9月24日、Protonが「Proton survey: People don't trust AI, but they tell it everything」と題した記事を公開した。AIチャットボット利用者の大多数が機密情報を共有しているにもかかわらず、AI企業への信頼は著しく低いという調査結果をまとめたものだ。
「信頼していないのに、全部話す」という矛盾
深夜2時の金銭的な不安。医者に言い出せない体の症状。気になる相手へのアプローチ方法——人々はそんな打ち明け話をAIチャットボットに語りかけている。
Protonが2026年8月に実施した調査によると、AIチャットボット利用者の66%が少なくとも1つの機密トピックを話したことがある。一方、「AI企業が個人情報を適切に保護してくれると高い信頼を置いている」と答えたのは**わずか11〜20%**にとどまった(この幅は設問の表現や回答尺度の集計方法の違いによるもので、いずれの設問でも信頼度が低いことは一貫している)。
この乖離こそが調査の核心だ。信頼していないサービスに、最も個人的な情報を預けている。
調査対象はフランス・ドイツ・英国・米国のAIチャットボット現ユーザー計4,014人。全員が現在チャットボットを使用していることを確認済みで、調査委託企業(Proton)は伏せた状態で実施された。
【注記】 本調査はProtonが委託した調査であり、同社はプライバシー重視のAIサービスを展開している。結果の解釈にあたっては、その点を念頭に置いていただきたい。また調査はユーザーの自己申告ベースであり、実際の会話内容を観測したものではない。
何を話しているのか
機密トピックとして調査された8項目は、個人の財務状況・人間関係・メンタルヘルス・性的な話題・秘密・恋愛感情・仕事・家族の対立。
最もよく話されるトピックは国によって異なる。
- ドイツ: メンタルヘルスが1位
- 米国: キャリア・仕事上の問題が1位
- フランス・英国: 個人の財務状況が1位
米国は機密情報をAIに話す割合が**68.4%と最も高く、フランスが60.3%**と最も低かった。この差はプライバシーや技術に対する国ごとの文化的態度を反映している可能性があると報告書は指摘している。

AIを選ぶ理由は「便利さ」と「判断されない安心感」
機密トピックを人間ではなくAIに話す理由として最も多く挙げられたのは、「便利さ」と「批判・評価を受けない自由」だった。プライバシーへの期待も理由に挙がったが、順位は下だった。
トピック別に見ると、仕事・キャリアについては4カ国すべてで「便利さ」が最大の理由。メンタルヘルスは割れており、フランスとドイツは「便利さ」、米国と英国は「判断されない安心感」を優先した。恋愛感情や性的な話題では「信頼とプライバシー」「判断されない安心感」が上位に来る傾向がある。

ただし、AIが人間の繋がりを置き換えているわけではない。友人・家族はあらゆる機密トピックにおいて依然として第1の相談先であり、AIチャットボット、セラピスト、宗教的アドバイザーを上回っている。AIが「便利な補助手段」として機能しているという位置づけだ。
広告プロファイリングへの懸念がAI学習より強い
「自分の会話データがどう使われるか」という点では、AI学習データへの利用よりも、広告プロファイリングへの利用の方が懸念度が高いという結果が出た。
米国では広告プロファイリングへの懸念が**65.3%に対し、AI学習利用への懸念は57.6%**。会話が保存されること自体より、それが商業的利益のために使われることへの抵抗感が強いことがわかる。

プライバシー保証があれば開示意欲は高まる
「会話データがAI学習に使用されないと保証された場合、より機密情報を共有しやすくなる」と答えたのは全体の**44%**。米国が47.7%で最も高く、フランスが40.7%で最も低かった。
また、プライバシーを重視して設計されたAIチャットボットへの関心も高く、70%超のユーザーがそのようなサービスをより積極的に利用したいと答えた(ドイツ71.1%〜英国82%)。
Protonの AIエンジニアリングディレクター、Eamonn Maguireは次のように述べている。
「AIは検索エンジンよりもはるかに多くのことを私たちについて知るようになっている。検索は何を探したかを知るが、AIは躊躇、フォローアップの質問、行間の個人的な文脈まで把握する。プライバシーは後回しにできない問題だ」
Protonは現在、こうした調査結果の文脈からプライバシー重視のAIとしてLumoを提供している。上述の通り本調査はProtonが委託したものであり、Lumoの訴求に繋がる構造になっている点は留意が必要だ。ただし調査が示す「信頼の欠如」と「プライバシー保証への需要」という傾向は、業界全体の課題として読み取ることもできる。
まとめ
「便利さ」がAI利用の入口になり、「信頼」がどこまで打ち明けるかを決める——これが調査の結論だ。AIは既に人々の金銭的悩みや個人的な秘密を聞く存在になっているが、その信頼は企業側がまだ十分に獲得できていない。「約束」ではなく「証明」によってプライバシーを守れる企業が、次のフェーズで選ばれる、という構図だ。
詳細はProton survey: People don't trust AI, but they tell it everythingを参照していただきたい。