberが従業員の10%にあたる3,300人を削減したと報じられた。
「切った人材を呼び戻す」動きも
一方で、レイオフを後悔しているとみられる動きも出ている。Business Insiderの報道によると、Amazonは削減した元従業員に対して、クラウドやAI関連を含む社内ポジションへの復帰を打診しているという。
Challengerは、AIによるソフトウェア開発コストの低下がプログラマーに新たな機会をもたらす可能性にも言及した。これまでコスト面でシステム開発を断念していた非テック企業が新規プロジェクトに踏み出す可能性がある——ただし、そうした雇用が削減数を補うかは「現時点では判断できない」と述べるにとどめた。
テック以外の業界では、まだAIを人員削減の理由として挙げる企業はほぼないという。AIシフトが引き起こす構造的な雇用変化は、現時点ではテック業界に集中している。
詳細はTech Layoffs Outpace 2025 As Big Companies Shift Spending To AIを参照していただきたい。