9月26日、PYMNTSが「Goldman Sachs Projects Big Tech AI Infrastructure Spending to Hit $1.2 Trillion in 2027」と題した記事を公開した。2027年のAIインフラ投資規模は、19世紀後半の鉄道建設ブーム以来、あらゆる技術投資サイクルの中でGDPに占める割合が最大になる——Goldman Sachsのストラテジストチームはそう位置づけている。その予測値は1.2兆ドル。ウォール街のコンセンサス(1.1兆ドル)すら上回るこの数字が、半導体・電力・クラウドの各産業に与える影響は小さくない。
2027年、AIインフラ投資は1.2兆ドルへ
Goldman Sachsのストラテジストチームは、米国の主要ハイパースケーラー(※クラウドインフラを大規模に自社運営する巨大テック企業群を指す業界用語)5社によるAIインフラ支出が、2026年の8,000億ドルから2027年には1.2兆ドルへ、約54%増加すると予測している。Bloombergが9月25日付で報じた。
対象となる5社はAmazon、Alphabet、Microsoft、Oracle、Metaだ。ウォール街のコンセンサス予測である1.1兆ドルを上回る数字であり、Goldman Sachsチーム(リード:Ryan Hammond)はその規模感を歴史的文脈で表現している。
「2027年のハイパースケーラーの設備投資は、19世紀後半の鉄道建設ブーム以来、あらゆる技術投資サイクルの中でGDPに占める割合が最も大きくなる」
さらに2028年には12%増の1.4兆ドルに達すると予測している。
他の金融機関・業界首脳も同様の見立て
この予測はGoldman Sachsに限った話ではない。
JPMorganChaseのCEO Jamie Dimonは9月21日にCNBCで、ハイパースケーラーが来年に1兆ドルを支出する可能性があると言及した。また同発言の中で2025年を約3,000億ドル、2026年を約7,000億ドルと言及しており、急増のペースは明らかだ。
「GDPの約1%に相当する増加であり、人を雇い、工場を建て、機器や銅線を調達し、発電所を建設することになるため、多少のインフレ要因にはなりうる。しかしこれは信じられないほどの技術であり、長期的にはデフレ要因を強化する可能性も十分にある」(Dimon)
Nvidiaの創業者兼CEO Jensen Huangは5月の決算説明会で、AIだけに向けたハイパースケーラーの設備投資が2027年に1兆ドルを超え、2030年代には年間3〜4兆ドルに達する可能性があると述べた。
「コンピュートは収益だ。コンピュートは利益だ」(Jensen Huang)
資金調達の構造も変わりつつある
Citigroupは昨年9月時点(2025年9月)で、2029年までのAI関連インフラ支出が2.8兆ドルを超える可能性があると試算していた。Citiはその中で、大手テック各社が自己資金だけでなく、借入によってAIインフラへの投資を賄い始めている点を指摘している。旺盛な需要に追いつくための資金調達構造そのものが変化している、という見方だ。
数字の規模感を整理する
| 時期 | AIインフラ投資額 | 出典 |
|---|---|---|
| 2025年 | 約3,000億ドル | Dimon発言(JPMorgan CEO、CNBC) |
| 2026年 | 8,000億ドル | Goldman Sachs予測 |
| 2027年 | 1.2兆ドル | Goldman Sachs予測 |
| 2027年 | 1兆ドル | Dimon発言(JPMorgan CEO、CNBC) |
| 2028年 | 1.4兆ドル | Goldman Sachs予測 |
| 2030年代 | 3〜4兆ドル/年 | Jensen Huang発言(Nvidia CEO) |
※2025年の約3,000億ドルはJamie Dimon氏のCNBC発言からの引用であり、Goldman Sachsの公式予測値ではない。
半導体・電力・クラウドコストへの波及
わずか数年でオーダーが一桁変わるペースは、AIインフラを構成する各産業に直接的な影響を及ぼす。
半導体では、Nvidiaを筆頭とするGPUサプライヤーへの需要圧力が続く。データセンター向けAIアクセラレータの調達競争はすでに激化しており、Nvidiaの最新アーキテクチャBlackwellをめぐる各社の争奪戦はその象徴だ。
電力インフラへの影響も無視できない。大規模データセンターの新設・拡張は電力消費の急増を意味する。Dimonが「発電所を建設することになる」と述べたように、電力供給側の整備が投資サイクルのボトルネックになりうるとの見方が業界内で広がっている。原子力や再生可能エネルギーとの組み合わせを模索する動きも各社で加速している。
クラウドサービスのコストにも波及する可能性がある。ハイパースケーラーが借入を含む積極的な資金調達でインフラ増強を急ぐ一方、その投資回収をクラウド利用料金や生成AIサービスの価格設定に転嫁するかどうかは、エンタープライズ顧客にとって注視すべき論点だ。Citigroupが指摘した「借入による投資」という構造変化は、こうした収益化圧力と表裏一体でもある。
詳細はGoldman Sachs Projects Big Tech AI Infrastructure Spending to Hit $1.2 Trillion in 2027を参照していただきたい。